[カルチャー紹介]CGOに聞く - スタートアップのカルチャー作りのために個人が出来ることをトコトンやりきる
Beatrust 株式会社、Product Marketing Manager の Atsushi Tsukada です。いつも Beatrust on note をご覧頂き有難うございます。本日は Beatrust のカルチャービルディングに関する一連の取り組みをリードしてくれている社員、CGO(Chief “Gaya” Officer)の Nodoka Fujii へのインタビュー企画をお届けします。
多くの会社様にとって、フラットで心理的安全性が確保された組織づくりは、非常に優先度の高い経営課題であると共に、実現の難易度が高いテーマだと思います。1 on 1 や peer bonus などの施策を導入しようとも、実際に運用する社員 1 人 1 人がそれを十分活用できるだけの背景理解と許容適正が無ければ、思ったような効果を得ることは困難です。一方で、トップダウンな制度導入に頼らずとも、社員同士の主体的な取り組みによって良好な職場環境を維持できている会社様も実際に存在し、何が優先的に取り組むべき事柄なのか、自社にマッチした施策は何か、迷っておられる会社様も少なくないのではないでしょうか。
そのヒントを探るため、スタートアップのような、イチから企業文化を創らんとする段階の会社 において取り組んでいる内容に興味をお持ちの方もおられるようで、当社にも多くのご質問をお寄せ頂きます。当社が創業以降 4 年弱の中でどのようなフェーズの変化を経験し、それに応じてどのような “社員主導の施策” を講じてきたのか紹介させて頂くのが本記事の趣旨です。世の中に 1 つとして同じ会社はありませんから、当社とは全く異なる企業文化・事業フェーズの会社様に、当社の取り組みがそのまま適応可能だとは考えておりませんが、具体的な施策の検討段階において、担当者が何を考え・苦心し・決断をしてきたのか、 プロセスと思想の部分は大いにご参考いただける部分かと思いますので、ぜひ最後までご覧くださいませ。
そもそも CGO(Chief “Gaya” Officer)って何?
――Nodoka さんのご経歴を教えてください。
🔴 藤井 のど佳 (以降、藤井):大学ではマーケティングを専攻していました。学んできた知識を、今度は実践しながら深めたいなと思ったのと、年齢やバックグラウンド関係なく接することが出来るようなカルチャーの方が自分にフィットしそうだと感じていたため、外資系やベンチャー中心に就職活動をしていました。1 社目はイベント等のマーケティングプロデュース事業を行う会社に入りました。そこで Google 等の外資 IT 企業を顧客として担当する中で、「自分らしく働くとは?」というテーマに興味が湧き、キャリア支援事業を行うビズリーチ社に転職しました。就活生向けのマッチングサービスの事業部でマーケティングの職種に就いたのですが、業界を深く知るにつれてよりお客様に近いところで働きたくなり、部署内異動でカスタマーサクセスにジョブチェンジしました。ビズリーチの仕事も社風もとても大好きだったのですが、2021 年末に当時の知り合いを通じて知った Beatrust にも「まさに自分が人生の選択で大事にしている価値観を、プロダクトを通じて世の中に提供しようとしている会社なのだな」と魅力を感じ、かなり迷いましたが、自分にとってより大きなチャレンジになる選択をしようと思い至って 12 月に Beatrust への参画を決意しました。
――いま仰った、大事にしている人生観とはどういったものでしょうか?
🔴 藤井:信頼・助け合い・自己成長です。仕事をする上でもこの 3 つを実践しながら働くことを心がけてきました。その人の顔と名前と人となりを知った上で仕事すること、積極的に相手との共通点を作って心理的な距離を縮めること、困った時に助け合えるような関係性を作ることなど、“互いが敬意を払いつつ気持ちよく働ける方法” を常に意識しています。
――どうしてそのような価値観を持つに至ったのでしょうか?ご自身のパーソナリティをどのように分析されていますか?
