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不安な気持ちにはクルミと牛乳の成分が効果ある?

私は元々生物系研究職の仕事をしていたので、様々な科学論文を読んで新しい知見を得ることに関心があります。

最近、クルミに含まれるペプチド(アミノ酸がつながったもの)と牛乳に含まれるペプチドを同時に摂ると不安を軽減する効果や記憶を高める効果があることが、中国の研究者らが行った動物試験で確認されました。


不安障害に悩む人は多い

不安障害は、人々が感じる不安、心配、恐怖、緊張、不安の感情が特徴の精神障害です。
世界保健機関(WHO)によると、約380億2万人が不安障害の影響を受けており、不安障害により生活の質や機能が低下してしまいます。

しかし現状では抗不安薬で効果が見られる人は限られていて、より効果的な治療法が望まれています。
そこで研究者らは不安な気持ちに効果のある物が何かないか探索しようとして、モデル生物のゼブラフィッシュでいろんな栄養素の組み合わせを試しました。

その結果、クルミペプチドとカゼインペプチドの組み合わせがゼブラフィッシュの不安行動に対して効果があることが見出されました。

クルミペプチドはクルミのタンパク質から抽出されたペプチドの一種で、マウスやヒトにおいて睡眠の質、記憶、認知を強化する効果があります。
カゼインペプチドは牛乳由来のペプチドで、不安を軽減する作用が知られています。

研究者らはその後も研究を続けた結果、ゼブラフィッシュだけでなくマウスの不安モデルにおいてもクルミペプチドとカゼインペプチドの組み合わせが不安を軽減する効果や記憶を改善する効果があることを見出しました。

不安や記憶に対してマウスで効果あり

研究者らはまず、従来の足にショック刺激を与える不安よりも比較的穏やかな物理的刺激を与える方法で、不安時の行動を誘発するマウスの不安モデルを構築しました。
この新しいアプローチによって、不安障害の神経生物学的な基礎研究や、治療法の候補の評価が行われました。

構築された不安モデルのマウスでは食欲不振の影響で体重が減少しましたが、ヒトに換算して170 + 300 mgの用量で、クルミペプチドとカゼインペプチドを組み合わせて投与したマウスの群では体重が増加し、食欲も改善しました。
不安モデルのマウスで観察される異常な行動も減少し、正常な状態に近づき、ストレス関連ホルモン類の量も変化して、ストレスに対する生理的な応答が改善されたことが示されました。

不安モデルのマウスにおいてストレスが持続する状況が続くと記憶機能が低下しましたが、クルミペプチドとカゼインペプチドの組み合わせを投与することで、記憶の改善が見られました。
この組み合わせによって、不安障害による記憶の低下も軽減される可能性があることが示唆されました。

不安の発症は神経伝達物質の変化と密接に関連しており、特にセロトニン・GABA・ドーパミン・アセチルコリンの濃度が重要です。
クルミペプチドとカゼインペプチドの組み合わせはセロトニンやGABAの濃度を増加させ、神経伝達物質の機能障害を改善することも示されました。

脳由来の神経栄養因子(BDNF)についても調査され、慢性ストレスによってBDNFの発現の低下が観察されましたが、クルミペプチドとカゼインペプチドの組み合わせを投与することによってBDNFの発現の改善も見られました。
これらのデータを総合して分析したところ、マウスにおける不安行動とセロトニン濃度、BDNFの量は強く相関していることが示されました。

何故この組み合わせが効果があるのかという詳しいメカニズムやヒトにおける有効な用量については、今後のさらなる詳しい調査が必要です。

所感

私は普段毎朝コーヒーに牛乳を入れてカフェオレにして飲んでいますが、ナッツ類はあまり食べていませんでした。
今回の研究結果を知って、不安な気持ちに襲われたら牛乳と一緒にクルミを食べてみようかなと思います。

今回の結果はモデル生物のゼブラフィッシュやマウスを用いた研究であり、人でも効果があるのかは今後の研究結果が待たれるところです。
安易に坑不安薬に頼らずに、食品で不安な気持ちを克服出来るようになれたら良いですよね。

最後までお読みいただき、本当にありがとうございました!

参考文献

  • Li, Q., Jia, X., Zhong, Q., Zhong, Z., Wang, Y., Tang, C., ... & Zhang, Y. Combination of Walnut Peptide and Casein Peptide alleviates anxiety and improves memory in anxiety mice. Frontiers in Nutrition, 10, 1273531.

  • Zhao, B., Jia, X., Feng, H., Tang, C., Huang, Y., Zhao, Z., ... & Zhong, Q. (2023). Nutrient combinations exhibit universal antianxiety, antioxidant, neuro-protecting, and memory-improving activities. Frontiers in Nutrition, 9, 996692.

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Ayako@精神疾患と共に歩む30代ママ
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