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4人目でたどり着いた、想像していなかった未来とその先

「もうこれが最後の赤ちゃんだからね」


ウキウキのワクワクで4人目の誕生を待ちわびていた私に、つわりで苦しみ、眠れない夜が続く妻は言った。

私の夢は、子だくさんパパになることだった。
周りにも「最低5人は子どもが欲しい」と公言してきた。

だが、言うは易し。
つらい妊娠期間に耐えながら、トツキトオカお腹の中で赤ちゃんを育て、命がけで出産するのは妻であり、妻の頑張りなくして私の夢を叶えることはできない。

水を飲んでも吐くほどのつわりで痩せ、妊娠により発症するひどいかゆみで夜は眠れず、全身をかきむしって傷だらけになっているママ。
一方で、文字通り痛くも痒くもないパパ。

なんとも他力本願で、自分勝手な夢なのである。

2人で乗り越えてきた

上の子3人は、すべて里帰りしない出産だった。
困難を2人で乗り越え、一緒に、少しずつ親になりたかったからだ。

お互いの実家は遠く、産後の数日間だけ親に手伝いに来てもらったことはあったが、基本的にはずっと2人で乗り越えてきた。


と、思っていたのは自分だけ。
実際は、妻の多大なる犠牲の上に成り立っていた。


妻は1人目の妊娠後期のタイミングで、仕事を辞めた。
私の職場近くで一緒に住み始め、友達はもちろん、知り合いが誰もいない土地で初めての出産と育児をスタートした。

2人目を授かった時には長男はまだ1歳。
やんちゃ盛りの男子の世話をしながら妊娠期間を乗り切り、産後は長男と赤ちゃんの2人を自宅で育ててきたのである。

3人目が生まれたとき、長男は幼稚園に通っていたが、これは負担が減ったのか増えたのかわからなくなる日も多くあった。
4歳の長男は道草をしてなかなか帰ろうとせず、2歳の長女は好奇心のままに走りだし、赤ちゃんは「眠い、お腹空いた、オムツ替えて」とぐずりだす。

加えて、家に帰れば山ほど家事が待っている。
この壮絶なワンオペを想像できるだろうか?
妻は必死過ぎて、当時のことをあまりよく覚えていないと言う。

私は育児も家事も率先してやっていた方だと思う。
早く帰れる日は、子どもたちのご飯から寝かしつけまでのすべてをした。
休みの日はあらゆる家事をこなし、子どもたちを外に連れ出し、できる限りのことはやっていた。

しかし、家のことをしたくても物理的に無理な状況もある。

平日の朝は、子どもたちが起きる前に出社するので朝の支度はできない。
残業が続く日は、夜のお世話もできない。
トラブルが発生すればすぐに客先のもとへ飛ばないといけないので、妻と子どもたちを置き去りにせざるを得ない。


そんな中、3人目の次女が7ヶ月のとき、妻が入院した。
自力で病院に行ったが、緊急搬送されるレベルだった。

幸い、手術で切除すればよくなる病気で、1週間程で退院できた。
妻はすぐに元気になったが、やっと気が付いた。

ずっと、妻に無理をさせていたんだ。

このときは、私がたまたま家にいたからよかった。
これが、私が出張先にいるタイミングだったらどうなっていただろう?
いつものように妻は我慢して、もっと悪化させていたかもしれない。
目の前でママが倒れて、子どもたちに悲しい思いをさせたかもしれない。

子どもをもって、幸せになれたことは間違いない。
でもそれは、妻が無理をしてくれているおかげでもあった。

・・・こんな人生を求めていたのか?

いつまで幸せを先延ばしにすれば気が済むんだろう?

長男が小学校に行き始め、次女が幼稚園に行くようになって、妻にもだいぶ余裕が戻ってきた。
予定よりも長く、3年あけることになったが、無事に4人目を妊娠することができた。

社会の流れに乗って、今回は1ヶ月の育休を取ってみようかな。


相変わらず、仕事は落ち着かない。
妻は眠れない日が続いているのに、出張続き。
たまった仕事を片付けようと休日出勤するも、妻の体調が悪く途中で切り上げる日が何週も続く。

やってもやっても片付かないの仕事の多さに、嫌気がさしてきた。
このままでは、1ヶ月だけ育休を取っても業務の引継ぎはないがしろにされ、そのまま復帰した後の自分に返ってくるだけだ。


ふと疑問が湧く。

いつまで妻に無理させるんだろう?
いつまで会社のために生きるんだろう?
いつまで幸せを先延ばしにすれば気が済むんだろう?

