
ノムさんの優しさに心打たれた。〜加藤弘士「砂まみれの名将」を読んだ。
こちらの本を読み終えました。

野村克也さんが社会人野球チーム・シダックスの監督を務めた三年間(2002年11月〜)に焦点が当てられた本。
著者は野村シダックス時代、スポーツ報知のアマチュア野球担当記者だった加藤弘士氏。足繁く野村監督の元を訪れ取材した記者ならではのエピソードが数々収められており、一息で読み終えるほど面白かった。
中でも印象に残ったのが、野村さんの優しさや、庶民的な一面が伝わってくるエピソード。
ファミリーマートのとろろそばと温泉卵を好んだり、選手寮の名物のハヤシライスと冷麦を食べて、「美味いな。今後はずっとこれでいいよ。」と言う話など。
優しさを感じるエピソードは数々あり、中でも、キャンプ中にある選手から、「監督、高めの球はどうやって打ったらいいんですか?」と尋ねられた際、野村監督は一晩考え、翌朝のミーティングで、「あれからずっと考えたんだが、俺の考えはな・・。」と話し始めた、と言う。
優しさ、とは少し違うかもしれないが、真摯に野球に取り組み、アマチュア相手に対しても高飛車にならない、真剣に考えた末に自分の考えを伝えるという、野村監督の姿勢に感銘を受けた。
また、シダックスの創業者である志田勤氏が野村監督の「命の恩人」であったことや、沙知代夫人のプロデューサーとしての努力についてもあまり知らなかった。
野村監督の人生の厚みは、こういった周囲の方の尽力に拠るところも大きかったようだ。
そして、何より、野村克也さん自身が、周囲の人から愛される魅力をたっぷり備えている人だったことが伝わってきた。
野村監督がシダックスに別れを告げ、楽天の監督に就任する際に、志田勤氏がかけた言葉が何ともよかった。
「野村さんはプロの人。プロでやることが一番の幸福への道じゃないですか。どうぞ行ってらっしゃい。」