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「点で見る指導」と「線で見る指導」…

小学校の先生で、2児の父、雄剛です。

若い先生から相談を受けました。
「A君のことで困っているんですけど…。最近、席替えをしたら、A君の近くの席になった子から苦情がきているんです。『暴言を吐かれた…。』『ものをとられる…。』『叩かれた…。蹴られた…。』。A君に指導してもなかなかやめられなくて…。だから、おうちの人にも電話をして、おうちでも話してもらえるように言ったのですが、なんか響いている手応えが全然なかったんです…。」
A君は、専門的な機関での検査で、数値面でざっくりいうと「知能面では低めではあるがそこまでではない。ただ対人関係にでこぼこがある…」という結果が出ています。これまでも教室にいられずに校内を徘徊していたり、気持ちの整理がつかなくて友達の作品をびりびりに破いたり…ということが続いていました。

皆さんならどんなアドバイスをしますか?

私は…。

①A君への指導のアプローチ
若手の先生からは「A君とは時間をかけてじっくり話すと、わかってくれることは増えてきたんだけど、だからすぐに変わるかというそうではなくて…。だから、おうちの人の協力もお願いしているんです。」と聞いていました。だけど、おうちの人はあまり響いていない様子…。

「じゃあ、段階をあげよう!おうちの人にA君の現状やこちらの困りを理解してもらうために、学校に来てもらう。そして、私(学年主任)や教頭を入れた話し合いの場をもとうか?そうすることで、学校側の本気度を伝えていく必要があるのかも。」

②周りの子の権利を守る措置
苦情を訴えている周りの子を守る視点も必要。安心して生活できる空間を作ることが学級経営の土台。

「A君がすぐに変わることが難しいなら、環境を整えるしかない…。A君の席を、A君が落ち着けて、しかも周りに被害が出ないような場所に移せないかな…?」

特別支援に詳しい先生に相談すると…

特別支援に詳しい先生が近くに座っていたので、「こんなふうに考えているんだけど…」と相談してみました。すると、私としては、意外な答えが返ってきました。

①A君への指導のアプローチについて
A君は、今も問題はあるけれども、1学期の始めに比べれば、確実に表情が変わってきている。目が常につり上がって臨戦態勢の表情だったが、だいぶ柔らかい表情になってきている。指導をしたときにも時間をかければ伝わるようになったし、成長が見られる。おうちの人は、電話ではそっけないかもしれないけれど、もう十分すぎるほど状況を分かって、悩んでいる。だから、デイサービスにも通い始めたし、3学期から通級に通うことを決定している。これ以上、おうちの人を学校に呼んで、現状を突き付けた所で、もう打てる手がない。A君は想いを言葉にするスキルがないから、暴言を吐いたり、手を出したりしてしまう…。だからこそ、通級で、少しずつ想いを言葉にするトレーニングをして、学んでいくしかない。ここからは、時間をかけてやっていくしかないから、学校でできることは、A君が穏やかに過ごせるような環境を整えて、成長を待つしかない。

②周りの子を守る措置
もちろん、周りの子を傷つけることはあってはならないし、そこは毅然と指導しなくてはいけない。だけど、周りを育てることも大切。周りの子が「あいつは暴言や暴力をするから、遠ざけよう!」と考えるのではなく、「そういう子なんだ…。だから、今は心の状態がよくないから少し離れて見守ろう。」と温かく見守れる子たちに育てられるかが大切。そうすることで、A君が学年が上がるにつれて落ち着いてきた時にも、自然と受け入れらる温かい学年になる。

「点で見る指導」と「線で見る指導」

私はまさに「点で見る指導」。今出ている問題を点で見て、その状況をどう乗り越えるかにフォーカスした指導。

特別支援に詳しい先生は、まさに「線で見る指導」。今出ている問題だけでなく、これまでの経緯やA君の成長、そしてA君のこれからの見通しをもとに、今できること、そしてこれからのために打てる手立てを考えた指導。

線で見る視点、大事だなぁ…。自分にはまだまだここが足りないんだなぁ…。そんなことを反省させられるやりとりでした。

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