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ハードボイルド書店員の「SANADA=○○○」論

「自分は地元と子どもが好きなんです。あと動物も好きで」
「中途半端な大人が一番嫌いなんですよね」

仲間を裏切ったSANADA選手のコメントです。

冨樫義博「幽☆遊☆白書」で、いや人生を通じて最も共感するキャラクターのひとりである仙水忍のセリフを思い出しました。

「オレは花も木も虫も動物も好きなんだよ」
「嫌いなのは人間だけだ」

彼もいわゆる「正義の味方」である霊界探偵から闇落ちを果たした存在。幽助との死闘に敗れた後では、こんなことも語っています。

「世の中に善と悪があると信じていたんだ」
「戦争もいい国と悪い国が戦ってると思ってた」

かつてのSANADA選手も、こういう平易な二元論=勧善懲悪を体現したがっていた気がします。もちろん善の主要人物として。ファンや会社も期待していました。

しかし念願のIWGP世界ヘビー級王座を獲得しても、もうひとつパッとしない。輝きを纏えない。昨年春の「いまのSANADAは自然体」というコメントがすべてでした。実際にそうなら、わざわざ自称しません。

なぜ支持されない? 自然体なのに。これ以上ないほどの正統派レスラーなのに。散々悩んだ挙句、ナチュラルと正義を装う自分への違和感を見出し、会社や仲間やファンではなく内なる己の声へ耳を傾けたのでしょうか。

断言できます。反逆の象徴たる金髪へ戻ったいまのSANADA選手は、黒髪の頃よりも自然体だと。霊界の掲げる偽善的な正義に背を向け、魔界とのトンネルを開いて人間界を混乱へ陥れんとした仙水がそうであるように。決して無理にヒールを演じているわけではない。演じる意識があったら「子どもと動物が好き」なんて言えません。

偽善的な正義へ中指を立てたい気持ちは私にもあります。だからこそのハードボイルド書店員。誰しもそうかもしれない。今後が楽しみです。

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