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ブチルゴムテープの貼り増しと緑の中の小道

事務所の外壁の穴を覆ったブルーシートが強風で一部剥がれてしまったと連絡があった。

どうも、壁の端っこの割れが覆えていなくてテープが浮いてしまっていた部分から風が吹き込んであおられてしまったよう。幸い全部は剥がれてないみたい。さすが強力なテープである。今度は割れを充分覆うほどの大きめなテープにすべきだろう。

しょうがない。予定外に急遽事務所へ。Amazonで幅広のブチルゴムテープを新たに入手しリュックに入れて電車に乗る。

前回の倍の幅。聞いたこともない会社のだけど、幅が広いのが見つからないので背に腹はかえられぬ。いきなり高価なものを試すよりちょっとずつ値段をアップしていき、できるだけ費用を節約したい。いや、これは安物買いの銭失いになるのか。まあ実験的なのは好きなので。

でも、事務所に行くのがめんどくさい。なんかご褒美欲しい。美術館や博物館でも帰りに寄る? Googleマップで近くに何かないかなぁと眺める。

ふと、電車で行ったことのある大きな公園に目が止まった。わりと観光地な公園。あれ? 意外に事務所から近くないか? 目的地と出発地を指定して歩いたらどうなるか検索してみたら、え! 30分!? 近い!!!

よし、さっさとテープを貼り直して、公園へ行こうではないか。俄然やる気になる。


テキパキと貼り直し、というか貼り増し作業を始める。それ以上剥がれないように剥がれてるとこもう一回くっつけてそのへんのテープで補強でもしてくれてないかな?って思ったけど連絡のあった写真そのまんまだった。あ、やっぱりそうだよね。うちの両親みたいなのとは全く違う人種なんだよな。いや、いいわ。やってみたけど無理だったのかもしれない。もしくは時間がなかったのかもしれない。しかし、穿った見方すれば、責任を取りたくないって感じだろうか。

2回目なので迷いがない。何も手伝ってもらうことないけど親戚が横にやってくる。なんだろう。見守り? 何やら話しかけてくるけど適当に返事する。会社所有のアパートの屋上に置いてる室外機の管?がボロボロになってるやらなんやら。

そうですか。


思うんだけど、現状だけ報告してくるの何なんだろう? 

『こうなってます』 どうしましょう、とか、どうしたらいいですか、すらないパターン。報告はありがたいのはありがたいけど。モヤモヤするんだよね。これ、丸投げしてきてない?

あ、こないだ、ただの封水の蒸発を故障と思い込んで、なんの故障もないトイレのリフォーム手配をしてしまったからか。責めるようなことは言ったつもりはないけれど、失敗を異常に怖れるタイプなんだろうか。そう考えると色々辻褄が合う気もする。

誰でも失敗はあるんだから、今度はちゃんと、なぜこうなるのか、どうするべきかまで調べて自分でやるなり、手配の許可を取ってくれればいいのにね。失敗しても誰かの命がなくなるわけでもなし、次回に繋げたらいいと思うんだけどな。

考え方が違いすぎてさっぱりわからない。毎回、写真は見せてくるけど。ボロボロって言ってるのはたぶん、冷媒管とかドレンホースとか電線を巻いてるテープですよね。

理想? 遠くから撮った写真でなくてもっと寄りの写真で、『テープが劣化してます。調べたら、巻き直しを業者に頼むと◯円、自分でテープ買ってもできそう、その場合テープは◯円。さらに配管カバーにしたら保存性が高くなるけど◯円くらいかかるみたいです。室外機に貼ってる製造年は△年、まだ使えるから何かしら修繕はした方がいいと思います。プロのようには行きませんが、いったん自分でやってみましょうか?』ぐらいまで言ってくれたら感動ものだ。……そんな人なら普通にどっかで働いてるか、社長を引き受けてくれたか。

まあ、自分で考える。どの部屋のエアコンも順次替えているけど古いの何年前だったかな……。自分でやるのはなんだか癪に触るし業者に巻き直し依頼してもいいけど、すぐエアコン交換なら無駄になるよね。不要な費用となるのは避けたいし。他のオーナーはどうしてるのか。管理会社の人にも聞かねば。

ま、この外壁の割れに比べたら急ぐものでもないからしばらく放置しようと心に決める。そしてあれどうなりました?って聞いて来たら質問してみよう。どうもしてないですけど、どうしたらいいですか?って。そうか、世の中の上司が質問で詰めてくるのはこういう図式か。嫌だなぁ。私より年上に対してやりたくないなぁ。

とりあえず、スルーする。どうしても必要な場合以外は引き受けないことにしたんだし。以前のようにホイホイ引き受けてたらまた際限なく仕事が増えてしまうわ。


よし、ブチルゴムテープの貼り増しはサクッと終わらせた。ハサミと手袋を元に戻して、ゴミを捨て、持って帰るべき書類を集めてリュックに入れる。さらに話を続けようとされるのを軽くいなして、じゃ、帰ります!っと出発する。公園までのウォーキング! うきうきである。


公園内の散歩。ちょうど暖かい晴れの日で、皆思い思いのんびりと外を楽しんでる。手作り弁当を食べるOLさん、レジャーシートに寝転ぶおじいさん、2人で写真を撮り合う若い女子、海外からの旅行者、遠足っぽいちびっこたち。ちょっと静かな場所を求めて、森の中に分け入っていくような道や木々の間の小道を選んで歩く。大きな木の下のベンチ。深呼吸とジャーナリング。

愛すべきひとりの時間。さっきのことでモヤモヤした自分の心を言語化していく。自然と湧く感情を受け入れる。モヤモヤはモヤモヤのまま置いておいて、遠くから眺めてる。こんなこと思っちゃダメだ、もなし、モヤモヤから派生した怒りの感情に飲み込まれるのもなし。モヤモヤしてるんだねって眺めるんだ。

目の前の木の枝をスケッチする。あの枝の角度かっこいいし、葉っぱの生え方、幹に当たる光と影の配置にも気づく。感情も目の前の木もどっちも同じように観察してる。負の感情に巻き込まれない極意。ジャーナリングはマインドフルネス。

子どもの帰ってくる時間に間に合うぐらいまで森林浴。やっぱり私、植物の近くにいると元気がチャージされるわ。

帰り道、造形のかっこいい木の名前を知りたくてGoogleレンズで検索する。モクレン科のタイサンボク。初夏に咲く白い花は強い芳香を持つらしい。うわ、嗅いでみたい。来年の初夏にも必ず訪れよう。事務所からの帰りにご褒美として。楽しみが増えた。

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