かわしマン

実話怪談、短編小説、アイドルソングのレビューなど、書きたいことを雑多に書いてます。

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    私が集めた怪談をまとめたものです。 怪談とは不条理なものですね。

  • ホラー小説短編集

    私の書いた短編のホラー小説をまとめた物です。

  • スマイレージ・アンジュルムのいままで振り返るブログ集。

    スマイレージ・アンジュルムがどういう経緯を辿ってきたグループが分かるように、過去にはてなブログに投稿してきた私のブログを転載してマガジンにまとめました。

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【連作短編ホラー】呪いの言葉がトリガー 第一章『一緒に死のう』1

小説概要 あの世とこの世の境界が曖昧になったS県K町。 その町ではネガティブな言葉がトリガーになってバケモノが目覚める。 公園、学校、病院、公営団地……。 町のありとあらゆる場所で、ありとあらゆる事情を持った人たちが溢す言葉で怪異が表出する。 それを解決するのは、バドミントン部のユニフォーム姿で除霊を行う女子中学生霊能力者の横山セリナだった。 第一章あらすじ 祖父が自宅物置に監禁しているユズハという女の世話を任されている「私」は、クラスメイトから女子バドミントン部に代々

    • 【連作短編ホラー】呪いの言葉がトリガー エピローグ『ずっと好きでした』

      日曜日 「セリナ先輩ファイト!」   私は思い切り叫んだ。  きゅっきゅっと床に靴底を擦り付ける音を立ててセリナ先輩は華麗にステップを踏む。そしてラケットで羽根を力強く打ち叩いた。  羽根が相手コートに猛スピードで落下した。  セリナ先輩は右手で小さくガッツポーズをした。  誰よりも綺麗でキラキラとした汗がショートカットの襟足から落ちるのが見えた気がした。  勝利まであと一点……。  夏の大会が三年生にとっては中学生最後の大会になる。地区予選を突破して県大会に進むの

      • 【連作短編ホラー】呪いの言葉がトリガー最終章『記憶にございません』7

        木曜日3  私は不思議と恐怖を感じなかった。あまりにも目にしている光景が現実離れしているからだろうか。  私は身動ぎもせずただ口を半開きにして、ぼんやりと巨体な骸骨となったミヤビを見つめていた。  ミヤビの頭蓋骨が、がしゃりと背骨を軋ませて動き始めると私を真上から見下ろす位置へとやってきた。眼球は抜け落ちているのに、その視線が私を捉えているのが分かる。二十年ぶりに私とミヤビは見つめあっていた。  しばらく見つめあっていると細い金属音のような耳鳴りが私の聴覚を奪った。そした頭

        • 【連作短編ホラー】呪いの言葉がトリガー最終章『記憶にございません』6

          木曜日2  私は呆気に取られてしばらく虚空を見つめていた。後ろから追いかけて来た足音がすぐ側まで来ているのに、それにはまったく意識が向かなかった。 「城定先生、井上ミヤビ。その名前に覚えはないのですか?」  背後から声がした。  穏やかで品のある艶やかな声。それでいてその声には、相手の心へとごく自然に深入りしてくる迫力と凄みがあった。  私は倒れたまま後ろを振り返る。  二人の女が私の事をじっと見下ろしていた。  一人は、あの悪夢と同じ女。白いブラウスにジーンズ姿のミズエ

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        【連作短編ホラー】呪いの言葉がトリガー 第一章『一緒に死のう』1

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          【連作短編ホラー】呪いの言葉がトリガー最終章『記憶にございません』5

          木曜日1  眠りから覚めて目を開けると、そこには〈もう一人の私〉の顔があった。  いつものあの、不気味で嫌味たらしい、意地の悪いにやけ顔を浮かべながら、寝ている私の顔を覗き込んでいた。  なぜ? どうして? 意味が分からなかった。  昨日セリナに狐を祓ってもらったというのに……。 「あっ、あっ、あああああああああああ!」  あまりの事に私は喉を思い切り潰し、詰まった泥を無理矢理に抉り取り穴を開けるような、ざらついた悲鳴を上げた。  激しい絶望感に嗚咽が漏れそうになる。涙が自

