病は気からというけれど
去年の10月からずっと、体調を崩していた。
事の始まりはお盆の頃にひいた軽い風邪だったが、これがいつまで経っても咳だけが止まらない。
いつも風邪をひくと、喉から始まり、いつまでも咳が残るのだけれど、1か月経っても収まる気配がなく、しまいには息苦しさなどもプラスされ、風邪ではなく喉がおかしいのでは? と耳鼻咽喉科に行くことに。
実はもう一つ、以前から顎の下にできた丸いしこりが気になっていたこともあり、ついでに一緒に診てもらおうと重い腰を上げた。
病院が嫌い。
とにかく嫌い、
そのことに関してはいつかnoteに書くつもりではいるけれど、病院不審甚だしすぎて、いっそ手遅れになった方がマシ、というくらいに嫌い。
そうもいかないので、歩いて行ける耳鼻科の中から、評判のよさそうなところをピックアップして悩みに悩んで決めたところへ行った。
地獄のような待ち時間。
前もって予約を取っておけばいいのだけれど、その予約が2週間以上先じゃないと取れない。
病院嫌いな私が、今から予約して2週間以上のちに大人しく行けるはずがない、と判断し、飛び込みで何時間でも待つ覚悟で行ってきた。
今日行こう、と思ったら今日行くしかないのだ。
余裕で3時間待たされて、ようやく診察。
鼻からファイバースコープを突っ込まれ、数年ぶりに見た己の喉は、相変わらずぼこぼことクレーター状。
そう、昔から喉が弱くてカメラを入れられるたびに「ひどいねー」と言われてしまうくらいひどい。
とりあえず喉の炎症を抑える薬を処方された。
そして顎下のしこり。
リンパの腫れであるということだけは確定なのだが、この大きさなら悪性ではないとのこと。ただし、一生このまま残るかもしれないと言われてかなり落ち込む。
ぱっと見た目には分からないけど、顔を上げるとしこりがあるのは分かるし、そして時々妙に痛い。
これが巨大化するようなら検体を取って検査らしいのだけれど、ひとまず様子見。
そこから2週間後、薬の効果があって喉の炎症は抑えられたけれど、咳は止まらない。
息苦しさも何となく増していて、とにかく呼吸が辛い。
さらに2週間の薬の飲用、おなじみファイバースコープ。
異常はない、ときっぱりと言われてしまった。
喉に異常がないのなら肺から来ているのかもしれない、と言われて10月の半ば、今度はかかりつけの内科に。
とにかく息が吸えない。
そしてなんだか胃の調子もおかしい。
思い切り息を吸っても肺に空気が入って行かず、喉の辺りで蓋をされているような感覚が続いている。
最初に耳鼻科に行ったときよりも悪化していて、その頃には呼吸もまともにできず、食事もとれなくなっていた。
レントゲンの結果、私の肺はまっさらでとてもきれいだった。
思わず感心するくらいきれいだと医者に言われたけれど、呼吸ができない状況を話すと、なぜだろうと首を傾げられてしまう。
思い当たることもなく、唯一いつもと違うことをしたといえば、1週間ほど前にコロナのワクチンを接種したことくらいだ。
陰謀論には興味はない。
ワクチンが悪だという根拠のない言葉にも関心はなかった。
打ったら死ぬ、などとSNSに書き込まれていたことも信じなかった。
しかし、息が、できない。
苦しすぎて辛い。
診察しても原因が分からず、ストレスのせいだという結果になった。
喉が狭く、息ができないという症状も、ストレスで起こるものの1つらしい。
なんとかいう漢方を飲み続けていたけれど、効果はほとんど感じない。
10月も終わりの頃、2回目のワクチンを打った。
ワクチンのせいではない、と思ってはいるが、一回目から1週間後に急激に悪化した体調は、さらに悪くなった。
息ができない。
喉が苦しい。
まるで何かに塞がれたように、身体の中に何も入って行かない。
ひとまず、腸の動きを止める薬が処方された。
原因が胃と腸のどちらにあるのかを調べるために。
結果、私の腸は驚くほど元気で、動きを止めていたのにわずかの食事しかとっていなくてもきちんとお通じもあって、消去法で胃の方に原因があるということになり、今度は胃の薬が処方された。
薬をきちんと飲んでいるのに、良くなった感覚は皆無。2週ごとに病院に行き、再び薬をもらう。
その頃にはもう咳は治まっていたけれど、とにかく息が苦しい。
身体中謎の気体でいっぱいになっているかのように、何も入って行かない。
吸い込んだ酸素も上手に取り入れられずに、ただ吸った分吐き出すだけだ。
重たく淀んだ気体が身体を支配しているような気がする。
痛みはないものの、胃具合の悪さがひどすぎて立てない。眠れない。辛すぎてもう生きているのすら嫌になる。
まともに物が食べられず、体重が5キロ落ちた。
11月になっても、12月になっても、1月になっても、症状が変わらず、胃から腸まで使い物にならないくらいの体調不良。
1日中寝込んでいたこともあって、寝込んでいてよくなるのかと言われれば良くならないのだけれど、とても起き上がる体力もなく、ただなんとなく生きている、という感じの毎日だった。
