003 運動は生きるために必要な行動
2021.7.21発行
運動というのは、本来あえてするものではなく、生きるために必要な行動です。
江戸時代の暮らしの記録を見ると、飛脚や、農民でも当時非常に歩くのが早かったことがわかっています。
暮らしの中に運動が自然に組み込まれていたのですね。
ですが、科学の進歩によって、たったここ百数十年で突然人間は運動をしなくなってしまいました。
本来の人間の能力を保つ、ごく自然な習慣が運動だったのですから、運動しなくなることは、ありのままの人間の姿から離れてしまっているわけです。
そう考えると、さまざまな病気が出てくるのは、当たり前と言えるでしょう。
では、江戸時代の知恵? 日常生活でも取り入れられる運動を見てみましょう。
筋肉を動かすこと
筋肉にあまり負担をかけない有酸素運動は、神経伝達物質のひとつであるセロトニンの分泌を促進させることが分かっていて、当社の産業医もうつ病、うつ傾向の方によく運動することを勧めています。
ゆっくりと歩いたり、走ったりする運動は、医学的にもよい効果が認められます。
例えば、ふくらはぎを動かし静脈のポンプ効果を促すことによって、体全体の血流が良くなり循環器系の病気などにもよい効果が出ることがわかってきています。
掃除は「運動」の宝庫
例えば雑巾がけは、腕力を使いますし、移動する際に下半身も使います。真剣にやれば、ものすごい運動量です。
人間の脳には、注意を向ける量に限りがあり、散らかった場所にいると目にいろいろな情報が飛び込んできて、脳を疲労させてしまいます。
ですが、掃除やかたづけによって目に入る情報を少なくすることで、脳の疲労を軽減することができる、と言われています。
「掃除は自分の心を掃除すること」とも言われますが、心をすっきりさせてくれる効果、つまりは、「自分を慈しむセルフケア」にもつながります。
また、掃除をすることで、「相手に心地よいよう配慮する」という利他的な側面も見逃せません。
これは心理学的にも理にかなっていると言えます。
歩くことも「マインドフル」に
自宅から駅まで歩く時間も、ぜひ「歩く」ということに集中してみてください。
足の裏の感覚や、歩行と呼吸のリズムに注意を集中し、「今小石を踏んだな」「自分はどう腕を振っているのかな」「風が吹いてきたな」など、歩くときの自分の身体の感覚に意識を向けるのです。
このことも「マインドフルネス」につながります。
また、例えば、階段の上り下り。何段目で足に疲労を感じたのか、息が上がったのか、場所によって段差が違うこともありますね。
長く続けていると「なんだか上りやすくなってきたな」と体力の向上を感じ、達成感も得られ、いろんな階段を楽しむ、という楽しみもあるはずです。
このように捉えると、運動が苦ではなくなっていきますよね。
でも、「たったこれだけで疲れてしまうなんて」などと自分を責めてしまっては、逆効果です。
「○段目で脚が疲れた」と事実だけをありのままに受け入れて、チャレンジするつもりで楽しんでしまいましょう。
日常を「運動」の場面に変えてみよう
このように、生活の細部に目を向けると、考え方次第で、あらゆる生活行為を「運動」に変えて楽しむことができますね。
好奇心をもった集中。つまり、体を動かすことで心も同時に育む仕組みが、生活の中に組み込まれているのです。
単に一つのことに集中するだけではなく、当たり前にやっていることも楽しんでしまう。
ぜひみなさんも、日常にひそむ「運動」を意識して、周りの方々と一緒に楽しんでみてはいかがでしょうか。