「オリジナル」も「アレンジ」も
SUBWAYはお好きですか? 地下鉄じゃないですよ。
家や職場の近所にあった頃は頻繁に通いました。注文は「えびアボカド」一択。パンの種類はそのときの気分、トッピングはスライスチーズ、ドレッシングはわさび醤油でした。
何かの記事で知ったのですが、日本のSUBWAYはパンがアメリカ版よりも柔らかいそうです。体格が異なれば顎の噛む力も異なります。日本人が食べ易いようにアレンジしてくれたのでしょう。
中華料理の定番といえば回鍋肉(ホイコーロー)。豚肉とキャベツ、長ネギ、そしてピーマンを甜麺醤(テンメンジャン)で炒めるのがスタンダードです。このレシピも実は日本向けだと最近知りました。
本場・四川ではキャベツではなくソンミョウ(ニンニクの芽や茎、葉)を使います。味付けも豆板醤(トウバンジャン)が主体。つまり本来の回鍋肉は我々が知っている甘辛いものではなく、ガチで辛いのです。
ちなみに日本向けアレンジを始めたのは「料理の鉄人」で有名な陳建一さんの父・陳建民さんとのこと。たしかに日本人の平均的な味覚からすると、オリジナルよりも「キャベツと豚肉の味噌炒め」の方が安心して食べられる気がします。
実際私は日本版・回鍋肉が好きです。とても助かっています。町中華だとご飯とスープ、漬物、杏仁豆腐が付いた定食でも1000円しません。安くて美味しくて栄養も摂れる。控え目にいってブリリアントです。
一方で「いつかオリジナルを味わいたい」と考えることもあります。サリンジャーやカフカの文学を何度も読むうちに「いずれ原文を」という気持ちが芽生えるように。そして翻訳のおかげで彼らの作品と出会えたことを思い返し、訳してくれた方々に改めて感謝の念を抱くのです。
オリジナルはたしかに尊い。でも時代やお国柄に合わせたアレンジから窺える知恵や工夫、思いやりの精神からも学べることがありそうです。