マンガでわかる!認知症の人が見ている世界 【読書感想文】 同じ状況の違った見方を漫画で紹介
★★★★☆
Amazonでレビューしたものです。
1.理学療法士さんの書かれた本です
著者の川端智という方は理学療法士さんだそうです。
以下、本の著者紹介より。
色々活動をされている方のようです。
(HPは更新されておらず、今もこちらの資格の講演会がやっているかは不明ですが、、、)
監修の遠藤先生は老年医学や認知症の専門医の先生です。
この時は、聖路加国際大学臨床教授でした。が、今はクリニックを開業されているようです。
2.比較漫画がわかりやすい
こちらの本は、第1章と第2章の大きく2つの章に分かれています。
①第1章 認知症の世界をのぞいてみよう
記憶低下、見当識障害、物盗られ妄想、失語などの症状が、それぞれ、まず漫画でケース紹介され、その後文章で解説がされています。
漫画は面白い形式で、同じケースの同じ状況を「家族やケアをする人が見ている世界」と「認知症の人が見ている世界」の2ページに渡って描かれています。
例えば、最初の「何度も同じことを聞く」では、
家族からすると、5分ごとにデイサービスの日を聞かれてイライラしてしまい、最後は聞こえないようにそっぽを向いてしまうという話ですが、
認知症の人からすると、忘れっぽくって心配で、デイサービスの日を聞いたらいきなり怒られたり質問に答えてもらえなくて心配になる、という話になっていました。
起こっているのは同じ現象なのに、家族と認知症の人ではこんなに見方や捉え方が違うと、わかりやすく表現されています。
他にも、家族の人が困りがちな状況について、認知症の人の見方がわかりやすく漫画にされ、その後文章でこういったことが起こる理由と対応について解説が載せられています。
②第2章 認知症の「?」をひも解く事件簿〜心の中を推理するコツ〜
深夜の徘徊や、介護拒否、サラダを嫌がるなど、主に介護施設など(一部家庭)で、介護者が困るケースについて、著者が漫画の中に登場し、解決する対応を実行し、問題が解決するところまで漫画で描かれています。
実際はなかなかこのようにうまくはいかない場合も多いと思いますが、こういった対応策もあるのかなと、参考になるとは思います。
合間にコラムや、監修の先生による医療解説も入っています。
パーソン・センタード・ケアについても紹介されています。
③NHKでも取り上げられたようです
NHK今日の健康のテキストにもこちらの本の内容が紹介されたそうです。
最近NHKで認知症について取り上げられることが多いですね。
3.気になった点
ちょっと気になった点もありました。
①早めに診断は受けたほうがいい
こちらの本でお茶漬けに栄養ドリンクをかけて、楽しげにお暮らしの夫婦のケースが紹介されていました。
このケースでは、検査したら認知症と診断されると推測されるものの、仲良く過ごされており、現状ではその必要はないと筆者は質問に答えていました。
私は、本人たちが不安を感じていなくても、受診して認知症かどうかの診断を受けた方が良いと思います。
BPSDの治療は必要なくても、病型によって今後の状態の予測もつきますし、抗認知症薬について飲むか飲まないかの選択もできます。
現在は早い段階でアルツハイマー型なら新薬もあるので、治療選択の自由はできるうちに享受すべきだと思います。(飲まないという選択ももちろんできます)
また、栄養ドリンクをご飯にかけたら栄養も偏り、カフェイン摂りすぎなどもあるので、健康の心配もあり、指導が必要でしょう。
②家族介護者はあまり追い詰めないでほしい
対応に迷う家族に、対応についてのアドバイスはとても良いと思います。
ただ、認知症の人が落ち着かないのは、家族の対応が良くないから、という方向にはいってほしくないです。
同じ対応をしても落ち着く人とそうでない人がいますし、家族の状況もいろいろです。家族だって本人の分も仕事したり家事したりて続きしたり、ギリギリの状況で暮らしている人も多く、そこにさらに負担をかけないでほしいと思います。
だから、一概に対応だけで良くなるというようには決めないでほしいです。
施設職員の方にはぜひ参考にしていってほしい内容だと思いました。
漫画の2つの見方の表現は面白い試みで、参考になると思います。
よろしければこちらもどうぞ〜