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映画「ダンサー イン Paris」🩰原題"En Corps"
リハビリを兼ねて久々に映画を観に行った。都内に行くのはまだ自信がなく、2つの流行り病も頭をよぎり、今日のところは近場でやっているものを選んだ。
ダンスを見るのは大好きだ。人間の体は、なんて美しいんだろう。鍛えられた体は、なんて胸を打つんだろう。といつも思う。
パリ・オペラ座バレー団で、エトワールを目指すエリーズは、舞台の直前、バレー団の恋人の不実を目撃したことで動揺、舞台上で足首を捻挫してしまう。
主治医にしばらく踊ることを止められ、また、二度と踊れなくなる可能性も示唆されたエリーズは、料理人の友人カップルに誘われて、アーティストにスタジオを提供している家の食事作りを手伝うために、ブルターニュに向かう。
たまたまスタジオを借りていたのが、コンテンポラリーダンスのグループで…彼女はやがて新しいジャンルに踏み出すことになる。
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演技は初めての パリ・オペラ座現役ダンサー
Story は至ってシンプルながら、破局や、新しい恋や、袖にされる男の涙など、さらりとながら散りばめられているのがフランス映画らしい。
これまで、クラシック、コンテンポラリー、ブレイクダンス…等、ダンスのドキュメンタリーを撮ってきたクラピッシュ監督。撮影で知り得た舞台裏やダンサーの人生をいつか撮りたいと思っていた、とインタビューで語っている。
コロナ禍の中で、多くの人が仕事を辞めざるを得なくなったり、舵を切り直さなければならなくなった状況も、エリーズのstoryに繋がったようだ。
監督と懇意だった著名な振付師である、ホフェッシュ・シェクターが自ら主催するバレー団を率いて、監督とダンスシーンを作り上げていった。
ブルターニュへの旅の途上、人だかりの真ん中でブレイキンを踊っていた若者に挑戦して、まるで野生の生き物のようなキレのあるダンスを見せてくれたのが、ブルターニュの家で会うことになるダンサー(ホフェッシュ?或いは後にエリーズと恋仲になる団員?)と、後で分かる。あれはすごい!
演出でよくわからなかったのが、最初の頃のクラシックの群舞のシーンで、乱れた画面に被せた不協和音のような耳障りな音。映画館の音響システムの事故かと思った位だったが、あれはエリーズの、これから始まる波乱〜再生の示唆と捉えればよかったのか。
本編が終わり、タイトルバックの向こうで、チュチュを身につけたモノクロのエリーズが、ゆっくり画面を横切ると、またあの不協和音が始まり…やおら彼女は、チュチュの姿で、コンテンポラリーダンスを激しく踊り出した。
ここまで観てはじめて、ははあ、そういうことだったかと観客は演出の意図を知る。本当に掴めたのか?自信はない。もう一度観なければ。
エリーズを演じた、マリオン・バルボーが魅力的で、クラシックバレーのたおやかな動き、コンテンポラリーダンスの躍動感、そしてこの映画が初めてという、瑞々しい演技が素晴らしかった。
肩の凝らない、お洒落なフランス映画。字幕で表現しきれないエスプリの効いたセリフで溢れていたのだろう。
言葉が分かるらしい人が近くに座っておられて、時折、フフッと声が漏れるのが羨ましかった。
監督 セドリック・クラピッシュ
振付 ホフェッシュ・シェクター
主演 マリオン・バルボー
🌱映画について、3人それぞれのインタビューがYouTubeで公開されている。映画と合わせての視聴をお勧め。
立川高島屋SC館 9. 25
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追記
Note の記事で、この邦題はひどい、と書いている方がおられたが、全く同感。
監督が、あるインタビューで、原題"En Corps"に寄せる思いを聞かれて、こう答えている。
「怪我で一度は踊ることを断念したエリーズが、再生していく物語。舞台の幕が降りた時にかかるアンコール(encore)に掛けて、響きが同じEn Corps(フランス語の発音はencore)にした。言葉遊びです。」
Corps は、「身体、肉体」、en corps で「体の中から」「体中で」?
フランス語は分からない。でも、それまでの、きちんと様式を踏まえたクラシックバレーから、コンテンポラリーダンスの解き放たれたようなエリーズの体の動きを見れば、何となくニュアンスは伝わってくる。
舞台の中心はパリではないし、もう少し内容に沿った、しっくりくる邦題をつけて欲しかったなあ。