どんな香水もかなわない、春の貴婦人の香り
3月29日、
朝方まで激しく降っていた雨も、
昼前にはすっかり上がりました。
買い物がてら、
近所の公園に出かけたら、
池の周りの地面から、
ボクを呼ぶ小さな声が。
よく見ると、紫色の貴婦人が、
一斉に咲き笑っています。
タチツボスミレさんかな?
「もっとちかくにいらして。」
ボクは、そっと地面にひざまづき、
この貴婦人たちに顔を寄せました。
すると、えも言われぬ芳香が!
そうか、貴女たちは、
ニオイタチツボスミレなんですね。
「そうよ、よくおわかりね。」
一年ぶりです。貴女の香り。
他のどんな花よりも甘く上品で、
顔を近づけないと気づかない程、
微かで気品あふれる貴女の香り。
「タチツボスミレさんと、
あなた、見分けがつくかしら。」
並んで咲いていてくれたら、
多分見分けがつきますが・・・
「花のいろ淡く、
青き筋も淡く、
香り無き花が、
タチツボスミレさん。」
「花の紫濃く
青き筋目立ち
香り高いのが
わたしたち、
ニオイタチツボスミレ。」
ああ、
春の貴婦人たちが放つ香りの
なんとかぐわしきことか。
春のひと時、誰にも知られず、
その香りをそっと放ちながら、
貴女はひっそりと佇むのですね。
「あなたに見つけていただけたわ。」
身近な都会の公園で、
足許に秘かに咲く貴婦人たち。
もしみなさんも出会えたら、
そっとひざまづき、
顔を寄せてみてください。
どんな香水もかなわない、
春限定の微かな芳香に、
きっと驚くことでしょう。
貴女の名は、
ニオイタチツボスミレ。
birdfilm 映像作家:増田達彦
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