          【連作短編ホラー】呪いの言葉がトリガー最終章『記憶にございません』5

          【連作短編ホラー】呪いの言葉がトリガー最終章『記憶にございません』4

          水曜日2  ふと気づくと、カーテンの僅かな隙間から差していた陽の光は消え去って、部屋は夜の闇で覆い尽くされていた。  時計を確認すると十九時を五分ほど回っていた。  もうそろそろセリナがやって来る時間だろうか。  私は重たい体をなんとか起こして寝室を出た。頭の中の血管が鼓動に合わせて脈打つ。油断すれば破裂してしまいそうだった。そうならないように慎重に歩みを進めて階段を降りていく。  一歩を踏み出すたびに足の甲と膝に鈍い痛みが走る。一日横になり体を鈍らせた代償だろうか。人の

          【連作短編ホラー】呪いの言葉がトリガー最終章『記憶にございません』4

          【連作短編ホラー】呪いの言葉がトリガー最終章『記憶にございません』3

          水曜日1  目覚めた瞬間、まるでこの世の終わりの日を迎えたかのような凄まじい重苦しさが胸に渦巻いていた。  ぐっしょりと寝汗をかき襟足がほのかに濡れていた。口の中と喉がカラカラに乾ききっていた。  毛布は床にずり落ち、シーツは滅茶苦茶に歪んでいた。  天井の模様が禍々しく目に映った。    私は悪夢を見ていた。  こんな夢だった。    再開発が進められている、あの森の中で私は何かに追い立てられていた。  中に足を踏み入れた事など一度もないのに、あの森だと私は確信していた。

          【連作短編ホラー】呪いの言葉がトリガー最終章『記憶にございません』3

          【連作短編ホラー】呪いの言葉がトリガー最終章『記憶にございません』2

          火曜日  駅前商店街の商店会長、永田キヨマルとの懇談会を行うために午後三時に商店街事務所にやってきた。  元々は理髪店が入居していた二階建てテナントビルが今は事務所になっている。  地方都市ではシャッター街と化している商店街多い中、K市の駅前商店街はそれなりの賑わいと活気を保っている。  とはいえ昔ながらの個人商店は減り、どこの街にもあるようなチェーン店舗が徐々に増えてきているのが現状だ。  永田キヨマルは七十代のスポーツ用品店の店主だ。今、店の運営はほぼ息子夫婦に任せて

          【連作短編ホラー】呪いの言葉がトリガー最終章『記憶にございません』2

          【連作短編ホラー】呪いの言葉がトリガー最終章『記憶にございません』1

          月曜日  清水ミズエは政財界や芸能界で顔の効く凄腕の占い師だ。  元々は大物政治家や俳優が出入りしていた銀座の高級クラブでホステスをしていた。  接客の一貫として客を占っていたのだが、あまりにもそれが正確に未来を予言したため、その能力はあっという間に政界や芸能界で評判となった。  未来を予言するだけではない。占う人物の背景にある苦悩や迷いをずばり言い当て、的確なアドバイスをした。  そのおかげでミズエに心酔する政治家や俳優が後を絶たなかった。  ある首相経験者もミズエに心酔

          【連作短編ホラー】呪いの言葉がトリガー最終章『記憶にございません』1

          【連作短編ホラー】呪いの言葉がトリガー 第三章『産まなければ良かった』4

          水曜日2  玄関からダイニングキッチンへと向かって細い廊下をゆっくり男が歩いていく。  私には目も暮れず、廊下とダイニングキッチンの境で唖然と立ち尽くすカイトへと男はにじり寄っていく。  私の目と鼻の先を男が通りすぎる。魚の生臭さとすえたオイルの臭いが私の鼻腔に流れ込む。  やがてその匂いは部屋中に充満した。  朝の柔らかい太陽の光が差し込みあんなに明るかった部屋が突然薄暗くなった。窓の外の空も灰色に変わっていた。 「こちらがカイト君ですね。やっぱり良い油が取れそうですね

          【連作短編ホラー】呪いの言葉がトリガー 第三章『産まなければ良かった』4

          【連作短編ホラー】呪いの言葉がトリガー 第三章『産まなければ良かった』3

          水曜日  セリナに言われた通り玄関とベランダにそれぞれ二つずつ盛り塩を置いた。小皿に指で三角錐に固めた物だ。形は少しいびつだがそれなりの物が出来たと思う。  朝早く起きてせっせと盛り塩を作っていたら、起きてきたマサヒコが、 「なんでそんな物作ってんの? 幽霊でも出た?」  そう言って鼻で笑った。  この人に何を訴えても理解されないし、理解しようともしないことは目に見えている。反応するだけ無駄なので私は無視した。 「朝からなんなんだよ。気分悪いわ」  そう吐き捨てるとマサ