早期退職や定年後の余生を夢見る前に、いま最大限、幸せになればいいんじゃないか?

仕事より自分を優先すると、出世やキャリアに影響が出るかもしれない。
でも、そんなよくわからない未来より、いまを大事にしたい。
残念ながら、いくらキャリアのために身を粉にして働いても、会社なんていつ潰れるかわからない。

よし、思い切って育休を1年取ってみよう。

育休の実績は会社のためにもなる

正直、まったく人は足りていない。
私を含め特定の何人かに、難しくて責任重大な仕事がまわってくる。

このままだと、いつか自分も会社も立ち行かなくなる。
主力が抜けても、まわるような組織を作らないといけない。

そのために一番いいのは、私がいなくなること。
いなくなると言うと大げさだが、たった1年抜けるだけ。
これからは、それが当たり前の社会になる。
いや、そうならないといけない。

しかも、私は4人目の子で初めて育休を取ろうとしている。
私が取らなかったら、後の人は誰も取れなくなってしまう。

育休を1年を取る理由は、その実績を作りたいから。
そう言って会社に申請した。

所属長はすんなり承認してくれたが、育休の申請をなかなか承認してくれなかったのは、まさかの人事部長だった。
理由は、男性が1年も育休を取った実績のある会社が、周りにないから。

あきれて言葉も出ない。
1年の実績を作りたいと言っているのに、実績がないことを理由に渋っているなんて。

「男性が1年育休」という実績は、逆に会社にとってメリットになる。
自分が休むことで、いい人材が入ってくるようになる。
世間に知られていない無名の中小企業は、企業のイメージアップにこそ注力しないといけない。

こんなことを考えられる人は、残念ながら私の会社にはほとんどいない。
それを嘆いても仕方がない。
生きてきた時代が違う。それを求めるのは違う。

私たちが、行動で示すしかない。
育休を取りやすい雰囲気は、私たちが作っていくしかない。

育休でたどり着いた未来とその先

半ば強引に育休に入って、4ヶ月が経った。


朝は赤ちゃんを連れて、夫婦そろって下の子2人を幼稚園まで送る。

日中は赤ちゃんにたくさん話しかけたり、好きなだけじゃれ合ったり。
妻の話も、たくさん聞いてあげることができる。
「半年に一回」と言いつつ叶わなかったランチデートを、毎日している。

妻は添い乳で赤ちゃんを寝かしつけ、
私は添い父で赤ちゃんと眠りにつく。
(パパはただ一緒に昼寝してるだけだろ)

夕方には、みんなで下の子2人のお迎え。
大人が2人いるから、園庭で遊びたい次女と、早く帰りたい長女両方の思いに応えることができる。

家事は私がすべてして、夕飯の時間まで妻は公園でママ友とおしゃべり。


人生の夏休みと揶揄やゆされる大学時代。
私たちが出逢ったあの頃の夏休みに戻ったかのような、予定もなくゆったりとした時間を過ごす毎日。

非効率で無駄なことばかりだと言われれば、その通り。
でもこんな日常を味わうために、今まで必死になって非効率と無駄を排除して、頑張ってきたんだと思える。


今回の育休でこっそり掲げていた野望がある。
思いのほか早く、たった4ヶ月で達成できた。


それは妻からもらったこの一言。




「こんな生活ができるなら5人目も欲しくなるね」


子だくさんパパの夢に、また一歩近づいた。

自分も、妻も、子どもたちも幸せにしてあげられる。
大好きな人とゆったりと過ごす予定のない日々が、こんなにも幸せなんだ。

お金や将来の不安のために、目の前にある幸せを先送りにするのはもったいない。
自由気ままな時間を定年後にもらっても、何もかもが遅すぎる。
育休取って、いま幸せになっちゃえばいい。

子育ては罰ゲームじゃなかった。
こんなに幸せな未来が待っていたなんて。
あんなにつらい思いをしていた、過去の自分に教えてやりたい。

仕事から離れ、お金をもらいながら、家族とのゆったりした時間を心ゆくまで楽しめる。
最高の幸せを得られる仕組みが、ちゃんとあった。


この幸せをこれから何度でも味わいたい。
心から、そう思う。




(・・・あと何人育てるつもり!?笑)


今回の記事で、子育てと気楽に向き合えるパパママが増えてくれると嬉しいです。

またねー。
ベテランパパ

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