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ロードムービーが好き④「霧の中の風景」
「霧の中の風景」は、1988年製作、ギリシャのテオ・アンゲロプロス監督作。
かなり久々に見ました。
忘れていた度:★★★★★😅
あらすじ
なにしろ、忘れていた度が5つ星なので、幼い姉と弟が、列車で旅をする、という大きな筋しか覚えていませんでした。
ただ、久々に見直したのですが、あらすじが書きにくい映画ですね。
ギリシャからドイツまで、幼い姉弟が父に会いにいく。
道中、劇団一座と、役者のひとりのオートバイ青年と出会う。姉がヒッチハイクしたトラックの運転手に襲われる。旅の中で、姉弟はともにたくましくなっていく。
必然的な出来事と不思議なシーンが混ざり合っていて、すじを追うよりただただ姉弟に寄り添うように見るのがいい映画かもしれません。
夢を繋ぎ合わせたような映画
道中での出来事のひとつひとつが、夢のようです。
雪が降ってきて、街の人たちが口々に「雪だ」とつぶやき、立ち尽くして雪を見上げたり、役者たちがさも意味ありげに横に広がりゆっくり登場したり、極め付けは海から浮かんでくる手のオブジェと、それをロープで吊り去っていくヘリコプターなど・・。(役者たちが海辺でリハーサルをするシーンは驚異の長回しで有名だそうです。)
そもそも、父に会いたいからと、12歳の姉が5歳の弟を連れて異国への列車に乗る。しかも無賃乗車で、というのが非現実的です。
普通に観てしまうと、弟が可哀想だし、姉が襲われてしまうのも、自業自得とまで思ってしまいます。
あんまり感想を言語化しない方がいい映画
なんか、ケチをつけているみたいな書き方になってしまいましたが、私かなり好きです、この映画。
この後どうなるんだろう?というカタルシスはないのですが、幻想的なシーンひとつひとつが魅力的で、例えばトップ画像のわけのわからない巨大な建設車両と、それに近づいていく姉弟の背中・・この構図など。
言語化しようとすると、話の筋を整理して、それに対してどう感じたか書く、というような癖のようなものがどうしても働いてしまい、何やら納得できない、変な話だ、みたいなニュアンスになってしまうようです。
ということで、身も蓋もないのですが、あんまり感想を言語化しない方がいい映画と言えそうです。
昔と違う印象
最後に、少しだけ昔見た時と違う印象について。
昔はそう感じなかったのかもしれないのですが、弟くんが旅を通じて成長していくんですね。
最後には、お姉ちゃんを守る、みたいなことも言います。
ずっと、ちょこちょこと可愛くて天使のような顔で眠っていた坊やが。
ひょっとして、そういうテーマでも撮られている映画なのかな、と思ったりもしました。
<追記>
DVDにアンゲロプロス監督が自作を語るインタビューが入っていました。娘たちへの寝物語として作った「おとぎ話」と、実際にあったドイツに父親を探しに行き行方不明になった子供の事件を足して作った映画だそうです。
なるほどなるほど、と思いました。