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『推し、燃ゆ』 感想
宇佐見りんさんの『推し、燃ゆ』を読みました。
アイドルグループの上野真幸を推す高校生のあかり。ネットの世界では、落ち着きの中に熱さがあるオトナな雰囲気を持ち合わせている彼女だが、現実世界では部屋は荒れ、学校への提出物も遅れがち、成績も芳しくなく…。
そんな彼女自身の差に切なさを感じた。推しへの愛や推しがいるからこその自分であることが繊細に描かれていた。
推しの不祥事によって静かに重量を増したあかりのだるさが、仕事のミスや退学、そして祖母の死を通して伝わる。
後半にかけての絶望さは本当に切なかった。自身にも投影していた推し。人生の全て。自分の中枢、背骨。
推しを失ってあかりはどうなってしまうのだろうと、消える音がしそうなラスト。
後始末が楽な、綿棒のケースを選んだ。
ああ、彼女は後始末のことを考えられるのだ。部屋に帰ったら柔らかい服かクッションでも床に何度も叩きつけながら泣き叫びたいくらいの出来事だったんじゃないかと思ってしまった。
でも彼女が選んだのは片付けやすい綿棒のケースで、それを投げる。
絶望的な状況だと思い込んでいたのは私で、あかりはそのほんの少し先の、推しのいない人生を受け入れだしていたのかと感じた。
今にも沈みそうなあかりが、投げて散った軽い綿棒を拾う姿が鮮明に浮かび、その重さの対比に、ほんの少しほんの少しだけ、あかりの生きる先を見た気がする。