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『高村光太郎全集 第五巻』(高村光太郎、筑摩書房)の感想

 彫刻家、詩人、文筆家であった高村光太郎の彫刻論が載った巻。
 評論の代表作は、「私は彫刻家である。/多分そのせいであろうが、私にとって此世界は触覚である。」で開始される「触覚の世界」だと思うが、これはウェブサイト「青空文庫」で読める。
 本書全体を見ると、ロダンやピカソや抽象彫刻なんかにコメントする光太郎が当時の「世界の動向を押さえた最新の評論家」であると感じられる。当時の最先端を紹介する仕事をしていたのだ。
 とはいえ、これらの文章の核にあるのは芸術表現と芸術衝動のシンプルな肯定であるだろう。「作家言」の全文がこうなのである。「“文句ぬきの表現”欲望の強さが私を造型芸術に駆りたてる」(p13)。卓抜な文章家である。以下は短い引用を羅列します。

全的把握が其処(そこ)に彫刻として具顕されて居るべきである
(p140「彫刻性について」)
人間には立体のものは何でも触ってみたくなる本能がある
(p197「素材と造型」)
芸術に於ける永遠とは感覚であって、時間ではない。これが根本である。(略)持続を瞬間に煮つめた、無限持続の感覚なのである。
(p232「永遠の感覚」)。


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