マガジンのカバー画像

ライターとして生きていく

60
1996年よりフリーランスのライターとして活動しています。日々の仕事の中で感じたことや学んだことなどの記事をまとめています。ライター初心者の方にとって、何か参考になれば幸いです。
運営しているクリエイター

#エッセイ

素敵な「文化的雪かき」

昨晩、ようやくトンネルの向こうに一筋の光が見えた。 出口はもうすぐだ。 今月は出張や取材が多く、次から次へと仕事が来るものだから、土日も関係なくひたすら仕事をしていた。 そして22日の今日になっても、まだ年内に4件取材が残っているという状況。ちょっと震える……。 だが、それでも今日を乗り切れば、「なんとか28日中には仕事を終えられる!」というところまでこぎつけた。ようやくだ。 私はしがない商業ライターなので、仕事はいつもやりがいのあるものばかりじゃない。新聞や雑誌に記名入

その仕事を続けられる理由は何ですか?

気がつけば、随分たくさんの人を取材してきた。 今月に入ってからも、すでに名古屋、神奈川、佐賀と出張取材に行き、メーカーや酒蔵、飲食店の社長さんたちに話を聞いた。 今月取材した人たちはなぜかみんな「おしゃべり」で、毎回インタビューに3時間以上かかった。これを一体どうやって記事にまとめたらよいものやらと、今は頭を抱えている。 長時間話を聞いた人のことは年月が経っても記憶に残るが、短い取材でも深く印象に残っている人もいる。 今でもよく思い出すのは、20年以上前、関東一円にチェー

小さな奇跡を起こすのは、いつだって一歩前へ進む勇気。

気づけばフリーライターという仕事を始めて25年が経つ。 ただ、ずっと順風満帆だったかといえば、決してそんなことはない。請け負っていた案件がクライアントの都合でほぼゼロになったこともあるし、仕事量が増えるばかりで自分が書きたいものは書けないと悩んだこともある。 人脈も何もないところからのスタートだったので、最初の頃は「何でもやります!」のスタンスで仕事を請けてきた。 だから、あらゆる媒体でいろんなことを書いてきたが、30代も半ばにさしかかった頃、「いつまでもこんな”なんでも屋

「真実」を自分の中で「虚構」に変えて言葉にする。

私がライターとして仕事の文章を書く時に心がけていること、信条としていることが2つある。 1.消しゴムで書け これはライターになる前に、元新聞記者だという方に教わった言葉だ。 ペンじゃなく消しゴムで書く? 頭に「???」が浮かびそうな言葉だが、たとえば1000字の原稿を書く時に、1000字分の情報を集めて文字を埋めていくのではなく、それよりもっと多くの情報を取材で集めて、不必要なものを削っていく、ということだ。 集めた情報はどれも大事だと思っても、その中で取捨選択をする

「OKです!」と「流石です!」の間にあるもの

私は仕事でちょっとプレッシャーのかかる原稿に取り組んでいると、「それ」以外の文章を書くことができなくなってしまう。四六時中、何をしていても「それ」が頭の中で綴られており、他の文章を考える余地がなくなってしまうのだ。この2日はその状態だった。 今回書いていたのは、初めてのクライアントのもの。1本目の案件というのは、やはりいつも緊張する。相手の感性や価値観、仕事の進め方などもわからないし、こちらの全力が通用するのかもわからないから。 それに、最初の仕事の出来で、「次」につなが

“好き”を仕事にしたら、きっと“その後”が大事。

これまで、さまざまな業界で働く、さまざまな職業に就いている人たちに取材をしてきた。 先日は、エステサロンのホームページの新規制作で、エステティシャンの方に話を伺った。 彼女はもともと建築事務所の設計士。 まったく畑違いのエステ業界になぜ飛び込んだのかと聞けば、答えはとてもシンプルだった。 「エステが好きだったから」 自身がいろんなエステサロンに通い続けていたら、ある先生から「あなたは手先が器用だから、エステティシャンに向いていると思うよ」と言われ、2日間で学べる講習を受け

25年前、初めて自分の力で「書く仕事」を得た日のこと。

「作家になる」と言い張って、大学時代に一度も就職活動をしなかった私は、大学を卒業した時はただの「作家志望のフリーター」だった。 塾講師のアルバイトを続けてお金を稼ぎ、家事をすることで実家に住まわせてもらい、1円にもならない小説を書き散らしていた。 週に一度は大阪編集教室のライターコースへ通い、「作家がダメでもライターとしてやっていくから」と、そんな言葉で親を納得させていた。 ライターコースを修了する時、先生に「今後」を聞かれ、私は「フリーランスでやること」を希望した。 教

たった1行のコピーが人生を変えることもある。私の忘れられないあのコピー。

先日、広告制作会社勤務のWebディレクターである夫と「好きなコピー」の話を肴に夜中まで延々飲んだ。 なんでも夫の会社のチームで、「好きなコピー10選」をリモートで発表し合う、というのをやって盛り上がったとのこと。 「あなたは何を10作選んだの?」 「このコピー、懐かしいね」 「やっぱりこれいいなぁ」 なんて、そんな話を延々と……。 これがめっちゃ楽しかったのだ。 私と夫が1位に挙げたのは、サントリー山崎12年の     何も足さない     何も引かない 有名すぎる

取材の面白さは、人の生き様を少しだけ垣間見れることだ。

世の中の「ライター」と呼ばれる職業を大きく分けると、今は3つに分かれるように思う。 少し前までは ・取材して記事を書く→ライター ・主に広告などのコピーを書く→コピーライター の2種類だったような気がするのだが、最近はどうやら「Webライター」と呼ばれるジャンルができたらしい。 このnoteでも「Webライター」と称する人々が自分の仕事のことなどをよく書いているのを見かける。 私が大学を卒業した頃なんて、「ライター」と呼ばれる職業に就きたければ、新聞社や出版社、もしくは