🔴 藤井:“イベント担当” のように思われることも多く、これを言うとすごく意外に思われるかもしれませんが、実は「人見知りでネクラ」なんです笑。それこそ一社目で営業をやっていた時は、初めてお会いする方とまともに話せる自信がありませんでした。事前にめちゃくちゃその人のことを調べてから営業に向かい、あたかも会話する中で共通点を見つけたかのような偶然を装って距離を縮めるようなことを意図的に行なっていました。でも、そういうことを続けていくうちに次第に性格が変わってきた、より正確に言えば、もっと根本にあった「でもやっぱり人が好き・興味がある」という本来の自分が表に出てきたんです。前職の時にそれを自覚して、とにかくイベントであれ Slack であれオンラインミーティングであれ、 “場を盛り上げて皆が発言しやすい雰囲気を作る” ことに取り組んでいて、皆から「ガヤ要員」と呼ばれていました。
――CGOが近づいてきた感じがありますね笑。Beatrust に入社された頃の当時の様子をお聞かせください。今と様子と違って感じることは何かありますか?
🔴 藤井 :まだ社員が 10 人くらいしかいない “どスタートアップ” の時に入社しましたが、当時から「つよつよメンバー」が多かったですね笑。外資大手の出身者が多くて、ゴリッゴリに仕事をする雰囲気があり、ましてそれぞれがやることもものすごく多かったので、意識しないと社内のコミュニケーションがそっけなくなりがちなんですよね。正直いえば前職とのカルチャーギャップを感じました。必要なことをサッと共有して、あとは全員が武士みたく外交活動に勤しんでいました笑。これは・・自分が働きかけて、より楽しく働ける職場環境を作っていきたいなと思いました。せっかくなのでスタートアップらしく、自分のやるべきことを自分で定義する意味も込めて、“CGO(Chief Gaya Officer)” を勝手に自称し始めました。
――ガヤ精神がくすぐられたわけですね。最初に取り掛かったのは何でしょうか?
🔴 藤井:先ず最初に、「反応する・させる方法」が必要だなと思い、Slack のオリジナルスタンプを 100 個くらい一気に作って登録しました。 みなさん忙しいですから、①簡単に出来ること、②楽しい/嬉しい仕掛けであること、③相互にアプローチ可能であること、が大事だと思いました。ミーティング中に無意識で行う “うなづき” を、Slack のようなドライになりがちなテキストコミュニケーションでも展開可能な形で実装できないかな?と思ったのがきっかけです。「なにこれー!?」と驚いてくれるメンバーや、“かぶせ” や “いじり” といった遊び心ある使い方を勝手に始める社員、アポ終わりを労ったりニュース記事の共有にサンクスの意思表示をしたりといったちょっとしたことにカジュアルに反応しあう文化が徐々に出来上がってきたと思います。
組織文化は、与えられるものではなく “自分達で創るもの”
――Beatrust が組織として成長するにつれ、明らかに会社の空気が変わってきたと感じた瞬間はありましたか? 特に、「これは課題だな。なんとかした方がいいな。」と思うような具体的な出来事があれば、ぜひ率直にお聞かせ頂ければと思います。
🔴 藤井:2022 年の後半ですね。ダイレクトリクルーティングを中心とした採用活動をものすごく頑張った成果が出始め、社員数が急拡大しました。結果、ありがたいことですが、採用の過程で自分が面接していない社員が入社し始めたというのがこの頃です。オンボーディングのタイミングで 1 on 1 を入れるなどして相互理解に努めるものの、明らかにこれまでとは状況が変わりました。私自身も「初期メンバー」と思われて相談を受けることが増え、入社時期による情報格差やコミュニケーション濃度差が生じる懸念があるなと思いました。前提として共有されている情報が違うため、「ここで私が発言していいのだろうか・・」という不安を口に出す社員も実際に目にしました。
――なるほど。いわゆる「30人の壁」と呼ばれる、スタートアップが直面する成長のキャズムを Beatrust も経験されたということかと感じました。どの会社もカルチャービルドには非常に関心があると思っており、そのために何か社として施策を講じるという判断に至ることが多いと思います。1 on 1 や 360° フィードバックのような “制度導入” も 1 つですね。むしろそれが第一手だとも思うのですが、Beatrust ではその判断は無かったのでしょうか?
