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#小説
シんだ友達とカラの箱
友達が殺された。
発見したのはわたしだった。
会社の同僚で、先輩で上司でもあった彼女は九十センチの水槽に頭から突っ込んだ状態で溺死していた。
傍らに置いてあったサイドテーブルの上には遺書が置かれていたという。そしてキッチンからは睡眠薬の空き瓶も見つかった。そのことから、異常に思われた彼女の死は、警察によって自殺と断定された。
ただ、それだけであるならば、異常とまでは言えなかったかもしれ
私が恋をしたあなたは××でした【SS】
幼い頃、初めて見たその人は、見知らぬ人を隣に連れていた。
それから何年か経った後、その人の隣に居たのは祖母だった。
私はそれが、羨ましかった。とても。
祖母はそのままいなくなり、家には私と母がのこされた。
私の心にはその光景と羨望だけが焼き付いて、今も離れない。
「貴方も早くいい人を見つけて貰ってもらわなくちゃね」
その言葉は、父を早くに亡くした母の口癖のようなものだった。
そう
真夜中のドライブ【SS】
ドライブに行こう。
そう誘われるまま彼の助手席に座り、目的もなく走り出す車。
交差していくヘッドライト、前を走る車のテールライトと、街灯。
民家やマンションの明かりが、視界を照らす総てで、全部がぼんやりとして見える。
やがて車は住宅街を抜け、山道へと差し掛かる。
緩やかな坂道と、カーブ。
灯りは減り、前後にも、対向車もない。
カーステレオからはラジオが流れている。
いつもは安心す
Fishbowl with mirror surface【SS】
青いばかりの中、ぼくらは存在していた。
複数のぼくら。色んなぼくら。
そこは、ぼくらがいっぱいで少しだけ息苦しかった。
そんなある日、ぼくは、『ぼくら』の中からすくわれた。
『ぼくら』から、『ぼく』になった。
青い場所よりも狭く、だけど広い。息苦しさもない。
ぼくは、
ぐるぐるぐるぐるぐるぐるぐるぐる。
どこまで廻っても追ってくる、『ぼく』を見つめながら進む。
『ぼく』とは
あおい鳥のゆくえ【SS】
その人はいつも路地裏で膝を抱えていた。
普段は夕方、いつもすぐ傍の大通りで賑やかに芸を披露している。そんな人。僕はそれを、いつもスクールの行きに少しだけ目にしては、時間に追い立てられ名残惜しく通り過ぎる。
手品やジャグリング、あるいはその両方で自在なパフォーマンスを披露していて。
繰り広げられた珍しい見世物に人はよく足を止めたが、活気を失ったように人の集まらない日もあった。殊に、彼が初めて
【オリジナル】復讐【短編】
「ざまあみろ……! ざまあみろ!!」
少女は目を爛々と光らせ、何度も肩で息をしながら、うわごとのように繰り返した。
胸の上に突き立てた包丁。
目の前で横たわる人物の服と布団が、じんわりと赤く染まって行くのを見つめる。
満面の笑みを浮かべた。
歪んだ口元から、乾いた笑いが漏れる。
壊れた玩具のようにひとしきり声を上げ、電池が切れたようにぴたりと停止。
ずるりと座りこむと、小さく呟いた。
まさか先を越されるなんてね
いつか別れが来ると知っていた。
求婚し、されて番になり、子を無し血を繋いでいくことを良しとするだけの生き物。
同じ「生」を持ち、違う「種」に産まれただけ。
「やあ、元気かい」
朝になるとそう言って窓を開けて、彼は私を迎えてくれる。
夕刻なんとなく帰りそびれた私を見つけると部屋に入れてくれた。一緒に寝たこともある。
私が小さかった頃、怪我をした私を手当てしてくれた彼はまだ少年の色を残し
手折ってしまえたらどんなにか
窓の外を小さな花弁が無数に舞っている。
そんな様をぼんやりと見つめていた。
「あなたの好きな花はなんですか」
不意に隣で足を止めた人が言う。
私はその人をちらりと横目で見て、また、外に戻した。
「花は嫌いです」
「どうしてですか」
「いくら希っても、その姿を留めておけないから」
隣に立った人が少しだけ空気を揺らす。
笑ったのだと、思った。
「それでもまた、来年咲きますよ」
触れる