「人殺し」 レイ・ブラッドベリ 「太陽の黄金の林檎」収録
注・ネタバレというほどのものはありませんが、ブラッドベリの短編「人殺し」を読んでいる方向けの文章です。
我が家の朝の風景。やっとの思いで起こした下の子が、起きてまずするのはタブレット端末の暗証番号入力を親にねだること。朝食を食べながらアニメを見るのだ。朝食の席ではテレビが朝の情報番組を流しており、上の子が画面に背を向けてスマホでアニメを見ている。
せめて皆で一緒の番組を見ないかという説得は、何か月も続けたあげくに結局誰にも受け入れられなかった。
そして・・・、そして誰もイヤホンを使おうとしない。
騒音の洪水の中で僕は思う。これは全くブラッドベリの短編の状況そのものだ。いっそあの小説の通りにスピーカーに溶けたアイスクリームでも流し込んでやろうか。
まあそんな事、思うだけで絶対やらない。代わりに僕はため息を一つつく。かつて時代が進む度に、SFが実現したと言われたことは多くあった。ジュール・ベルヌやアーサー・クラークの作品、あるいはオーウェルの「1984年」などなど、現実を予言したと言われる作品はいくつもあるが、現代の状況を予言した小説としては、ブラッドベリの「人殺し」以上のものはないのではないだろうか。
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