🔴 藤井:前提として、 Beatrust では既に 1on1 も360° フィードバックもやっていたんですよね。それに、制度設計と風土改革は本質的に “ニワトリ-タマゴの議論” がありますし、オフィシャルな制度採択にも、個人が主導する空気づくりにも、それぞれメリット&デメリットがあります。前者には、強制力・大義名分・予算を会社が工面してくれる等のメリットがありますが、やり過ぎると押し付けがましくなりがちですから、ここぞ!という局面で講じるべきだと個人的には考えています。先ずは後者のアプローチでやれることをやりきってこそ、社員全員がちゃんと根本課題に向き合えると思うからです。
――なるほど、ボトムアップによる社員の自律性が “空気感” として形成された上で、トップダウンでの “施策導入” という順番がリーズナブルだとお考えだということですね。
🔴 藤井:少なくとも Beatrust においては実際に機能したと思います。社員 1 人 1 人 の影響力が大きいスタートアップだからというのも一因ですし、合理的で大人な判断が出来る社員が多いからという個別要因もあるでしょう。すべての会社様においてフィットするアプローチだとは思いませんが、少なくとも私自身は、会社のカルチャーも所詮は個人の行動の積み上げの結果だと思いますし、自分の働きやすい環境は自分で創るものだと考えています。
“自分がやりたいから” に動機づけされてオーナーシップを執ることが出来る社員を創造する。ただし責任は “ほどほどに”。
――「実際に Beatrust ではこんなことやってきたよ」という取り組みを具体的に教えてください。
🔴 藤井:古い記憶から遡って、主だったものをピックアップします。
Slack スタンプ推奨キャンペーン
確認したら少なくとも “反応” してあげよう
Slack 文化啓蒙キャンペーン
ソフトルールを明文化して効率を上げよう。
基本はOPEN channelで。見て欲しいものはmentionする。設定をいじると確認漏れが減るよ等々を社員向けにレクチャー
新入社員へのオンボーディングセッション準備
総務、経理、勤怠等の基礎トレーニングを整備し、働き始めやすくする。
メンバーの登壇をパブリックビューイングしようぜ!
団扇作ってみんなで応援。チャット欄チェックも!
お掃除サンクスキャンペーン
オフィスクリーンに貢献した社員を勝手にアワード
みんなのオフィスを創ろうキャンペーン
お引越しの機会をチームビルディングに活用。
マシュマロタワーみたく、みんなで家具を組み立て。
ハロウィーン
たまにはみんなではっちゃけよう!
年始初詣
熊手を買ったら社長が日経の取材を受けるラッキーも発生!
節分&恵方巻き
外国籍社員も増えたし、日本らしいことに触れてもらおう
――組織が大きくなれば、さまざまな社員が入ってくると思います。中には「我関せず」の姿勢の社員や、「仕事に余裕ありそうだね」といった斜に構えたスタンスもあり得そうな気がしますが、そんなことはありませんか? 将来的に発生したとき、どう対処しますか?
