見出し画像

大糸線の旅~初冬の大地溝帯を行く~往路編

大糸線の旅にあたって

大糸線は文字通り、長野県の「大」町と新潟県の「糸」魚川を結ぶ鉄道である。現在では、松本から糸魚川を結び42駅を約3時間で運行している。その途中には、北アルプスの山々が見ることができ、そしてまた、地質の大きな分け目となる「フォッサマグナ(大地溝帯)」が通って面白い地形が繰り広げられている。

北陸新幹線が開通してからというもの、松本から糸魚川へ行くには、一旦松本から長野に行き、北陸新幹線で糸魚川へ行くというルートが最短になった。昔では、信じられないルートである。新幹線開通の影響もあってか、大糸線は数年前から「廃線の危機」などと話題を呼んでいる。事実、赤字路線であるが、恐ろしいほど真っ赤な路線であり本当にピンチな局面を迎えているのだ。

今回、「信州ワンデーパス」というお得切符を利用しつつ、時間的にも、もう二度と乗ることができないかもしれないであろう大糸線に乗車することに決めた。信州ワンデーパスで初冬の大地溝帯を行くのである。

信州ワンデーパス

信越本線・篠ノ井線で松本へ

 長野周辺の路線図はややこしい。ひとつには、篠ノ井から長野だけが信越本線という扱いになりJRの管轄区間になるということが挙げられる。                          
長野新幹線が開通され、旧信越本線(碓氷峠を経由して高崎へ行っていたもの)が第三セクター化されしなの鉄道に管轄移行した(軽井沢-横川間は廃線)。しかし、篠ノ井-長野間は、特急しなのなどJR東海の特急も走ること、長野松本間のJR利用者が多いことなど、しなの鉄道にとって利益が見込めずJR所属のほうが設備代などでも都合がよかった。これがしなの鉄道に篠ノ井-長野間が移行されずJR信越本線として残っている要因ではないかといわれている。松本から長野に行くとき正確には、JR信越本線直通篠ノ井線長野行き、とでも言えばよいのだろうか。

E127系

E127系ワンマン列車で、まずは松本へ向かう。7時48分松本行き普通電車。乗車率は80%くらい。明科あたりから120%くらいになっていたように思う。
車内の座席配置だが、ロングシートとボックス席に分かれていて、なぜか松本方向に向かって右側を向くような作りになっている。

E127系車内

これは後に理由がわかることであるが、このようなつくりだと姨捨の絶景が全く見えない残念なことになる。

よく乗りなれた路線であるが、姨捨あたりから霧がひどくなってきた。警笛を短く何回も鳴らしながら進む。冠着、聖高原周辺では積雪も見られた。

聖高原周辺


途中悪天候であったものの、松本には定刻通り到着した。久しぶりに松本駅に来た。
特急あずさも乗り入れることや、白馬や上高地に近いせいか長野駅よりも随分と都会駅であった。山手線などの案内放送もしていた。そんな近代的な駅でも、やはり、あの名セリフは伝統として残っていた。「まつもとぉ~まつもとぉ~まつもとぉ~まつもとです・・・」これを聞くと、一気に旅情がかきたてられる。こういうことひとつ、AIにはきっとできないだろうなあと思いながら乗り換え。これから約2時間の乗車。車内にトイレはあるものの、駅で一旦トイレに入った。長野駅よりも綺麗だった。

大糸線 松本駅→信濃大町駅

E127系

車両は篠ノ井線でも利用したE127系であった。ワンマン列車。この列車でもやはり,進行方向左寄りがボックス席,右側にロングシートがあり座った乗客は皆,強制的に進行方向左側を向かされる羽目になっていた。なぜなのか。それは松本駅を出た早い段階で理解できた。おそらく、北アルプスの山々を見せるためである。もちろん、片方がロングシートで、もう片方がボックス席だと乗客も大勢詰めることができる。行きの篠ノ井線の座席配置がおかしかったのは、大糸線車両を無理に篠ノ井線に投入しているからである

車窓から

前日にやってきた前線の影響で、山のほうには雪が積もっていた。一面、冬の景色が広がっていた。この日は晴れていたので絶好の景観だった。

車窓から
車窓から

信濃大町駅にて

信濃大町駅で停車した。2・3分の停車かと思いきや、20分以上停車するとのこと。せっかくだから駅の外に出てみた。こういう臨機応変な対応ができるのもフリーパスの魅力である。

信濃大町駅にて
信濃大町駅前
駅前通り
信濃大町駅にて

大糸線 信濃大町駅→南小谷駅

しばらくすると、湖が見えてきた。木崎湖だ。

車窓から(木崎湖)

雪の演出も素晴らしく、絶景であった。特急だともう少し早いスピードだろうが、普通電車なのでスピードも遅い。ゆっくりと湖を楽しむ。こういうところが普通電車の醍醐味なのだと思う。

車窓から

三大湖(木崎・中綱・青木)を過ぎると白馬の壮麗な山々があらわれた。あまりの美しさに、目を離すことができずすっかり写真を撮ることを忘れてしまった。この区間は特に絶景のオンパレードである。松本からの乗客は、穂高・信濃大町そして、白馬でほとんど降りていった。白馬から先は、地元民のように見えるおばあさんと、何人かの鉄道マニアが残った。

車窓から
車内の様子

南小谷駅にて
南小谷駅でいったん下車。ここで糸魚川行きへ乗り換える必要がある。JR東日本からJR西日本に管轄が変わるということ。そして、南小谷駅-糸魚川駅間は非電化区間であるので、列車はディーゼル車になるからだ。ここにきて、何となく日本海に行きたくなった。親不知に行こうと決めた。車で通過したことはあるが、電車で行ったことはなかったからだ。
ここで親不知へ行くための切符を購入。券売機では発券できない区間なので駅員さんに切符を作ってもらった。

切符

大糸線が廃線になれば、この切符は二度と作ることができない。ある意味貴重になるかもしれないものを眺めた。日々の生活ではICカードのほうがずっと楽だが、出かけたときには切符もいいかもしれない。切符はたいてい貰えるから、それだけでも立派なお土産になる。

●大糸線 南小谷駅→糸魚川駅

待機していたのはキハ120系。

キハ120系


方向幕

なんだかバスみたいな小ささと扉だが、トイレはなぜか付いている。座席はボックス席もロングシートもあった。乗り込むとすでに何人か居た。夫婦で駅弁を食べる人、山に出かけそうな装備をしている人など様々。地元民はいなかった。車内は観光列車と化してしまっていた。のんびりと走る列車。およそ25kmの速度で走る。急にそびえたつ山、そこに通る川。「富士山」とかのように、特筆すべきものがあるわけではないが、どこか懐かしい気持ちになる。日本の原風景とでも呼べる景色が繰り広げられていた。そんなものをぼんやりと眺めているとあっという間に糸魚川についていた。写真を全く撮っていなかった。ディーゼル車の揺れも心地よく、この路線に乗れて本当に良かったと思えた。

車窓から


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?