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天才の頭の中

あなたがこれまで「この人は努力の天才だなぁ」と感じた人はいますか?

私にとっては「努力の天才」というと、学生時代に所属していた部活の先輩・Kさんの顔がまず思い浮かびます。
地獄のような練習が続き、私や後輩部員が手を抜きがちになっていても、平然とした顔で毎日トレーニングメニューをこなしていたKさん。
私にとって、Kさんは尊敬する先輩であり、一方では何を考えているのか理解できない少し怖い人、でもありました。

山里亮太さん(山ちゃん)が芸人としての半生を語った『天才はあきらめた』を読むと、山ちゃんは正真正銘・努力の天才だということが分かります。
芸人になるには大阪に行かなければいけないと言って必死に勉強し、関西大学に合格。極度の人見知りにも関わらず、大学生活と並行してNSCへ。NSCでは猛烈な勢いでネタを書き続けます。
2回コンビを組みますが、お笑いに対してあまりにも山ちゃんがストイックすぎて、追い詰められてしまった相方から解散を告げられます。それでも諦めることなく、他の人とコンビを組んでいたしずちゃんを強奪して3つ目のコンビを組み、結成2年目のM-1で見事に準優勝。

山ちゃんが芸人として成功するまでに続けてきた、そしておそらく現在も続けている努力の積み重ねは、常人が真似できるものではありません。
私は山ちゃんは部活の先輩・Kさんと似たようなタイプの天才なのかな、と感じました。

しかし山ちゃんは、冒頭で自分は自然に努力が続けられる人間ではなかった、と語っています。

自分は何者かになる。そんな、ぼんやりだけど甘い夢のような特別な何かを容易に見つけられて、何者かにたどり着くため必要な労力を呼吸するようにできる人、それが天才なんだと思う。  
でも、昔から僕はハッキリわかっていた。「自分はそうじゃない」。この自覚は、自然と努力へのブレーキを強めてしまう。さぼる言い訳にしてしまうし、最悪は止めてしまう。

山里亮太『天才はあきらめた』

努力を続ける才能があるわけではない。
だからこそ山ちゃんは周囲の人間への嫉妬・怒りをエネルギーにしたり、あの手この手を使って自分は努力の天才だと必死に思い込もうとしてきたのだと。

「モチベーションが上がらない」なんて言ってダラダラしていると、「仕方ない」という言葉が頭に出てくる。この言葉がさらにダラダラを長続きさせる。  
そもそもモチベーションなんて上がっていないのが普通なのだ。モチベーションが上がっている状態っていうのは、あの国民的兄弟キャラのゲームの中で言うとスターを取っている状態。ただのラッキーで、モチベーションが下がってる状態が通常なんだから、常として頑張らないといけない。そう考えるとサボる数は減った。

山里亮太『天才はあきらめた』

私にとってKさんは天才であり、理解できない遠い存在でした。
でも山ちゃんの本を読むと、Kさんも、実は山ちゃんみたいに天才になるための工夫を色々としていたのかもしれない、と思えました。

私は、彼らのような天才にはなれないかもしれません。
でも、この本との出会いは、私が努力の天才に近づくための小さな一歩になりました。


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