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長編小説 結刃流花譚

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#小説

結刃流花譚  第2章  ~ 過ぎし春の忘れ音 ③  花の浮橋  ~

結刃流花譚 第2章 ~ 過ぎし春の忘れ音 ③ 花の浮橋 ~

    目に留めてくださりありがとうございます。お時間がございましたら、読んで何かを受け取っていただけると嬉しく思います。

 まるで春の雪解けのように

 まるで夏の木漏れ日のように

 まるで秋の実りのように

 まるで冬の星空のように

 心を潤し ひとときの安寧をもたらすような邂逅が
 
 決して生き易くなどない現実を

    少しだけ 優しく見せてしまうから

 

 
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結刃流花譚  第2章  ~  過ぎし春の忘れ音 ② 天が泣く朝 ~

結刃流花譚 第2章 ~ 過ぎし春の忘れ音 ② 天が泣く朝 ~

    

 脆く、儚く、淡く、砕け散ったそれは
 いつしか心を蝕み尽くすか
 それとも強靭な刃と化すか―――――――

****************

 再び意識が朦朧とし、次第に重なりゆく白い靄に視界が包まれてゆく。すべてが白になり、また白が溶け始め、広がる景色が明瞭になってきた時には場面が変わっていた。眠っていた感覚はないが、どうやら眠りから覚めたところのようだ。

 柔らかい春の朝日が

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結刃流花譚  第2章  ~ 過ぎし春の忘れ音 ① 幻影 ~

結刃流花譚 第2章 ~ 過ぎし春の忘れ音 ① 幻影 ~

    第1章を修正中の状態で、順番が前後してしまい申し訳ありません。ここから清春の1年前の記憶を辿る第2章となります。表現に四苦八苦しておりますが、続きも読んでいただけますと幸いです。

 清春が目を開けると、その視界には安堵の表情を浮かべ両横から覗き込む双子の妹である天音と4つ離れた異父弟の樹の顔、そしてその間に覗く見慣れぬ天井――――――と何故か一瞬思われた、見慣れた天井が映し出された。

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結刃流花譚  第1章  ~  残り香の調べ⑨  知の鏡 ~

結刃流花譚 第1章 ~ 残り香の調べ⑨ 知の鏡 ~

        第1章の最後の話です。何度も書き直してしまっていますが、少しでも伝わる文章になっていると幸いです。

    錦野から本部に戻ると、降り立った花弁舞う庭は柔らかな夕日に照らされ昼下がりとはまた異なる風情を見せていた。
    飛び立つ際には向かう方向と眼下の景色のみに視線が向かい気付くことはなかったが、戻ってくる際に初めて空から見た天叢雲本部の全貌は、自然の中に佇む森厳な神社のよう

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結刃流花譚  第1章  ~  残り香の調べ⑥  哀音  ~【編集予定】

結刃流花譚 第1章 ~ 残り香の調べ⑥ 哀音 ~【編集予定】

    以前より読み続けてくださっている方も、初めて目に留めてくださった方も、この頁を開いてくださりありがとうございます。お時間が許されるようでしたら読んでみていただけると幸いです。

   

    結界の中に入った瞬間、部屋中に蔓延し、建物の外にまで流れ出ていた禍々しさの出処がここであることが手に取るようにわかった。先程までと比較にならないほど空気は重く濃く、立っているだけで息苦しさを感じる

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結刃流花譚  第1章  ~  残り香の調べ②  枷と糧  ~

結刃流花譚 第1章 ~ 残り香の調べ② 枷と糧 ~

 続けて読んでくださっている方も、偶然目に留めてくださった方もありがとうございます。pixivに載せているものを遂行し直しながら掲載していっておりますが、この辺りから大幅に修正が入ってきます。形を整え順に掲載し直していきたいと思っておりますので、pixivの内容、小説家になろうの内容に矛盾ができてしまうことをご容赦ください。尚、現時点ではこちらが最新の修正版となります。
    少しでも心に残る言

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結刃流花譚  第1章  ~  残り香の調べ①  花嵐  ~

結刃流花譚 第1章 ~ 残り香の調べ① 花嵐 ~

 続けて読んでくださっている方も、初めて目に留めてくださった方もありがとうございます。ここから第1章となります。便宜上、この世界ではすでに年度の始まりが4月となっていることとさせていただいています。
    もしよろしければ読んでいただけると幸いです。

 桜吹雪の中で、己の学んできた精一杯を込めて、竹刀を振るう。

 精神を集中させ、相手との間合いを詰めた刹那、両手に力を込め横に薙ぐ。
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