「知恵と工夫」で104勝した「球界のダビデ」

能見篤史投手は、私のいちばん好きなプロ野球選手です。

「甲子園のCSで広島と接戦」って、2014年のファーストステージ第2戦ですよね? 初戦は福留選手のソロアーチで勝利。第2戦は0-0のまま延長12回引き分け。結果、ペナントレース2位の阪神がファイナルステージ進出を決めました。

能見投手は8回まで好投。7回のピンチでは、内角高めの真っ直ぐで見逃し三振を奪っています。あれは痺れました。

しなやかなフォームから繰り出されるストレートは全盛期でも140キロ台。変化球も決して多くない。それでも先発で2ケタ勝利を続け、計104勝を積み上げられたのはピッチングに様々な工夫を凝らしていたからです。

たとえば頭角を現した2009年は、時折サイドスローを混ぜて打者のタイミングをずらしていました。以後も状況に応じてランナーがいなくてもセットで投げたり、長く球を持ったり、かと思えばいきなりクイックにしたり。けん制球も巧みでした。

細身の体躯で強力打線を抑える「ジャイアンツキラー」ぶりは、まるでゴリアテに投石器で立ち向かう羊飼いダビデ。知恵と工夫次第で弱い者も強い者を倒せる。この上なく痛快でしたし、多くのことを学ばせていただきました。

常にポーカーフェイス。でも東京ドームの巨人戦で一度だけベンチにグラブを叩きつける光景を見ました。犠牲フライで同点に追いつかれ、マウンドを降りた直後です。ファウルゾーンへの飛球だったので「獲らなくていいのに」という野手への苛立ちかと感じました。

でもいま思うと、あれは自分への怒りだったのでしょう。エースとしてチームの勝利を守れなかったことへの。プラス味方の生温い雰囲気に対する叱咤。いつもクールな人がたまに見せる激情は周りを揺さぶると教わりました(私も職場で取り入れています)。

またいつかタイガースのユニフォームを着てくれることを願っています。ありがとうございました。

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