日本最古の歌集「万葉集」がもつ日本文化の真髄を世界に届けるための英訳
ここでは、「Beyondミーティングではどんな人が登壇しているのか?」という目線から、第42回のBeyondミーティングに登壇したピーター・J・マクミランさんとのイベント準備から開催までの様子を、サポートを担当したボランティア運営目線で紹介していきます。
登壇者のマクミランさんについて
マクミランさんは日本在住の翻訳家であり、日本の古典文学研究者です。その二つの側面からこれまで日本の古典で百人一首や伊勢物語などを英訳されていらっしゃいます。東京大学の非常勤講師も勤めながら、「株式会社月の舟」の代表をされています。
普段の生活で会うことのないような方だったので、最初は「どんな話になるんだろう?」と思い少し緊張しながら打ち合わせに入りました。
「万葉集」は世界に届ける価値がある。
Beyondミーティングでは、登壇者が発信するテーマや内容は、最初からはっきり決まっている場合もあれば決まっていない場合もありますが、マクミランさんはテーマがはっきりとしていました。
マクミランさんが今取り組んでいることは、日本最古の和歌集「万葉集」を英訳し、世界の人に届けるということでした。
日本人も知らない?「万葉集」はすげぇ文学性が高ぇ!
お話を聞いていると、フランクな方だったこともあり緊張を忘れて「万葉集のすげーところを伝えていきましょう」とか連呼していました。
すると・・・
「すいません、”すげーっ”てなんですか?」
とマクミランさんから聞かれる始末。(すいません。完全に粗相でした)
”すげー”の意味が伝えると、「なるほど!また一つ言葉を覚えました!」と寛容に接していただきました。(よかった、、、)
話を戻して、万葉集の歌の一部ご紹介しておきます!↓
矛盾した表現が生み出す、心潤す幻想的な世界
夜空→海・雲→波・月→舟・たくさんの星→林と見立てた歌で、景色に対する解釈とその表現の面白さが際立っています。
しかし見たものを事実として説明するなら、「舟を漕いで、林に入っていく」なんてファンタジーな感じで表現する必要はないはず。でもそんな矛盾した表現だからこそ幻想的な世界が思い浮かびます。
話を聞いていて、現代で言えばキレイな景色はスマホでボタンひとつで簡単に残せて友達や家族にその良さを簡単に共有できるけど、大昔に誰かに自分の感じたことを伝えようとするならば言葉しかなかったわけなのだから、1000年以上前の人は、どれほど美しいと感じたかを徹底して言葉に込めようとしたのかもしれないと思ったりしました。(少なくとも、”スゲー”とか簡便な感想しか出てこない現代人の私は、景色を情景として想起させる文章表現を持ってないので”スゲー”と連呼していました)
マクミランさんとしてもこれまで、数多くの日本古典文学の英訳に取り組んできたなかで、世界的に見て高い文学性があると感じたそうです。
また、万葉集の自然と共生していく価値観は、環境問題やウイルスの蔓延る現代にこそ必要な思想であることや、古代には世界中にあったであろうシャーマニズム的思想が文字に残っている希少な作品であるということも、今こそ世界に届けていく理由のひとつであるとのことでした。
むずかしく見える万葉集という古典を、多くの人が親しめるようにするにはどんな仕掛けがあるだろう?
他にどんな歌があるのか気になりつつも、限られた時間であるため、イベント当日の参加者の方々に問いかけるブレストテーマを設定していくことに。
マクミランさんは、”万葉集の英訳”つまり海外の人々に向けた取り組みを行なってはいつつも、今回ブレストテーマとして上げられてきたのは、
「万葉集を、日本の人(特に若い人)にも親しみ身近に感じてもらえるにはどのような仕掛けが考えられるだろうか?」
漫画の「ちはやふる」がきっかけとなった百人一首ブームのようなものをおこしていける仕掛けを考えたいというものとして準備が進みました。
実際のブレストでの様子や出たアイディア
当日は、合計で約15名の方にブレストに参加いただきました。
料理人・芸人・また海外の方など様々な参加者が参加したブレストとなりました。そもそも万葉集というテーマが興味深そうで、多くのアイディアを発言していただきました。下記に、ごく一部ですが以下のようなアイディアがでていました。
過去の先人たちが感じた心の機微を、現代のツールで改めて味わってみるという感覚のアイディアが多く出た回でした。想像すると面白いです。
イベント終了後に、マクミランさんからこんな一言を頂きました。
Beyondミーティングでは、立場の違うもの同士がフラットにカジュアルにアイディアを出し合える場を形成しています。出すアイディアの質を問うことではなく、多くの人でアイディアを出しあい、そしてそのコミュニケーションを楽しむことをイベントのコアに置いています。マクミランさんは日本古典の第一人者であるにもかかわらず、フランクに接していただき、参加者の方にも楽しんでいただけました。こう言ったプロセスを通して万葉集について少しでも親近感を持ってくれる人が増えていくといいなと感じました。
次回Beyondミーティングのお知らせ
Beyondミーティングは、次回5月18日(18:30〜)に開催します!
下記イベント詳細を記載しております。ご興味ある方はぜひご覧ください!
<今回の応援ライター>
西田 拓稔(にしだ たくみ):Beyond ミーティングには司会・応援コーディネーターとして多数参加。神出鬼没の独身。