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少年カフカに胸焼けして、村上春樹と新海誠とフェミニズムについて感じたこと

前回に続き、Audible村上春樹海辺のカフカを聴きました
こちらもおよそ四半世紀ぶりの再会です

四半世紀ぶりに読んだノルウェイの森は随分と印象が違ったのだけれど、海辺のカフカに関しては、さほど印象の違いはありませんでした

ただし、ノルウェイの森が思っていたよりも淫靡ではなかった一方で、海辺のカフカは思っていたよりも淫靡でした それから、初めて読んだときには、現実社会の物語の中に、突如として現れる超非現実的なシュールな展開(魚が空から振ってきたり、猫とおしゃべりをしたり、ジョニー・ウォーカーとかケンタッキーおじさんとか)に戸惑い、解釈不明の消化不良感を強く感じたけれど、今回はあまり難しく考えずにそのまま受け入れることが出来ました

というのも、この四半世紀の間に、本や映画やアニメなどの作品を大量に摂取してきたので、私の受け止め方が変化したのだと思います あるいはただ単に歳を取っただけの話かも知れませんが

なお、私にとって村上春樹の代表作は世界の終りとハードボイルド・ワンダーランドです  何故かというと、中3から高1にかけて読んだ、初めての村上春樹作品であり「こんなに面白い本があるものか」と、文学や読書そのものに興味を持つ切っ掛けとなった印象的な本だからです

いま、改めて世界の終りとハードボイルド・ワンダーランドノルウェイの森海辺のカフカの時代の村上春樹作品のことを考えると(近年の作品については読んでいないものも多く、詳しくない) なんだか新海誠のアニメに似ているような印象を受けました ちなみに、村上春樹原作の映像作品は一つも見たことがありません もしもゴダールのまねごとみたいな気取った映像を見せつけられて蕁麻疹でも出たらどうしようという心配があったからです

村上春樹の作品と新海誠のアニメとで、どこがどう似ているのか?と言われても具体的な例はあげられないのですが、ざっくりと読了感が似ている印象です 村上春樹の作品からJazzとお酒とセックスを引いて、ジブリ作品のような表情豊かな元気なキャラクタと、エモーショナルなJPOPとを足し合わせると、だいたい新海誠のアニメになりそうだなと思いました どちらも好きなので特に批判的な気持ちがあるわけではないです

それから、今回改めてノルウェイの森海辺のカフカを読んで(聴いて)、男性中心的なあまりにも都合のよい女性像の創造を感じ、これって今の世には合わないだろうなと思いました 私ですら違和感があったので、フェミニストの方々には受け入れがたいのではないでしょうか 

不思議なことに、もっと古い年代の作品、例えば、山の音(川端康成)だとか、東京物語(小野安二郎)などは、もっともっと男女差別の様子が顕著ではあるんだけど、今回読み直した村上春樹作品は、それらの作品以上に不快な印象を受けました 男女が平等ではない社会が描かれているのではなく、女性が主人公(僕)に都合のいいようにしか描かれていなくて、蔑視はしていないが、まるで小道具のように軽視をしている印象を受けました その点でも新海誠はアップデートされている様に思います、何せ主人公が女の子の場合もありますし 

当時の若者が村上春樹に夢中になったのと同じように、今の若者が新海誠に夢中になっているのだとすると、その原理は理解することが出来ますし、その普遍的な部分に安心を覚えます

当時の若者であった私は新海誠を受け入れることができるが、果たして今の若者は村上春樹を受け入れることができるのだろうか?

カジュアルさを求めるなら新海誠でいいし、本を読みたがる物好きだったら中上健次とか安部公房のような、より拗れたものを選ぶのではないかなと思いました

とにもかくにもノルウェイの森海辺のカフカを立て続けに読んで(聴いて)、とても面白い時間を過ごせはしましたが、すこし胸焼けもしてしまったので、村上春樹の摂取は当分控えようと思います

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