商品を提供すること=顧客の満足ではない
残念ながら、品質の良い商品を売ることが、顧客満足を向上させるという時代は終わりました。
製造業中心に成長してきた日本には、良い製品を生み出せば、それが顧客の満足につながるとされていました。確かに競争を生み、技術革新が促され、世の中の人々を笑顔にしてきたことは事実です。
では、いま何故それを否定しなければならないのか。
そして新しい時代の「サービスとは」何か。
著者は、オムロン(株)の製品やサービスの保守管理を行うオムロンフィールドエンジニアリング(株)のサービス改革の責任者を務めましたが、その経験をもとにこれらの問いに答えるとともに、サービスの定義や分析さらには再現性の高い具体的取り組みを紹介しています。
サービスは曖昧
「サービス向上」、「顧客満足向上」という曖昧なスローガンを掲げていませんか。
「サービスとは何か」を明確に理解せずに、サービスを考えていても、独りよがりな商品開発、その場限りの接客応対、顧客に頭を下げるだけの単なるクレーム対応になりがちです。
これらは、そもそもサービスの定義をしていないことが問題の根底にあります。
サービスの定義
本書では、サービスの定義を
人や構造物が発揮する機能で、ユーザーの事前期待に適合するもの
としています。
人:サービススタッフ、担当組織など
構造物:製品、設備、システム、仕組みなど
もしご自身の中でサービスの定義が曖昧であれば、これを指標にしてみてください。
御社の、もしくは個々人の事業プロセスに、この定義に当てはまる製品、設備、システムがある一方で、顧客から不満の声が届いているのであれば、それを改善し、チャンスに変える可能性があるかも知れません。
一度、本気で サービスとは、という課題に向き合ってみましょう。
曖昧であったものに対してどのようにアプローチしていけば良いかの方向性がわかるはずです。
例えば本書では、曖昧で「カタチが見えない」もの(サービス)を買ってもらうための事例について、「見える化」をキーワードにして触れています。
サービスを見える化
それでは、「見える化」をキーワードに、先ほどの定義にあった「人や構造物が発揮する機能」を私なりの解釈でみていきましょう。
例えば、レストラン。
1. オープンキッチンにして、食事が提供されるまでの時間を楽しみに変える
2. 食材生産者の苦労話をメニューに表示してわくわくストーリーを持たせる
3. 入店待ち時間をスマホアプリに表示して、イライラせずタイミングよく来店できるようにする
どうでしょう。キッチンは設備、生産者の苦労話しは人、スマホアプリはシステムを使って「見える化」をしてみました。
それぞれの機能を高められれば、おのずとサービスの質が高まるはずです。
売り上げに貢献しているかどうか数値化するのが難しい曖昧さがありますが、顧客が買うのは、こうした 曖昧さ です。
なので、分かりやすいよう「見える化」してみましょう。
他にも興味深いテーマとして。
勝つための「サービスプロセス」をモデル化する(第4章モデル化するとサービスの骨格が見えてくる)
ここでは、顧客の関心事から正しいサービスプロセスを構築する方法について。
サービスか、余計なお世話か(第6章サービスと顧客満足のカギを握る「事前期待」)
ここでは、顧客から期待されている事を超えたサービスで感動をしてもらうために必要な事が述べられています。
まとめ
全ての企業はサービス業である
これに尽きます。
毎年新しい商品を開発し、売り続ける「フロービジネス」から、継続収益型のサブスクリプションや「ストックビジネス」にシフトしている企業が好調な業績を上げているのは、著者の主張と合致しています。
これまでサービスには無縁と思い込んでいた企業も、この流れには逆らえないでしょう。
一旦、顧客に「良いサービスだ」と認めてもらい、それを継続して利用し続けてもらうことができれば、ストックビジネスの割合は増え永続的に収益を得ることが出来きます。
モノの品質や価値に頼ることから脱却し、サービスを売ることを本気で考えてみましょう。
本書はその方向性を示してくれる一冊だと思います。
参考:顧客はサービスを買っている
著者:諏訪 良武
監修:北城 恪太郎
発行:ダイヤモンド社