生活に定着するブランド
僕たちの日々の生活は「見慣れたブランド」で成り立っています。例えばキッコーマンの醤油、キューピーのマヨネーズ、カゴメのケチャップ。それ以外にもたくさんあります。僕は「昔から変わらないもの」が好きなので、家には昔ながらのブランドもたくさんあります。例えばS&Bのテーブルコショー。何気ないコショーですが、味も香りも形態も日本独特じゃないでしょうか。家でインスタント・ラーメンを食べるときは必ず使います。ちなみに、ガリガリとミルで挽くブラックペッパーもあるけれど、インスタント・ラーメンには昔ながらのテーブルコショーです。一方で、あらたに生活に入り込んで定着するブランドもあります。最近ですとアーモンド・ブリーズ(アーモンドミルク)がそうです。特に気に入っているのは砂糖不使用のもので、味も自然で嫌味がなく、健康にも良いし使い続けられます。アーモンドミルク自体はかれこれ10年くらい前から市場にあるでしょうか。しかし僕が使い始めたのは最近で、主に朝食のシリアルに使っています。独特の風味が玄米フレーク(これも無糖)によく合います。
「使い続けてもらえる」はビジネスの観点ではとても重要です。しかし現代の市場においてブランドが消費者の生活に定着するのは容易ではありません。競争が激しく、消費者の嗜好は多様化しています。今回はこんなテーマについて考えてみましょう。先ほどのテーブルコショーには仲間がいました。昔、食卓の真ん中に鎮座していた「食卓塩、独特の瓶に入った卓上醤油、そしてテーブルコショー」。思い出してみるとどれも「赤いキャップ」で、まるで3種の神器のようだったと感じます。これらは何が成功のレシピだったかというと「使いやすさ」です。瓶のサイズやカタチが決め手です。つまり消費者が製品やサービスを簡単に利用できるように設計されていると、ブランドは生活の一部として組み込まれやすくなります。しかも「卓上」「テーブル」など生活の中での「場所」までネーミングで示されていて、明らかに生活に溶け込む意図が見て取れます。もっとも生活に浸透しこれらの便利さは「当たり前」とみなされ、次の新価値にとって替わられることもあったでしょう。僕にとっては「小さい頃からのブランドの思い出、ノスタルジー」もあり使っていますが、いまでは他の調味料と一緒に棚に収まっています。
最近では「サステナビリティ」もブランドが生活に定着するポイントです。先ほどのアーモンド・ブリーズもそうです。「砂糖不使用」はそれだけでサステナビリティだと思います。「血糖値の安定」「体型維持(ダイエット)」「歯の健康維持」などがサステナブルな生活に結びつくより細分化したワードです。消費者は「健康志向の食品」が欲しいのではなく「健康維持」が欲しいのです。ここは意外と重要な点だと思います。僕たちは健康に良い製品を開発しようとするのですが、消費者の視点では「いまの生活や食事をいつまでも続けられること」が欲しいのであって製品自体は手段に過ぎません。それに必ずしも「健康」のみがサステナビリティではありません。例えば社会との協調性や経済的にも使い続けられる受容性も含まれる。こういう視点は最近のインサイトの重要なテーマになっています。