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張本さん勇退のあとの「喝!」役はこの人が良かったのではと思った。〜広岡達朗「監督論」を読んだ。
つまみ読みのつもりが、一気に読み終えてしまいました。
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広岡達朗・御年90歳。(ただ、この本は70歳過ぎの時に書かれた本)。
広岡さんが、自身の経験を交えて大いに監督論・プロ野球論を書き記した本。
タイトルは「監督論」だけど、中身は「プロ野球論」であり、「プロフェッショナル論」とも読めた。
自分の広岡さんのイメージは、西武黄金時代の監督。徹底した”管理野球”でチームを強くした人。
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正直、西武の監督時代の印象が強く、その前のヤクルトの監督時代、もっと前の広島のコーチ時代、そして巨人に在籍した選手時代のこと、また、西武監督以降の、ロッテのGM時代のことはあまり知らなかった。
この本は、監督時代の話も多いが、そもそも、コーチや監督の立場、つまり選手に指導する立場で、教えることとはどういうことなのか、または、そのように教えるに至った自分自身の経験を交えて豊富に語っている。
選手引退後のアメリカ視察での経験、コーチ時代の試行錯誤や、合気道で学んだこと、有名な”玄米食”を含む、プロとしてベストコンディションを維持するための食生活についての話も面白かった。
(そんな中で、選手引退後に、単身でアメリカに渡り、レンタカーでキャンプ地を訪れようとするが道に迷った話がすごく面白かった。)
そして、プロ野球の現場を離れたあとの、一人の”野球人”としての、野球への関わり方についても多くのページが割かれている。
それは、広岡さんの目から見ておかしいと思うプロ野球のシステム(FA制度やクライマックスシリーズ)、選手の年俸高騰問題(複数年契約の弊害、球団経営への圧迫)への改善の提案を含む言及であり、プロ野球だけに留まった話ではなく、プロとアマの役割分担や、中学生や高校生へプロ球界として何ができるか、また実際にやっていることの具体的な紹介など、どれも唸るような内容のものばかり。
本当に視野の広い方だと思った。
監督論を超えて、野球人かくあるべし、という”プロ野球論”であり、どんな業界にも通じる、”プロフェッショナルかくあるべし”、という非常に示唆に富んだ内容の本。
非常に共鳴した点をひとつ挙げておくと、大リーグへの一流選手の流出と、日本プロ野球のレベル低下について。
大リーグに野茂やイチロー、松井など、日本野球界のトップの人材が”流出”してしまうのを、嘆いても仕方ない。重要なのは、彼らが抜けたあとを埋められる選手を育成できるシステムを作ること、と広岡さんは語っている。
少し広岡さんの言葉を引用すると・・
彼ら(イチローなど)のプレーぶりは、リアルタイムで日本の茶の間に飛び込んでくる。夢を抱いた選手たちが生き生きとプレーしている姿を見るのは実に楽しい。
そこには日本の野球にないスピード感、力強さがある。メジャーで活躍する日本選手を目標にするのは当然のことだ。
自信のある選手はどんどんメジャーを目指せばいい。それが日本の野球のレベルアップにつながるからだ。(中略)
日本に見切りをつけろと、言っているのではない。実力のある選手が抜けても、抜けたあとを埋められる選手を育成できるシステムを作ることだと言いたいのだ。
これまでの球界は底辺を拡張して、拡充する努力を怠ってきた。過去のプロ野球人気の上にあぐらをかいてきた。老舗スポーツとしての過信と妄想である。
メジャーへの進出と挑戦を悲観的に捉えて流出と嘆き、危機感を募らせるのではない。もっと前向きに捉えたい。
この記事のタイトルに書いた通り、張本さん勇退後の「喝っ!(とあっぱれ!)」役は、広岡さんがやったら、90歳という年齢含めて話題になりそうだけど、どうかなあ・・。
上原さんの横に。萎縮しまくるだろうけど・・笑。
(追記)
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youtubeに、20年ぐらい前のテレビ番組「平成日本のよふけ」の動画が上がっていました。「監督論」に書いていたエピソードを語ってます。広島コーチ時代に「人を育てる哲学を学んだ!」と熱く語ってますね。
(どうでもいいけど、この頃のトーク番組、すごい密な座り方・・・)。