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マルタの祝日に爆音が鳴る理由
「どーん、どーん、ピキピキピキピ」
ヨーロッパにある南の島、マルタ共和国の22時
私はマルタの中でも「住みやすい街TOP3」にはランクインするであろうエリアに住んでいる。アパートの4階からカーテンを少し触り、外をのぞいた。
人の叫び声や何かが光っている様子は全くない。
「いつもより静かじゃないか?」と思うほどの静けさの中、
何度も大砲が放たれたかのような音が街中に鳴り響いていた。
花火だった。
マルタの夏は、びっくりするぐらい頻繁に花火が打ち上げられる。
もしマルタに3年ほど住んだら、学生時代に経験したあの淡い花火大会の思い出すら、無数の爆音に塗り替えられてしまうのかと思うほどだ。
だから最初は「また花火か」と久しぶりの迷惑さを感じたが、
石畳の建物の表面が「ぴきぴきぴきぴき」と高速に聞こえてくるようになってからは、
「あれ?これって避難しなきゃいけないやつ?」と
私の危機察知能力が動き出した。
こういう日に限って、今日は不気味に静かだなとか思ってしまうものだ。
まずは冷静に、所属しているサッカーチームのグループチャットに質問してみた!
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穏やかな性格のゴールキーパーのジャスティンが3分で返信してくれた。
私:うるさい音がきこえるんだけど、今日、マルタでなにかイベントあるの?
ジャスティン:教会の近くで花火や地上花火があるみたいだよ。村の守護聖人に関することだよ
私:教えてくれてありがとう。なにかやばいことが始まったのかと思った。
ジャスティン:あはは、どういたしまして。
よかった。
冗談みたいに書いたけど、少し本気で何か内戦的なのが始まったのかと思っていたから、即レスで" 大丈夫 "の返信は助かった。
せっかくなので、村の守護聖人に関して調べてみた。
マルタでは、各街ごとに「守護聖人」がいて、その聖人を祝うお祭りが一年中どこかで開催されてるらしい。
そしてもっとも有名なのが、2月10日の
「 聖パウロ難破記念日 」
聖パウロがローマに向かう途中に船がマルタに難破したことがきっかけで、キリスト教がマルタに広まったっていう話を記念する日、らしい。
聖パウロという人物は、キリスト教を世界中に広めた超重要人物
なるほど、だから今までで一番うるさい音が鳴り響いていたのか。
そして、けっこう重要な日ではないか。
でもなぜ、爆音なんだ?気候がよく陽気な国と言われているからといってここまで爆音にするのには違和感がある….
ということで調べてみた!
マルタの祝日で爆音を鳴らす理由
1. 【喜びを天に届ける】
大きな音を鳴らすことで 「天に向かって祝福を伝える」 という考え方をもつ。特にカトリック文化圏では、教会の鐘や大砲の音で神への感謝を表す習慣がある。
2. 【悪霊を追い払う】
昔のヨーロッパでは、「大きな音を出すと悪霊が逃げる」って信じられてた。お祭りのときにドーン!とやることで、聖なる日を邪魔しようとする悪いものを遠ざける っていう意味がある。
3. 「伝統と歴史の名残」
マルタは昔から 要塞の島 で、大砲や火薬を使う文化が根付いてた。今でも「伝統として爆音を鳴らす」ようになってる。
しっかり理由があって、今まで迷惑がっていたことが恥ずかしくなってきた…
そして、今までただうるさいなとしか思わなかった祝日の花火が、マルタの歴史を感じられるものになりそうで、ほんのちょっとだけ楽しみになっている私がいる。
日常でお世話になっているこのマルタのことを知れるきっかけがあってよかった。と思った夜だった。