作るべきは教材? それとも学習材?
こんにちは。「教材の力」で人材育成の課題を解決する教材戦略ラボの矢澤です。
私は普段、教育サービスを展開される事業者様向けに、教育プログラムの構築、メソッドの体系化、カリキュラム設計、テキスト・ワークブック・マニュアル等の制作のお手伝いをしています。
今日のコラムのテーマはこちら。
作るべきは「教材」なのか「学習材」なのか?
私が常にモヤモヤ感じていることがあります。
それは、とにかく「教材」という言葉の定義が曖昧であること。
にもかかわらず、なぜ私自身「教材」という言葉を掲げて仕事をしているかというと、日本では「教材」という言葉がもっとも一般的で多くの方にイメージしてもらいやすいからです。
そこでこのコラムでは、「教材」と対の関係にありながらもあまり聞き馴染みのない「学習材」についても取り上げ、その違いや役割について紹介していきたいと思います。
もし皆さんが
これから新規で講座/研修を始めたい。
あるいは、既存の講座/研修をリニューアルしたい。
そのために「教材」を作りたい。
…といったニーズのお持ちの場合、その講座や研修に本当に必要で、これからあなたが作るべきものは、はたして「教材」なのか「学習材」なのか?
そんなヒントをお伝えできればと思います。
01|「教材」と「学習材」
まずは言葉の定義から。
わかりやすくするために、ここでは辞書的な意味の引用ではなく、私的(教材戦略ラボ的)な解釈・捉え方で解説します。
「教材」とは
英語にすると「teaching materials」。「教えるための材料」のことを指します。
この言葉の主語は「教える側」で、教育を提供する側である講師やインストラクターなどです。
「学習材」とは
こちらは英語にすると「learning materials」。「学ぶための材料」のことを指します。
この言葉の主語は「学ぶ側」で、教育の受け手側である受講生や参加者です。
このように英語に置き換えて考えると一目瞭然ですが、本来「教材」と「学習材」は対を成す言葉で、主語が異なります。
ですが、日本語では「学習材」という言葉は一般的には目にすること・耳にすることは少なく、こんな捉え方をされることが多いです。
「教材」と言葉の中に「学習材」の意味も含まれている
あえて「学ぶためのもの」を指す場合は「学習教材」や「学習用教材」という言葉が使われる
いずれにしても私は、この「言葉の定義や言葉の使われ方の曖昧さ」が、「教材設計の曖昧さ」につながっているのではないか?と考えています。
というわけで、このコラムではそれぞれの目的を明確にするために、あえて「教材」と「学習材」という言葉を使いたいと思います。
02|必要なのはどちらか?
前述の通り、教材が「教えるための材料」で、学習材が「学ぶための材料」であるとして、冒頭の質問に戻ります。
仮に皆さんが
これから新規で講座/研修を始めたい。
あるいは、既存の講座/研修をリニューアルしたい。
そのために「教材」を作りたい。
と考えているとします。
このとき、皆さんが作りたいと思っている「教材」とは、どんなものでしょうか?
「教材」でしょうか?
それとも「学習材」でしょうか?
まずはご自身に、この問いかけをしてみていただきたいと思います。
というのも、教材制作(この場合の「教材」は曖昧な意味の「教材」です^^)の難しさやストレスの50%は、「どんな教材を作るべきかわからない」という「ゴールイメージや目的の曖昧さ」からくるものだからです。
そのためにはまず、「ゴールイメージや目的を明確にすること」が必要になります。
そこから「教材的な何か」の姿や形を明確にできると、「その何か」は一気に作りやすくなります。
(他にもゴールイメージや目的を明確にする考え方はありますが、もっともシンプルなのがこの「教材なのか、学習材なのか?」という問いだと思っています。)
03|「教材 or 学習材」の見極め方
「教材なのか? 学習材なのか?」
この問いの答えは「教材を作る目的」、つまり
「その講座や研修の課題がどこにあるのか?」
「その講座や研修の価値をどの方向に伸ばすと良いのか?」
といった視点から導き出すことができます。
たとえば以下のように発想していくことができます。
例1)
講座が抱えている課題は?
教える側のインストラクターのレベルがまちまちで、そのことが教育ビジネスの展開・拡大を難しくしている。
作るべきツールは?
上記の課題は「教える側」の問題なので、テコ入れすべきは「教え方」。
つまり、必要なのは「インストラクター用の教材」。
たとえば「インストラクターの手引き」「インストラクターマニュアル」といったツール制作が有効かもしれない。
例2)
講座にどんな価値づけをしたい?(どんな方向に伸ばしたい?)
「知識やノウハウが定着しやすく、確実に成果に結びつく講座!」という価値づけをしたい。
作るべきツールは?
上記のテーマは、「教え方」というよりも「学ばせ方・取り組ませ方」が肝となる。
なので、作るべきは「受講生向けの学習材」。
例えば、「知識やノウハウのすべての過不足なく網羅した教科書」「知識やノウハウを自分ごととして置き換えるためのワークブック」といったツール制作が有効かもしれない。
もちろんこれは「どちらが正解」「何が正解」という固定的な解はありません。
また、上記の例のように、必ずしも「どちらか一方だけ作れば十分」というものでもありません。
「教材も学習材もどちらも必要だから、ツールを2つ作る」ということもあれば、「教材も学習材もどちらも必要だけど、ツールは1つで兼ねる」という手段を選ぶこともあります。
04|多くの場合「学習材」を投入するとうまくいく
教材戦略ラボでお手伝いしているさまざまなお客様の事例を見ていると、「必要なのは学習材」というケースが多いです。
教える側が伝えたいことは、すでに何らかの形で伝えることができている
にもかかわらず、思うように受講生の行動が加速しない・成果が出ていない
こんなケースにおいては、「教え方」ではなく「学ばせ方」のほうにこそ「伸び代」があります。
ならば、「講師が教えるための材料を作ろう」から「受講生に学んでもらうための材料を作ろう」に、視点や考え方をシフトさせる必要があります。
たとえ講座の内容や講師が教えることは同じだとしても、「学ばせ方」を見直して「学んでもらうための材料や環境」を整えることで、受講生の反応が驚くほど変わり、結果として行動や変化を促しやすくなります。
05|まとめ
「教材を作ろう」「教材が必要だ」と思ったときは、
作るべきは「教材」なのか「学習材」なのか?
という問いを立ててみましょう。
この問いから、作るべき「何か」の姿・形につながるヒントが得られたなら、しめたものです。
講座や研修の課題や今後の展開の方向性が明確になり、より本質的な教材作りができるようになります。
ぜひ参考にしてみてください。
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