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どこか遠くに行きたいと思って ひとりふらり旅

なんかもう、遠く行きたい。

たぶん、夫と次男の勉強のやり取りが。じわじわ着々と成績が上がってるし、あのやり方が正解なんだろうけれど、大声で嘆く次男と大声で怒鳴る夫。家の中がピリピリする。休日は、くつろげない。

必要な家事を済ませて、あとは静かにしながらGoogleマップを見てる。現実からの逃避。平日の昼間、ひとりで。もし3〜4時間くらいあれば電車でどこに行けるかなって検索する。思ったより遠くに行ける。ちょっとした観光地、美術館や博物館、有名な寺院。いっぱいある。寄り道もせず滞在時間を30分くらいにおさめたら、さらに遠くも。心のメモにいつかやりたい計画として書き留めておく。きっと心の洗濯になると確信してる。


病院の仕事がやけに早く終わった。お昼過ぎに帰っていいって言ってもらえて、ありがとうございます!!!って喜びが隠せない。

これは、あの計画を実行すべきときなのでは? 天気予報は雨だけどギリギリ降ってきてないし、なんだか呼ばれてるような気さえする。今まで行ったことないところへ行きたい。遠くへ。Googleマップで彷徨ってるうちに行きたいなと思った寺がある。私、寺が好きだわ。この騒ついた心を落ち着かせたい。

ちょっとアクセスが悪くて、歩く時間が想定より長くなりそう。電車の時間は往復1時間ちょっとくらいだけど、歩く距離が合計で7キロくらい……。2時間弱か。拝観時間を30分におさめたら、3時間半。帰りにいつものスーパーで買い物しても(食パンが安い日なので行きたい)習い事のお迎えに間に合う。いける!!

歩くのは好きだ。マインドフルネス、瞑想。Googleマップ片手にちょっと遠くの駅を目指す。なぜか散歩あるあるの、豪邸エリアに差し掛かる。立派な古い木造建築。道が歴史を感じさせる。ちょっとくねってて狭いの。古い街だった証の旧街道の道標。ここを昔の人は歩いて、あるいは馬で行き来してたんだろう。どんな様子だったか、この目で見れたらいいのに。


駅に着いて電車に乗る。燃えてた体が急に冷える。さすがに平日の昼間、空いてる。旅行気分で外を見てるうちに眠たい。まだまだ歩くからちょっと休憩に良いね。


着いたら外は雨だった。たぶん急に降り出したばかり。傘を持たずに途方に暮れて雨宿りしてる人をちらほら見る。コンビニで買った真新しい傘を差す人、いさぎよい。私は日傘がわりの大きめの折りたたみ傘を常に持ち歩いてるから、颯爽と傘を差して歩く。リュックの中にはカーディガン、水筒、モバイルバッテリー、ジャーナリング用のノート、万年筆。だからちょっと重いけど、まあ、筋トレ筋トレ。

あちこちに魅力的なお店や横への細道が出現するけど、時間に追われてるので真っ直ぐ目的地に向けて歩く。スニーカーが濡れてきたけど、空は少しずつ明るくなってきてる。すぐ雨は止みそうだ。涼しくて良い。

雨の中歩くのが楽しい。体感では思っていたよりもすぐに到着。これから30分弱、じっくりと見たかった仏像を堪能するのだ!!


甘やかなお香の匂い。深呼吸。雨の日の湿気を含んだ冷たく清浄な空気。色の濃いどっしりした木の建具、障子からのほの明るい光、蝋燭。ところどころ黒ずんで色褪せた金色の仏像。この仏像1体を彫るのにどれだけの時間がかかるのだろう。あの細かい細工。仏像を彫るのに一生を捧げる、そんな人生を送った人がいたんだよね。ほとんどの人は100年も生きられない。どんな顔のどんな性格の人がこの仏像を彫ったのか全然わからないけど、その人が死んだあとにも仏像や寺は世代を越えて何百年もある。私が死んだあとにも。

前世の夢を見たことある人いるじゃない? 憧れる。もし叶うならば、旧街道を旅して寺や神社にお参りする、そう、例えばお伊勢参りに向かう最中の庶民の詳細な夢を見たい。笠を被って足袋と草鞋を履いて。1日30〜40キロとか歩いてたんでしょう? 私も前世ではきっとお参りしてたと思うのよ。途中の茶屋で団子とか食べてさぁ。楽しすぎるでしょ。

帰りにお茶する時間を設けられなかったのを残念に思いながらも晴れやかに雨上がりの道を帰途につく。今日、思い立って来てよかった。ひとりふらり旅、いいわ。

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