『ATTENTION SPAN デジタル時代の「集中力」の科学』グロリア・マーク

概要

『ATTENTION SPAN デジタル時代の「集中力」の科学』は、デジタル社会のなかで私たちの集中力がどのように影響を受け、劣化しているかを示すとともに、それに対抗する方法を科学的に解説した本です。著者のグロリア・マークさんはカリフォルニア大学の教授で、約20年にわたって「デジタルメディアが人間の集中力に与える影響」を研究してきました。SNSや通知、メールといった現代的なツールは、便利な一方で、私たちの注意を絶えず奪い、集中力を蝕んでいるという問題があります。著者はその現状をふまえ、いかにして効率的に集中力を管理し、目の前の作業に没頭できるようになるかについて、多角的なアプローチで教えています。

本のジャンル

自己啓発、メンタル・マインドフルネス、ビジネス

要約

第1章：集中力は有限なリソース

著者が提案する「集中力のタンク」理論によると、私たちの集中力は、有限であり、一日中使い続けるといずれ枯渇してしまうリソースです。例えば、朝から集中していると、夕方には疲れが見え、注意が散漫になりがちです。この現象は、SNSやメール、チャットアプリの通知などで気が散りやすい環境下ではさらに顕著になります。私たちの集中力は使えば使うほど減少し、回復が必要であるため、著者は「日常生活における小さな決断」もまた、集中力を浪費させる要因であると指摘します。例えば、アップルのスティーブ・ジョブズが同じ服を着続けていたのは、集中力を「何を着るか」という小さな決断に使わないようにするためでした。集中力をより大切に管理するためには、日常の些細なことに意識を奪われない工夫が重要です。

第2章：シングルタスクの重要性とマルチタスクの罠

私たちは「マルチタスク」をしているつもりでも、実際には注意を切り替えているだけであり、そのたびに集中力のタンクを大きく消耗してしまいます。例えば、仕事の途中でSNSの通知を確認したり、メールに返信したりすると、一度集中力が途切れ、元に戻すのに大きなエネルギーが必要となります。集中力を保つには、一度に一つのタスクに取り組む「シングルタスク」が効果的です。この方法は、複数のタスクを切り替える際の認知的な疲労を軽減し、結果として効率を高める助けになります。著者は、「シングルタスクを徹底することが、最も早く目標に到達する近道である」と提唱しています。

第3章：集中力のピークに大事な仕事を行う

著者の研究によれば、集中力には一日の中で「ピーク」が存在し、一般的には午前11時と午後3時頃に集中力が高まる傾向があるとされています。このピーク時に重要な仕事を集中的に行うことで、成果を最大化できるとしています。逆に、メールのチェックやSNS閲覧など、エネルギーを無駄に使ってしまう活動は、集中力が低下しているタイミングに行うことが理想的です。著者は、集中力のピークタイムを活かすために、事前にスケジュールを整えておくことを推奨しています。

第4章：休憩と回復の効果

著者の研究によれば、集中力は一度使い果たしてしまうと、そのまま作業を続けても効果が下がるばかりです。集中力が低下した際には、短い休憩を挟むことで、タンクを回復させることが重要です。具体的には、20分間の自然の中での散歩や、単純な動画を視聴することで、リフレッシュ効果が得られるとされています。また、日中の「午前11時と午後3時の集中ピーク」を迎えるためには、前夜のしっかりとした睡眠や、昼休憩の活用が推奨されています。特に自然に触れることで脳がリフレッシュされ、ストレスも軽減されるため、短い休息が集中力の回復には非常に効果的です。

第5章：気が散らないための環境作り

私たちは日常的に通知やSNSによって気が散りやすい環境にいますが、これを避けるための対策も紹介されています。スマホの通知をオフにすること、仕事中のSNSの閲覧をブロックすること、定期的な時間にメールチェックを行うようにすることなど、集中できる環境を作ることが効果的です。著者はまた、外的な要因に頼らず、自分の目標を設定し、それに集中する意識を養うことの重要性も強調しています。

第6章：1日の目標を明確にする

朝にその日の目標を設定し、作業の最初にそれを確認することで、集中力を最大限に活かせることがわかっています。目標があると、日中の中断や気が散る瞬間が訪れても、何度も目標を意識することで軌道修正ができるようになります。これは、学習や仕事においても効果的な方法です。

第7章：集中力とお金の価値

本書のメインテーマとも言えるのが「集中力はお金になる」という考え方です。SNSや広告が私たちの注意を奪うのは、注意力が現代において非常に貴重な資源であるからです。ノーベル経済学賞を受賞したハーバート・サイモンさんも、情報が溢れる社会では、注意力こそが最も重要な資産であると指摘しています。つまり、集中力をいかに自分のために使えるかが、人生の成果に大きく影響するのです。

まとめと感想

『ATTENTION SPAN デジタル時代の「集中力」の科学』は、デジタル時代における集中力の重要性を明確にし、私たちが日常でどのように集中力を最大化できるかを教えてくれる貴重な一冊です。多くの人が感じる「SNSや通知で集中できない」という問題に対し、著者の具体的な対策はすぐにでも試せるものばかりです。また、本書を読むことで「集中力の浪費を避ける」ことが、どれほど効果的であるかを改めて感じました。ネット上でも本書の評価は高く、「日々の生活の質が変わった」といった口コミが多く見受けられます。気になる方は、ぜひチェックしてみてください。

ATTENTION SPAN(アテンション・スパン) デジタル時代の「集中力」の科学