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「おーい!落語の神様ッ」

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創作大賞2024応募用の作品です。落語に少しでも興味を持って貰えたら嬉しいという思いで書きました。
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記事一覧

おーい!落語の神様ッ 最終話

 目を覚ますと咲太はベッドの上にいた。病院だとわかる。窓から堂々と入り込んでいる陽射しを…

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おーい!落語の神様ッ 第十五話

 八日目、咲太が楽屋入りすると、いつもと違って賑やかだった。どうしたのかと思って顔を出す…

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おーい!落語の神様ッ 第十四話

【神々の寄合 シーン77】  自らを半福神と称する青白い顔をした手の平サイズの爺さん達が永…

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おーい!落語の神様ッ 第十三話

 梅雨明けの夏空。遠くに入道雲が見える。今日も暑くなりそうだ。  すでに玉のような汗を掻…

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おーい!落語の神様ッ 第一話

 紋付羽織袴姿の男が深夜の浅草を千鳥足で歩いている。この界隈の人達は気にもとめない。「ど…

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おーい!落語の神様ッ 第十二話

【神々の寄合 シーン66】  咲太が眠った後で、自らを半福神と呼ぶ青白い顔の小さな爺さん達…

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おーい!落語の神様ッ 第十一話

 飛行機やホテルの手配、空港からホテルまで車で送迎してくれたのは岡津だった。人気の頃の咲太ならいざ知らず、今や見事に凋落してしまった咲太みたいな芸人をこれほど手厚くもてなしてくれる世話人は貴重な存在と言える。売れてない芸人はぞんざいな扱いをされるのが当たり前で、それが悔しかったら売れるしかない。咲太のいる世界はそういう世界だ。  岡津は二か月前、浅草の出番の後、咲太目当てに佐賀からわざわざ来てくれた、あの紳士だ。二年前に佐賀のお寺で開催された落語会で咲太の落語を聴いていた。そ

おーい!落語の神様ッ 第十話

 咲太はみかんと解散して浅草から師匠宅へ向かう間、例の爺さんに初めて遭った夜からこれまで…

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おーい!落語の神様ッ 第九話

【神々の寄合 シーン49】  咲太が眠った後で、青白い顔をした小さな爺さん達が車座になって…

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おーい!落語の神様ッ 第八話

 倒れた柳咲にしがみつくように救急車に乗った後は記憶が断片的だった。病院の待合所が疲れた…

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おーい!落語の神様ッ 第七話

 師匠宅へ行くのは正月以来だった。その時の咲太は師匠とはろくに話さず、挨拶が済んだらさっ…

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おーい!落語の神様ッ 第六話

 咲太は自分の体内時計が狂ってしまったことにショックを受けていた。落語家になって十四年。…

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おーい!落語の神様ッ 第五話

 夏風亭とんびが国民的演芸番組『芸点』を降板すること、その理由が、まだ幼い難病の愛娘のた…

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おーい!落語の神様ッ 第四話

 せっかく禁酒を始めたばかりなのに台無しになるといけないので、咲太は爺さんと一杯やりたい気持ちを飲み込んだ。「野暮用がある」と言うと「そうかい」と意外にもあっさり解散した。稽古もしたかったし、日がある内に帰ってやりたいこともあったので好都合だったが、やや拍子抜けだった。  歩き稽古の合間、どうしてあんな風に爺さんに食ってかかってしまったのだろうかと思い返していた。咲太自身も心のどこかで落語は男のもので、女には落語は無理なんじゃないかと思っているのを自分でもわかっていたし、常々