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「ストロングスタイル」を体現する一冊

デスぺラード選手から見逃せないコメントが出ました。

「タッグに関しては、ストロングスタイルっていうチームに誘って面白いと思える人がいたら声をかけたいなって思うけど。まあ、無理やり探して手を挙げてもらうつもりは毛頭ない。誰かいねえかなとは思っているけど、誰でもいいとは思ってない」

「ストロングスタイル」は定義するのが難しい概念です。ただのファンに過ぎない私がどうこう言うのはおこがましい。そのうえで拙い見解を述べさせていただきます。

「ストロングスタイル」とは、新日本プロレスがお客さんに見せる闘いの原点です。ゆえにその名を冠するチームのメンバーは、新日本の道場でゼロから鍛えられた選手が望ましい。あとは他の誰よりも強い自分であることを日々追求する人。

デビューして間もないヤングライオンを除外し、なおかつデスぺ選手と同じ軽量級で縛りを掛けるとひとり浮かびます。SHO選手です。

現在の彼はヒールユニット「HOUSE OF TORTURE(ハウス・オブ・トーチャー)」に所属しています。セコンドを乱入させ、レンチで相手を殴るやり方は「ストロングスタイル」とは真逆。しかし元々は総合格闘技やレスリングの経験で培った技術を活かすファイトが特徴でした。

ヒール転向で型破りな発想力やコメント力、そして不良的な一面が解放されたのは事実。ならば手に入れた「幅」を取捨選択しながらある程度残し、そのうえでかつてのスタイルへ回帰するのも面白い。

ところで「ストロングスタイル」を小説のジャンルでたとえるなら何か? ずっと純文学だと考えてきました。一方で純文学はプロレスではなく格闘技とも思える。

いまの私は「ハードボイルド」こそ「ストロングスタイル」を体現するジャンルだと確信しています。

不要なものを排除した、親切過ぎない文体。カネや権威や流行に媚びを売らず、美学を貫く主人公。そして文学に劣らぬ緻密な描写とエンタメ以上に心に響くストーリー。

藤原伊織さんや北方謙三さんなど、純文学からハードボイルドへ転向して成功を収めた作家がいます。それでも世相に対する文学的な批評性がゼロではないからこそ、彼らの作品には個性があり、時代を超えて愛されている。そんな気がします。

特に↓は何度も読み返しました。ハードボイルド・ミステリィであり文学であり社会派であり、なおかつ不器用な恋愛小説。ジャンルの壁をいくつも乗り越えた稀有な傑作です。

SHO選手ならできます。どうなるかはわかりませんが、これまでの己を否定せず、ぜひ自分だけの「ストロングスタイル」を創り上げてほしい。そのときは「テロリストの~」がヒントになるかもしれません。

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