【読書録】「仕事ができる」とはどういうことか?
楠木 建 山口 周 著
仕事においてのセンスとはなにか。人気者はなぜ顧客に選ばれるのかを紐解く一冊。
著者ふたりの対談形式で綴られる本書。楠木さんと山口さんが書いた本を読んだことのある人は多いのではないだろうか。現代に求められる人物とはこういう人なんだということが分かった。
センスのあるビジネスマンって?
“センス”と聞くだけで、自分には手の届かないもの、先天的で磨きようのないものとしてとらえられることが多いとふたりは語る。
センスの良いビジネスマンや企業はお客様から選ばれ、事業も伸びていく。相手から見て、自分にない力を持っていると認知されるからだ。
では、センスを身につけることはできないのかというとそんなことはない。ただ事後性が高く、“スキル”のようにすぐ身につく学びやすいものでないので、修練が必要なのだ。
だから、求められる。
企業においても同じことが言える。時代の先端を走っている印象のNetflixも、実はもともとDVDの郵送レンタルビジネスからスタートしている。大きすぎる競合との戦いのために培われた徹底したユーザーの分析が素晴らしいコンテンツをつくり、昨今のサブスクリプションブームにフィットしたのだ。前提としての修練レベルが段違いなのだ。
仕事においても日々、インサイド・アウトの姿勢で取り組むことがセンスを身につける必須条件のように感じた。
インサイド・アウトの人は、「それはどうなるかわかんないけど、自分はこうしようと思う」と思考する。つまり自己の自由意志なんですよね。
楠木さんは意思が先にくるのが仕事のできる人だと語る。自分の考えだから熱を持って話せる。自分が気になるからとことん調べる。“自分はどうしたいのか”を常に意識して仕事をしていこうと思った。
課題解決におけるセンス。
“センスの良い経営”として語られている、原田泳幸さんによってマクドナルドが立て直された話が好きだ。課題解決は順序が命。全てを線で見て、奥行きを考えた判断を下していくことの重要性がわかる。
業績不振だったマクドナルドに着任した原田さんが初めにおこなったのが、商品を美味しくすること。作り置きをせず、出来立てを提供するフローに切り替えた。
全店舗の調理プロセスを一斉に変更し、明らかに美味しくなったところで100円マックを始める。多くの人が一回は食べにくる中で、「あ、おいしくなってる」と思わせる。
そこからメニューに手を加えた。ガッツリとしたランチメニューを作り、単価UP。著者ふたりはこの流れはもはやアートだと言う。
ひとつひとつを取ってみたらなんて事のない施策が、流れの戦略を立てて輝く。自分が取り組む課題に対しても、こんな戦略立てたアウトプットをしてみたいと思った。
センスは比べない。
センスの良し悪しは、好き嫌いと同じ。わたしはこの主張も好きだ。優越のつけられるスキルとは違い、それぞれの方向にセンスが伸びているイメージ。
「自分の価値基準を、自分の言葉で、自分以外の誰かに説明できる」
教養があるとはこういうことだと楠木さんが語る。決して他者と比較してどうこうという話ではないのだ。
マウントを取り合うことなく、人は人でそれぞれが生き生きとしている。そんな世界になったらいいと思う。
本書を通じて、今まで以上に個の価値を上げたいと思ったし、自分の価値基準を保つためにたくさん手を動かしてインプット・アウトプットを繰り返していく必要があると感じた。
今の世の中に求められているのはこんな人物、というのが自分の中でも形作られたので、読んでよかった。