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映画「ロストケア」を観て

8月25日「ロストケア」という映画を観た。2023年の日本映画で、前田 哲監督の作品。葉真中顕による『ロスト・ケア』は、日本のサスペンス小説が元となっている。

キャストは、斯波宗典役の松山 ケンイチ大友秀美役の長澤 まさみ椎名幸太役の鈴鹿 央士、羽村洋子役の坂井 真紀、斯波正作役の柄本 明などである。

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あらすじは、

ケアセンター八賀の職員、斯波宗典は若くして白髪だらけな風貌ながらとても献身的な介護士。親切な仕事でセンターの利用者からも好感を持たれ、新人や同センターの同僚、センター長からも信頼される好人物だった。ある日、利用者の自宅でその父親とセンター長である団元晴が亡くなっているのが発見される。借金があり金にだらしなかった彼は事務所にある利用者の合鍵を持っており、窃盗目的で犯行に及び、その最中に足を滑らせて階段から落ちての事故死である可能性が濃厚な線だった。しかし屋内に落ちていた注射器の存在だけが不明の中、犯行近くの防犯カメラ映像から斯波がアリバイの証言と異なる行動をとっていたことが判明する。彼を取り調べると、利用者が心配で利用者宅へ赴いた所、団と鉢合わせとなり、口論の末にもみ合い、階段から転落死させてしまった事を語る。 正当防衛を主張する斯波宅の家宅捜索を行い、3年間分の介護ノートを見つける。それとは別にケアセンター八賀での利用者の死亡件数が県内平均よりも多いことがわかり、介護ノートと合わせて調査を行うと、斯波の休日に亡くなる事が多いことと、別の利用者宅から盗聴器を見つけたことから彼を追求すると、斯波は殺人を認めた。その理由は、介護している家族のためであると語った。
取り調べの担当検事である大友秀美に、42人の老人を殺害したと自供する斯波。最初の一人は斯波自身の父親だった。数年前に斯波は認知症が進んで行く父親の介護のために職を辞めたが、父親の年金だけでは食べて行けず生活保護も受けられず、困窮の果てに死にたがる父親を手にかけた。それが、介護老人を殺すことは救いだという彼の思想の始まりだった。斯波に親を殺された被害者の中には、幸せを掴んで斯波を庇う者もいたが、同僚だった由紀は介護の仕事に絶望し、身体を売る商売に堕ちてしまった。
死刑判決を受けた斯波に、自分も父を殺したと打ち明ける検事の大友秀美。彼女の両親は離婚して秀美は母親に育てられたが、最近になって父親が連絡を試みて来たのだ。だが、秀美は無視して返信しなかった。その直後に父親は貧困の中で孤独死した。父の死の事実から逃げ続けていたが、最近になって父に詫びる境地に辿りついたと話す秀美。斯波も、父親を殺した後に、息子に感謝する遺書を見つけたことを思い出していた。

出典:Wikipedia

と、いった内容。

で、観終わっての感想。

介護を経験した人であれば、この作品に引き込まれてゆく

介護問題。
誰でも、ある一定の年齢以上になれば、関わってくる問題である。
その介護の社会的な問題点を、ずばりとこの映画は指摘してくれている。
ボクも介護を経験した一人であるが、おそらく経験者が観ると確実に引き込まれてゆく作品となっている。
監督のセンスを感じる映画でもあり、ストーリーのつなぎ方、映像の見せ方を含めボクは知らず知らずのうちに引き込まれていった。

観賞前、津久井やまゆり園を元にしている作品と勘違いしていた

日本人であれば忘れることができない事件、「津久井やまゆり園の障害者殺人事件」。鑑賞前にプロモーション的映像を見て、勝手にそれが原点の作品かと思っていた。そのような作品だとしたら、観たくなかった。
しかし、それはボクのまったくの勘違いで、ある意味真逆の作品だった。
むしろ、犯人は優しい心を持ち、苦しい人の意持ちを理解している。
ボクのように、プロモーションで勘違いする人がいそうである。

犯人に共感してはいけないが・・・

殺人。
それは悪であり、法で裁かれるべき。それは当たり前であると思う。
しかし、この映画では犯人の気持ちに共感してしまう部分もある。「救い」という言葉が出てくるが、本来はその救いを国が行政がするべきである。
映画の中で、犯人に共感しかけている中で、裁判のシーンが出てくる。
そして、その中で「救われた」と思った家族の一人が、「人殺し!」と叫ぶシーン。
ここで、鑑賞者である自分も、ハッと目を覚ます。
そう、彼は殺人という犯罪を犯した人物だったのだ。
それまで、犯人に共感している自分がいたことに、間違いない。

切実な社会問題をテーマにした映画

犯人は、父親を介護していた時期がある。
その父の介護で、ついには仕事を辞め、アルバイトと介「」護を両立した生活をしていた。しかし父の認知症が進み、アルバイトを止めざるを得ない状況になる。
その中で、行政に生活保護を申請するも、「あなたは働けますよね」と却下される。ついには毎日食事もとれない生活の中で、父親に虐待するようになるのだ。
「一度底に落ちてしまうと、もう戻ることができない。」
この社会は、底にいる人に手を差し伸べてくれない。
残念ながらその通りであると思った。

話はそれるが、生活保護は外国人には簡単に出すとも聞いている。
なのに日本人には、相当厳しい。どうなっているのだろう。

映画の中では、対照的な位置にいる検察官の家族に対する介護状況。
やるせない気持ちになる。


この作品は、今の社会に対する問題提起、そして、現実をまざまざと見せてくれている。

ボクの心には、心の奥底に刺さる作品であった。

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