【日常茶飯事】握りたての塩むすび
大人になる、とは?どういうことなんでしょうか。
「秋空にさらすわが身は何物ぞこれっぽっちの裸おにぎり」
(辰巳泰子『いっしょにお茶を』より)
そう、「大人になる」ということは、相手の立場に立って考えるということと、言えますよね。
会社や学校、電車の中など、いろいろなところで、大人じゃないなーと思う人を、見かけることがあります。
年齢的には、大人なのに、自己中心的で、周りのことを、あまり考えられない、ちょっと”こども”な人。
大人になるとは、相手の立場になって考え、行動することができるようになること。
相手の立場を、思いやれる気持ちが、豊かになっていくことです。
それは、人間関係を、円滑にするポイントでもあります。
「お互ひに聞かぬ言はぬの距離ながら白露の萩に解けてゐたり」
(中西敏子『呼子』より)
では、どうしたら、そんな”大人”になれるのでしょう?
それには、想像力を働かせることが必要です。
「皮やぶれ真白く餅のふくるるを稚(わか)きこころに待ちをり吾れは」
(宮柊二『藤棚の下の小室』より)
自分が、相手と同じ立場になったとき、どんな気持ちになったか。
または、同じ立場になった友人が、どんな気持ちになっていたか。
あるいは、本、テレビなどで見た似たような光景から、当事者が、どんな気持ちになっていたか、など。
毎回、何かをするたびに、そんな想像をするのは、ムリがありますが、自分の心に、一定以上の感情が沸いた瞬間を、意識して記憶するようにしてみましょう。
うつとりと
本(ほん)の挿絵に眺め入り、
煙草の煙吹きかけてみる。 ―――石川啄木『悲しき玩具』
そうすると、例えば、かつて、タバコを吸ったら、隣の席の子が、タバコ嫌いで、とても怒った、ということを意識して記憶していたとします。
誰かと一緒に食事をした席で、タバコが吸いたくなったあなたは、ふとその記憶を思い出します。
そうすると、
「タバコ、吸ってもいいですか?」
と、そのまま火をつけてしまう前に、同席している相手に一言聞くだけで、相手は、あなたに”気遣いのある人だな”と好感を持ちます。
ちょっとずつの積み重ねですが、日々、自分が感じたことを、なぜそう感じたのかを、意識して記憶することで、同じような場面で、相手の気持ちを、気遣えるようになっていくはずです。
あなたに気遣われた相手は、自分のことを分ってくれている。
気遣ってくれていると察します。
そうしたら、お互いの関係も、もっとうまくいくはずです。
「海の家の裏に隠れてこっそりと入道雲に空気を入れる」
(松村正直『駅へ』より)
自分の気持ちを意識しながら、みんなで素敵な大人をめざしましょう!
料理もそう、ぎゅっとつまった愛情が、一番の調味料♪ですから(^^)
「雲雀料理の後にはどうぞ空の青映しだしたる水を一杯」
(尾崎まゆみ『微熱海域』より)
萩原朔太郎『月に吠える』
[雲雀料理]
「五月の朝の新緑と薫風は私の生活を貴族にする。
したたる空色の窓の下で、私の愛する女と共に純銀のふおうくを動かしたい。
私の生活にもいつかは一度、あの空に光る、雲雀料理の愛の皿を盗んで喰べたい。」