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「大人になった」とどうか笑って

試験期間。
明日、というか、もう今日もテストがある。

試験がなかったら、私は。
あの人に、高校時代好きだった先生に会えたはずだったのに。

私の所属する研究会のお知らせの冊子で知った。
夏の研究会の集まりに偶然にもあなたが来ること。
かつて、高校時代に私が好きだった、今、大学で英語を学ぼうと思ったことにも通じるあなた。
大切で大好きな奥様と子どもさんがいらっしゃるあなた。
高校卒業の時に告白をして、ちゃんと振ってくれたあなた。

そして、当時の私に、少しだけ、人を好きになる事の残酷さを教えてくれた。

卒業してから一度もあっていない。どころか、私はコロナの性で大学生活もオンライン。高校に顔を出すことも一度もなかった。
あなたとも当然、会っていない。

私は卒業してから、二人の人と付き合った。二人目の人と別れたのはちょっと前。だから今恋人はいないけど、だからと言ってあなたに未練はない。だって、元彼さんのことを私はちゃんと大好きだった。かっこいい人だと思っていたし、実際すごく大切にもしてもらってた。

それでも、あなたに会うのはちょっと心が苦しくなるような気がしてた。今回会えるとなって、少し心がしんどかった。欠席してもいいかもなと一瞬思った程度には。

違う、もう好きじゃない。
私の心は別にある。好きな人はちゃんといる。
ていうか、三年もあってなくて、姿もきっと変わっているだろうし、当時私が本当に好きだった思考や言葉だって、きっとそこそこ変化しているに違いないから。

ついでに言っとくとあなたとの恋が実るなんて思ったこと一度もないから!!
だってあなたは私と初めて出会った時から奥様がいたし、好き合ってるのはずっと分かってたから。その状態で付き合いたいなんて思ってなかった。そんなの良くないじゃん。だって、不倫だよ!?
それに仮に私がそういう申し出をしたところで、そういう不道徳なことは絶対しないあなただから、大好きだった。

ただ、あなたに認めてほしかった。あなたに憧れて、あなたの話をもっと聞いてみたかった。もっと知りたいと思っていた。そういう価値のある人だと思っていたから、ずっと好きだった。
だから、その思いはある意味一部変わっていない。
「先生」として、もう一度話せる機会があるなら、私の話を聞いてほしくて、あなたの話を聞きたかった。それは、こういう思いを私が持っている事は今だって悪くないと思ってる。

当時の自分が死ぬほど悪いなんて言わないけど、今の自分の方がよっぽど魅力的になったと思う。大学に入って、上京して、彼氏が出来て、他にもいろんなことがあった。本当に見違えるほど変わったんだよ。大学からの知り合いに高校時代の写真見せたら、「誰かと思った~」って言われるくらい変わったんだ。だから、その今の私もあなたに見てほしかった。認めてほしかった。

ただ、一言「大人になったね」と笑ってくれたら、私はあなたへの「恋」だと思い込んでいた「憧れ」から脱出できると思うから。

14も年の違うあなたにずっと恋焦がれて、本当に一生懸命背伸びしていたから。あなたばっかりを見ている、そんな「子ども」の私だったから。

もう「大人」になったよ、と伝えたい。

私の世界はあなただけじゃなくなった。私はちゃんと三年という時間を進んだよ。いい出会いもあったよ。あなたからもらった希望の一部はいろんなことがあって失ってしまったりもしたけど、こうして生きているよ。
私は一人の大人として、親愛なる、尊敬するあなたが、こうして生きていることを嬉しく思っているんです。
だから、あなたに会いたかった。
もう一度話したかった。

願わくば、一言「大人になったね」と笑ってほしかった。

会えなくて悔しいよ。
会いたかったよ。

神様、チャンスがあるなら、どうかもう一度。
それくらい祈っても許されるでしょう?

どうか、私の我儘な願いが叶って、もう一度会えるなら。
その時はどうか。
「大人になったね」と笑ってください。

大好きだった「大人」のあなたにやっと追いついたことを感じたいから。




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