人事施策の効果測定をどうやって行うか
今回は施策の効果測定のお話です。
どうやって人事施策の効果測定をするのか、は私もよく相談される内容でもあります。今回は、人事で効果測定をどうやって行うか、について書かせていただきます。
人事において施策の効果測定を行うためのポイント
人事において施策の効果測定を行うためにはどのようなポイントがあるのか、以下の3点にまとめてみました。
施策の狙いを明確にする
あらかじめ分析の設計を行う
定期的に効果測定方法を見直す
それぞれのポイントについて簡単に説明します。
施策の狙いを明確にする
「あるべき姿が曖昧である」というのが人事におけるKPI設計を難しくするポイントである、というのはこちらのnoteで書かせていただきました。
それでしたら、施策のあるべき姿を明確にすることが、効果的な効果測定への第一歩となります。人事で施策のあるべき姿を明確にするには、以下の点を抑えてきちんと言語化することが重要です。
施策のターゲットは誰か
ターゲットがどういう状態にしたいか
施策を行うに当たり、まずどういったセグメントの従業員が今回の施策のターゲットになるのか、をすり合わせることが重要です。満遍なくどの従業員にも効果的な人事施策というものが企画できれば良いですが、非常に難易度が高いと思います。全社員に機会がある施策であっても、メインターゲットとなる従業員は誰なのか、ということを明確にしておくことが重要です。
また、特定のセグメントの従業員にのみ適用する施策であれば、ターゲットはある程度明確かもしれません。
メインターゲットを決めておくことで、効果測定を行う際も全社員とメインターゲットを比較することにより、狙いが正しかったか、定量的に施策の効果を計測しやすくなります。
次に、そのターゲットがどういう状態になればゴールか、を詳細に言語化します。人材開発や組織開発の施策は、最終的にはエンゲージメントやパフォーマンスを上げてELTV(従業員生涯価値)を最大化する、というのがゴールになります。ELTVについては、以下のnoteを参照してください。
しかし、一つ一つの施策でELTV、エンゲージメントやパフォーマンスまでの連動性を定量的に計測する、というのは難しいです。よって、施策ごとにエンゲージメントやパフォーマンスにつながる状態を定義して言語化する、というのが必要です。
例として、会社のバリューについて従業員に浸透させる施策を挙げます。まず、バリューが従業員に浸透することによってエンゲージメントが上がることが期待できます。施策のゴールは「従業員にバリューが浸透している」状態となりますが、これではまだ曖昧です。より明確なイメージとして、「バリューについて考える機会がある」「バリューに基づいた発言を行う」など、もう少し具体的に表現すると良いでしょう。
これだけでも施策を定性的に評価しやすくなります。アンケートやインタビューなどを行うにしても、誰に意見を聞くべきか(メインターゲットか、メインターゲットを評価できる立場にいる人達か)、何を聞くべきか、が明確になります。内容によっては、これだけでも施策の効果を実感することができるでしょう。
あらかじめ分析の設計を行う
定量的な評価を行うためには、データを集める必要があります。どのようなデータを集めるべきかに関しては、事前に分析の設計を行っておく必要があります。施策実行してからいざ評価を行おうと思っても、手元にあるデータでは足りず、必要なデータを取得するための仕組みがなく分析できない、といったケースも見受けられます。
分析の設計では、以下のようなことを行います。
KPIの設計
設計したKPIの検証
KPIを算出するためのデータ収集
モニタリングするための仕組みづくり
「KPIの設計」と見るとおおごとにも感じるかもしれませんが、考えることは以下のふたつです。
目指すべきゴールの状態になった時に何が起こるのかを言語化する
それが計測できるものであれば、そこからKPIを考える
というものです。先程の「バリュー浸透」の例であれば、その状態になったときには「バリューを耳にする機会が増える」などと定義できました。その定義に従って、バリューが発言されている回数を計測するとか、サーベイを使って認識を集める、などのデータを集める手段を考えることができます。
計測が難しいものであっても、「サーベイによって認識を問う」という手段は人事の施策の効果測定には非常に有効で、計測が難しいものであっても良し悪しの判断ができます。これも具体的なゴール状態が明確なほど精度は上がるため、「施策の狙いを明確にする」ことで実現が可能です。
こうして作成したKPIが施策を効果的に評価できるのか、検証する必要があります。実際にデータを一部集めてみて、仮説があっているかどうかを検証します。検証して想定と異なるようであれば、もう一度KPIの設計からはじめます。「アンケートでデータを集める」といった場合でも、一度人事のチーム内で実施してみるなど、簡単な検証を行うと良いでしょう。
モニタリングするための仕組みづくりは、BIツールやテクニカルなシステムを用意する、という難しい話をいきなり考えるわけではありません。まずは取っ掛かりとしてエクセルなどの表計算ツールでも良いのでデータをどのように可視化するか、可視化したものを見てどのような意思決定を行い、アクションを行うのか、といった運用フローを定めることを指しています。
必要に応じて、BIツールなどテクニカルなシステムを導入することもあるでしょう。
定期的に効果測定方法を見直す
施策の効果測定を行う仕組みができたら、改善ポイントを探したり継続するための予算を確保したり、施策の効果が高くないようならクローズする、などの判断も行えるようになります。しかし、ずっと同じ効果測定方法で続けられるか、というとそうではありません。
施策を形骸化させないためにも、定期的に効果測定方法を見直す必要ああります。
施策の狙い(メインターゲットやゴールの状態)は変えてないものの効果がいまいち出ないという場合には、施策自体を見直す必要があります。また、会社のフェーズや組織の状態の変化によって、当初想定していた施策の狙い自体が変わっていくこともあります。その場合には、効果測定方法自体を見直す、という必要も出てきます。
短期的には効果測定方法を見直す必要はないですが、長期で継続している施策ほど、正しい効果測定が行われず形骸化していることが多いので、定期的に効果測定も合わせ施策自体を見直す必要があります。
人事の様々な施策の効果測定方法について、具体的な事例などまたご紹介できればと思います。人事データの活用や、人事関連の指標の開発、分析の考え方などHRMOS WorkTech研究所へのご相談やnoteへのリクエスト等ございましたら、お声がけいただければと思います。