【宿題帳(自習用)】算数の時間:算数再入門
[テキスト]
「算数再入門 わかる、たのしい、おもしろい」(中公新書)中山理(著)
[ 内容 ]
だれもが小学校でならう算数、毎日暮らしの中で使っている算数。
けれども「6割る0.5の答えがなんでもとの6より大きな12になってしまうの」と尋ねられるととっさに説明できないのではないでしょうか。
本書は、いちばん基本の「数って何?」という疑問から、足し算や掛け算、分数や割合など、つまずきがちなポイントを中心に、独自の視点でわかりやすく説明し、わからないとふしぎ、わかると美しい算数の世界へ誘います。
[ 目次 ]
数を教える
壁の紙の数―1年生の数え方
足して7になる数
日常使っている数―十進数
0(ゼロ)について
繰り上がり繰り下がり
計算を楽しく―整数の足し算・引き算
水遊び―測定の基本
掛け算について
掛け算九九の覚え方
掛け算のコツ
外国の割り算
おまんじゅうの法則―分配法則
小数―半端な数の表し方(1)
分数―半端な数の表し方(2)
分数の割り算は、なぜ除数の逆数を掛けるのか
割合―比較と基準
単位量当たりの大きさ―平均・速さ
簡単な単位換算
変化とグラフ
比例と反比例
文章題ってなあに?
公式を作る
算数と数学のちがい
数の列車
起こり得る場合の数
図形の性質
面積のもとは長方形
立体図形の表し方
[ 問題提起 ]
ここにきて、なぜか、こんな感じの理系読みもの(算数クイズ)に興味津々である。
かつては、苦手でも、大人になったいまならわかるかも・・・という淡い期待を抱いている人もいるかもしれない。
昨今は、
「文系頭にもわかる理系もの」
が書店を賑わしている。
数多ある理系もののなかで、まずは、やっぱり数字から。
そう思って読み始めたのが本書である。
『数学でつまずくのはなぜか』(小島寛之著、講談社現代新書)
でもなく、
『いちばんさいしょの算数』(橋本治著、ちくまプリマー新書)
でもなく、『算数再入門』。
数学まではちょっと手が出ないけれど、初歩の初歩まで遡るのは肩が凝る。
というわけで、まずは小学校の算数をおさらいしてみようという魂胆だ。
で、結果は、
「なんとか読み通せた」
というのが、正直なところだ。
本書は、足し算引き算という初歩的なレベルからスタートして、最後には、比例や反比例、図形の面積や体積といった数学一歩手前まで到達する。
[ 結論 ]
途中までは快調に読み進めていたのだが、半ばを過ぎて雲行きが怪しくなり、分数が登場してきたあたりからは、鉛筆片手、ページをめくるスピードもぐんと落ちた。
まるで、問題を前に、途方にくれていた小学生の頃の自分に戻ったような錯覚に襲われた。
だが、小学生のときはわからなかった
「なぜそうなるのか」
をいまにして理解できたこともあった。
たとえば、帯にも書かれていた
「分数の割り算はなぜ逆数をかけるのか」
という課題。
3/7÷4/5
がなぜ、
3/7×5/4
とイコールになるのかということを、本書では、6通りのやり方で説明している。
一例は、
「割り算の被除数と除数に同じ数を掛けても、0でない同じ数で割っても、商は変わらない」
という性質と、
「1で割るということは被除数がそのまま答えになる」
という性質を使って計算するというもの。
よって、
3/7÷4/5=3/7×5/4
となり、逆数を掛けるのと同じになる。
もう一つ例を挙げてみよう。
こちらは、
「分数の分母と分子に同じ数を掛けても、0でない同じ数で割っても、数の大きさは変わらない」
という性質を使って通分し、さらに、
「被乗数と乗数を入れ替えても積は変わらない」
という乗法の交換法則を使って解くやり方だ。
と、同じ結果になる。
公式には、必ず理由があり、アプローチの仕方も、一つではないのだ。
公式の導き出し方が、一様ではないように、答えを出すやり方も、また、一つとは限らない。
たとえば、
67×63
という掛け算のやり方。
真っ当に計算しても、正解にはたどり着くが、より速く計算できる方法というのをご存知だろうか。
「十の位が同じで、一の位の和が10」
であることに注目できれば、
「十の位の数より1大きい数を掛けて百の位に書き、一の位同士の積を一の位に」
書けば、簡単に計算できてしまうのだ。
同じように、
48×42
の積は、
40×50+8×2
で、答えは、
2016
と一瞬で答えが出る。
ああ、小学生の頃の自分に教えてあげたい・・・
公式を丸暗記し、愚直に計算することしか知らなかった当時の自分に。
正解にたどり着くことだけが目的じゃない。
正解までに、どう頭を駆使して試行錯誤するか。
それが、算数や数学の醍醐味なんだよ、と。
読後には、しばらく使っていなかった筋肉を使ったような爽快感を味わった。
算数の
「なぜ」
を一つ一つ丁寧におさらいしていく本書。
章の間に挿入されている「こどもの作文から」というコラムも、子供が算数の「なぜ」にぶつかって、あれこれ考えていくうちに、一つの法則を見い出していく「気づき」の瞬間が手に取るようにわかっておもしろい。
[ コメント ]
最後に、小学校4年生の子の作文を紹介しよう。
カレンダーを見ていたその子は、数字のある規則性に気づく。
15という数字を中心に、横、縦、斜めの隣り合う数字を足すと、
「つまり横なら14+15+16、縦なら8+15+22」
どれも45になり、15の3倍の数だ。
じゃあ、
「他もそういうふうになるのかなぁ」
と思い、11や9という別の数字でも試してみる。
そして、答えがどれも中心の数の3倍になることを確かめ、
「やったー、大発見だぁーと思いました」
と締めくくっている。
この「大発見」は、中心の数をAとすると、横ならば
(A-1)+A+(A+1)=3A
縦ならば
(A-7)+A+(A+7)=3A
となり、どのみちAの3倍になることは、当たり前と言っちゃ当たり前だ。
だが、きっとこの子は、式で教わるよりも、ずっと大切なものを自分でつかんだに違いない。
閃きを体験したら、たぶん算数が好きになる。
頭ごなしに公式や、やり方を覚えるのではなく、まずは、あれこれ自分の頭で考えてみること。
数学的思考というものは、思ってた以上に柔軟だったのだ、といまさらながらに思った。
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