たまに、少し楽になることもあって、そんな時は「こんな日が続きますように」と祈った。
けれど結局裏切られて、また悪化する。
2月の頭、伯父が亡くなった。
最初はあまりに体調がひどすぎて、葬儀には出られないかもしれないと思ったけれど、様子を見つつ、だましだましでなんとか出席。そのあとでまた、悪化した。
原因はストレスだと言われただけあって、メンタルが弱ると急激に悪化する。
ストレスを溜めるなと言われても、どうしていいか分からない。
ストレスを溜めないように、と言われることがストレスになる。
もう、辛すぎる。
何のために生きているのかすら分からなくなる。
こんなことを言うと、世の中にはもっと大きな病気を抱えている人がいるのよ、とか、別に死ぬような病気じゃないでしょ、と言われてしまうけれど、今現在私が「辛い」と思っていることを否定されることが、一番辛かった。
みんな大変なんだよ、って言うけど、私も今まさに大変ですけど!? と言う気持ちになる。
愚痴ることすら許されないのだな、と、いっそこのまま本当に手遅れでもいいやとさえ思った。
そうなったら回りもきっと、同情してくれたりするんだろうな、と。
けれどおそらくそうならないことは私がよく分かっている。
死ぬほど(というのは何だか矛盾があるが)悪運の強い私だから、どんなに酷い状態になっても、最悪の状況に陥ることはないのだ。今までも、一度たりとてなかった。
多分今回もそうだ。
そのうち治って、結局大きな病気でもなんでもなくて、「ほらやっぱり」って周りが呆れるのだ。
今現在がどんなに辛くても、いつもそうだから。
誰もその過程を心配してくれたりしてくれないことは知ってる。
先にも書いたけど、私の病院不審の原因になったことだって、いつもいつも「あんただけじゃない」とか「ほかにも辛い人はいる」で片付けられてきた。
私がどれだけ辛いかなんて、お前らに分かるのか、と言いたいけれど、何を言っても無駄だと学んだから、口をつぐむ。
苦しくても、辛くても、一人で耐える方がずっと楽だ。
3月になっても体調は変らず、薬が効いているのか信じられなくなって、病院に行くのはやめた。
何か検査や、他の治療法があるのではないかとそれとなく打診したけれど、こちらが望む答えはもらえなくて、結局同じ薬を処方されるだけだ。
胃潰瘍の薬、胃の動きをよくする薬、石を出す薬、最終的には機能性ディスペプシアの薬。
処方される薬は何度か変わったけれど、どれも「効果があった」とは言い難かった。
世の陰謀論に乗っかって、ワクチンのせいだと叫びたい気持ちにもなった。
けれど、因果関係は証明できない。
私は持病を抱えているのだけれど、検診のたびにそちらの検査数値はのきなみ良くなっていた。
食事をほとんど取らず、5キロ落ちて、おまけに飲酒もできなくなって、悪くなりようがない。
元々そんなに急激に悪化したりはしていなかったけれど、身体から毒素が抜けて血液結果が良くなったのだと思うと腹立たしいような結界オーライなような複雑な気持ちだ。
先月まで、とにかく身体の中が全ておかしくて、どこがどうと説明ができないのだけれど、何もかもの臓器が働きが悪い、というイメージだった。
持病の方の主治医と相談して、何年も飲んでいた薬を一つ、やめてみた。
謎の左の腹部の張りは、それで少し解消されつつある。
もしかしたら、この、何年も飲み続けていた薬が原因……? と疑いつつも、まだ完全調子じゃない今現在、結局何が原因でこうなったのかは分からずじまいだ。
一番最初は、去年のお盆過ぎ、急激に寒くなって風邪をひいたことだった。
咳が止まらず、喉が痛くてかなりの炎症を起こし、息ができなくなった。
そこから10か月、謎の体調不良が続いている。
ワクチンが関係しているのかどうかは分からない。
ストレスが原因だったのかどうかも定かではない。
今も時々、息ができない。
喉の奥、薄い板で蓋をされたように、全てが止まる。
食べ物も、飲み物も、吸い込んだ空気も。
気道が狭くて、上手に呼吸ができない。
痛みは一切ないけれど、胃と腸が働かない。
左側が固まったように機能していなくて、時々まともに生活できない。
完治するのはいつなのか、全く想像できない。
病名をもらえないので、人に説明できない。
言ったところでどうせ「辛いのはあなただけじゃない」と言われるだけだから、黙っている。
どんなに辛くても、自ら発しなければそれ以上傷つかない。
今のところ、完治、という状態まではまだ遠いような気がする。
それでも、最初の頃の苦しさはかなり緩和されている。
このままもう少し、頑張るしかないんだろうな。
なんでもかんでもストレスだと言われることにストレスを感じる。
そんなことを考えていたら、また悪化しそうだけどね。
了
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?