🔴 藤井:企画・主催するうえでの基本スタンスは以下です。
①フェアであること(企画内容もそうだが、参加する/しないも完全に任意)
②自分が一番に楽しむこと(それをちゃんと社内広報するのも大事)
③頑張り過ぎないこと(KPI とか OKR を負わない。指示されてやってるわけではない)
チームビルティングや情報共有など、明確な目的を持って全社員を巻き込まなければいけないものは会社がやればいいのです。いろんなスタンスの社員がいて、それで良いと思っています。参加率が低いからどうこうといった話は一切しません。「私がやりたいから勝手にやっているだけ。ジョインしたい人はいつでもウェルカム!」くらいの緩いスタンスです。だからこそ、不必要に頑張るつもりは無いですし、ゆえに、この活動を会社から「評価されたい」「インセンティブが欲しい」などを思ってもいないです。私が飽きたらいつでも放り出そう、またやりたくなったらなんか企画しようかな、くらいの心持ちで常にいます。
――あれ?思っていた以上に「テキトーに」やってるんですね笑。
🔴 藤井:結局のところ、本人が疲れてしまうのが一番よくない終わり方だと思っています。物凄く時間も労力も使っているのに、会社が・上司がそれを評価してくれない、という “コスパ・タイパ意識” や、これだけ頑張ったんだから見返りが欲しいという “動機のすり替え” が起こりうるような強制力と過剰負荷の中で行うことが間違いなのではないかなと。手を挙げて飲み会を企画したのに、いきなり上司から「じゃあお前が幹事ね。先ず◯◯部長の承認とって、次に出席者名簿と案内状と座席表作って。最低でも 1 ヶ月前告知と、直前 1 week 前にリマインドして云々〜」と言われたら、ああ自ら貧乏くじを引いてしまった・・、という後悔しか残らないですよね。
――でも・・やりがちかもしれないですね。。過去にそういった経験は無かったのでしょうか?努力が正しく評価されていないように感じたり、社から十分な活動支援が無いなど。
🔴 藤井:私自身は無いですね。会社の規模だとか業界ムードだとか実は関係なく、個社ごとに違いますし、働きかけによって変えていける部分だと信じています。私の個人的体験ですが、以前の職場で、長らく関わってきたサービスを(成果好調にも関わらず)クローズしなければいけないケースがありました。このまま終わるのは寂し過ぎるなと思い、誰に頼まれたわけでもなく、「関わった人たちへのインタビューを集めてコンテンツ化し社内で発表したいな」と思って準備を始めました。ものすごく大変な作業でしたが、誰から止められるでも指示されるでもなく、最後までやり遂げた時に、社長が「あの取り組みいいよね」と社内で発表して下さったのです。事前にことわりを入れて進めていた訳でも無いのに。その時に「評価されたいのではなく、誰かに認めてもらえること、価値があるよ!と言ってもらえることが、自分にとってはすごく大事」なのだなと気づき、同じような体験をサービス上で提供できるプロダクトが作れないかなと思ったことが、私が Beatrust で働いている理由です。
――社としての “ありたい姿(カルチャー像)” を実現するために、1 人 1 人の社員が究極的に(最低レベルで)貢献できることってなんだと思いますか?
🔴 藤井:目の前の誰かの行為に “先ず反応してあげること” です。何か気が利いたことを言おうと頑張る必要は無いし、評価やインセンティブという公式な形で還元してあげようなんて(毎回)思わなくてもいい。ちょっとした賞賛と敬意と感謝の言葉だけで、十分救われる同僚がいるはずです。自分 1 人のチカラで大きな会社を変えようと思わなくてもいい。ただ確実に、隣の誰かを変えることは出来るはずで、その誰かと誰かが拡大していって、いつか必ず会社そのものが変わる時がくると思います。
いかがでしたでしょうか? 今回は Beatrust のカルチャーをリードする社員にフィーチャーし、会社文化は 1 人 1 人の社員の働きかけによって作られることをみなさんにお伝えする目的で記事をお届けしました。カルチャービルドや風土改革というと、とかく制度設計に目が行きがちかと思いますが、全ては運用する側の社員の心持ちにあり、 1 人 1 人がいかにオーナーシップを執って組織に働きかけていくかが重要だと思っております。それは、実は日本企業がこれまで大事にしてきた「人と向き合うこと」や「互いへの感謝・賞賛を口に出して発信することの大切さ」を見直すことであり、われわれにとってなじみやすい形でのカルチャービルドを実現する実行手段たり得るのではないでしょうか。ぜひこういった取り組みにチャレンジされたい会社様(もとい社員の方)にとって参考になる情報がご紹介できておりましたら幸いです。
Beatrust は、本日 2023.2 月時点で、正社員 27 名(国籍としては 9 か国)まで成長してきております。Diversity and Inclusion を保ちつつ、社員がより自律的・機動的に働くことを可能にするための取り組みにチャレンジしてまいりたいと思っております。Beatrust のヒト・モノ・コトを感じていただけるような情報をお伝えしていきますので、少しでも興味を持っていただけましたらこちらの “Beatrust on note” をぜひフォローいただければ幸いです。また、どうぞ宜しければ他の記事やニュースリリースも併せてご覧くださいませ。
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