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ディベート「走れメロス」
今週はいよいよ、『走れメロス』のディベートに入りました。
クラス全体を3つの班に分け、肯定派・否定派・審判の役割を決めました。
審判の班では、司会者2名、タイムキーパー1名、結果発表者1名を選出し、残りの生徒は純粋な審判として議論を見守る形にしました。
ディベートのテーマは3つです。
1. メロスは本当に勇者か?
2. ディオニスは本当に悪い王か?
3. 山賊は王の差し金か?
初任研の先生からは、「3つ目の『山賊は王の差し金か?』は情報量が少なく、難しいのでは」と指摘されました。
確かに、本文に明確な記述は少ないのですが、以前の授業で内容理解のプリントを用いた際、このテーマで意見が活発に出て盛り上がりました。そのため、難しいかもしれないと思いつつも、ディベートのテーマに取り入れることにしました。
クラスごとの違い
あるクラスでは、議論が大好きな生徒が多く、大いに盛り上がりました。
情報が少ないからこそ、どちらの立場にも立てるため、意見が言いやすかったのかもしれません。
「王は人を信じられないのだから、山賊を信用するはずがない」といった意見や、
文中の描写から王の性格を読み取って意見する生徒が多くいました。
普段、あまり宿題をやってこないような生徒たちも、
「お風呂で何て言おうか考えた」
「寝る前に考え始めたら眠れなくなった」
などと言ってくれて、このクラスには合った授業だったのだと感じました。
一方で、発言が苦手な生徒が多いクラスもありました。
1つ目のテーマ「メロスは本当に勇者か?」を議論しましたが、意見は出ても表面的なものばかり。
一度発言すると満足してしまい、それ以上深めようとしないため、キャッチボールのないディベートになってしまいました。
明日以降、残りの2つのテーマを扱う予定ですが、正直「きついな…」と思っています。
私が「きついな」と思うのだから、生徒たちはもっとそう感じているはず。
そこで、司会者が生徒を指名する方式にするか、または、議論の時間を短縮するといった対応を検討しています。
授業直前まで悩むことになりそうですが、臨機応変に進めていきたいです。
『走れメロス』はディベートに適した単元だと考えています。
ディベートを行う目的は、物事を多面的に捉える力を養うことです。
自分の意見だけを正しいと思い込んでいると、対立を生み、不満ばかりが募ってしまいます。
でも、たとえ「苦手だな」と思う相手にも良い面があるかもしれない。
“完全な悪”や”完全な善”は、そう簡単に存在しない——
そんな考え方をするきっかけになれたら嬉しいと考えて取り組んでいます。
また、ディベートでは自分が好きな立場を選べるわけではなく、割り当てられた主張をしなくてはいけません。
「ディオニスはどう考えても悪い王」と思っている生徒も、否定派になったら「彼の良い面」を探す必要があるわけです。
これまでは、ディオニスの”悪くない部分”を探すことに抵抗を感じる生徒が多かったのですが、
今年は「ディオニスは悪い王だと断言できないよね」と考える生徒が多く、驚きました。
「人殺しだから悪いに決まってる」という単純な結論ではなく、
「彼の言い分も正しい部分がある」と考えられる生徒が増えていたんです。
この変化は、時代の影響なのか、彼らが普段触れているゲーム・アニメ・本の影響なのか……
いろいろ考えさせられました。
また、毎年「先生、肯定派じゃなくて否定派に回ってもいいですか?」というお願いが多く、
やはり生徒にとっては難しい取り組みなのでしょう。
**「物事を両面から見る」**という狙いが生徒に届いているのかは不安です。
単元の振り返りとして「学びの足跡」を書いてもらう予定ですが、
果たしてどんな言葉が返ってくるのか……楽しみでもあり、少し怖くもあります。
最後まで読んでくださってありがとうございました。