「真剣勝負」で魅せる「お祭り」
オールスター戦と聞いて連想するのはやはりプロ野球です。
頭に浮かぶのは2006年。藤川球児投手が全球ストレートを予告し、カブレラ選手と小笠原道大選手が真っ向勝負で迎え撃つ。見ているだけで筋肉痛になりそうでした。
火の玉ストレート vs フルスイング。何回再生したかわかりません。貧乏ゆすりが止まらなくなる動画です。
何がすごいって、彼らは「オールスター戦」という、ある種負けてもOKな試合だからこれをやったわけじゃない。たしかに場の雰囲気を楽しむ気配は伝わってきます。しかしあくまでも闘い。日本シリーズやリーグ優勝のかかった一戦でぶつかっても「いざ尋常に」の果し合いを全力で繰り広げたはずなのです。
実際、当時の小笠原選手のニックネームは「北の侍」「ミスターフルスイング」でした。藤川投手も2008年、クライマックスシリーズで中日ドラゴンズのウッズ選手に直球だけで挑みました。
シビアな勝負論とエンターテインメント論の中庸。最高レベルで常に共存。超一流のプロの視野を垣間見て、意識と技術の高さに魅せられた次第です。
ではプロレスのオールスター戦はどうでしょう。普段当たらない異なる団体の選手たちが一堂に会し、刺激的な試合をして終わり、では物足りない。お祭りムードは大事だけど「天国か地獄」「隙あらば」の緊張感も忘れてほしくない。
ゆえに私が見たいカードは「高橋ヒロム vs TAJIRI」です。
昨年ヒロム選手はKENTA選手とのシングルマッチで完封されました。強さでも巧さでも歯が立ちませんでした。
TAJIRI選手はKENTA選手と同じ元・WWEスーパースター。いまのヒロム選手に足りないものを彼も持っている気がします。強さであり巧さであり、且ついずれかや両方にカテゴライズされ得ぬ「あわい」の何かを。
真剣勝負の中でそこを学び取るか、己を貫いて正面突破するか? 実現に期待します。