          【連作短編ホラー】呪いの言葉がトリガー 第三章『産まなければ良かった』3

          【連作短編ホラー】呪いの言葉がトリガー 第三章『産まなければ良かった』2

          火曜日  カイトの熱は下がったが、念のため今日も幼稚園は休ませることにした。  幼稚園に欠席の連絡を入れ、洗濯に取りかかる。  昨日油まみれになった服はカイトの分も含めてビニール袋の中に詰め込んで洗濯機の横に置いていた。  それを見ると昨日の恐怖が甦ってくる。  昨日の夕方、仕事から帰ってきた夫のマサヒコに橋の上での出来事について話したが「災難だったなぁ」と一言だけ言ったあとはへらへらと笑うばかりで真剣に取り合ってはくれなかった。  私はとにかく強烈に恐怖を感じたし、マサ

          【連作短編ホラー】呪いの言葉がトリガー 第三章『産まなければ良かった』2

          【連作短編ホラー】呪いの言葉がトリガー 第三章『産まなければ良かった』1

          第三章あらすじ ユキナは夫のマサヒコと五才の息子カイトと公営団地に住む主婦。ある日ユキナは熱を出したカイトを連れて病院に行き、診察を待つ間に公営団地に現れた不審者情報をラインで受け取る。さらに学生時代の友人サクラと偶然再会する。病院の帰りユキナは団地近くの橋の上で悪意の籠った何者かの視線を感じ取る。次の日、ユキナの元に不審な電話が掛かってくると同時にまた悪意の隠った視線が投げ掛けられる。その視線の元を探しているとユキナの部屋を団地の外から見ている不審な男を発見する。警察に通報

          【連作短編ホラー】呪いの言葉がトリガー 第三章『産まなければ良かった』1

          【連作短編ホラー】呪いの言葉がトリガー 第二章『私なんていてもいなくてもおなじ』6

          木曜日2  まだ足の震えは止まらないままだが、私の胸には一応の安堵感が広がった。  それでも心は晴れなかった。  不安や恐怖が薄くなっていく代わりに、言い様のないやるせなさと切なさが重くのし掛かってきた。  フミカを見る。茫然自失状態でうなだれるように床に座り込んでいた。目には涙が光っているように私からは見えた。  セリナはくしゃくしゃに丸めて床に捨てた写真を拾って、鞄の中に閉まった。  それから、溜め息をひとつ吐いてからフミカに向かってゆっくりと歩き出した。  側まで行

          【連作短編ホラー】呪いの言葉がトリガー 第二章『私なんていてもいなくてもおなじ』6

          【連作短編ホラー】呪いの言葉がトリガー 第二章『私なんていてもいなくてもおなじ』5

          木曜日1  昨日の騒ぎが嘘だったように、学校はいつも通りの日常をあっさり取り戻した。  相変わらずプールにはブルーシートが貼られ、立ち入り禁止を示す黄色いテープが張り巡らされている。  そこだけは物々しい雰囲気を保ったままだが、校舎の中はいたって通常運転で時が過ぎていた。  昼休み、言い知れない不安を抱えながら私は図書室へ向かった。  写真を手放した。だからもう私の前に髪の濡れた女が現れることはないと昨日ミズエさんに言われた。安心していいと。  でも私の心からは一向に不安

          【連作短編ホラー】呪いの言葉がトリガー 第二章『私なんていてもいなくてもおなじ』5

          【連作短編ホラー】呪いの言葉がトリガー 第二章『私なんていてもいなくてもおなじ』4

          水曜日2 「あぁ覚えてるよ。あんたらと同じ制服来た女の子だよ」 「えっ? 私たちと同じ中学?」  私とセリナは顔を見合わせた。セリナは顎に手を当て視線を上に向け考え事をしているようだった。 「スカーフの色は? 何色でしたか?」  セリナが視線を店主に戻してそう訊ねた。  店主はしばらく考え込んだあと、「エンジだったかなぁ……」そう呟いた。  エンジのスカーフということは三年生だ。 「これ買います!」  セリナさんは財布から百円を取り出しレジ横のトレイに置くと素早く本を鞄

          【連作短編ホラー】呪いの言葉がトリガー 第二章『私なんていてもいなくてもおなじ』4