都築郷士 ちよつとはみだ詩・❲六弐❳ 附・詩人の為の(秋冬)ワードローブ集
松風を吐き出す月の光りかな 井月
井月さんの幻想句は奥深い。恐らく路上生活者として「本物」の暗闇を知つてゐるからだらうと思ふ。その事、この句に顕著である。折に触れて新たな発見をしたい、そんな井月ワールドである。
【短詩】
こゝ熊野山かつてゐた猿たちが剽げたところ秋の雨にも
※
臀ポケットのウイスキー我が血に巡り作る
※
フィットしたジーンズやらしい新カップル
※
をばちやまは東歐スパイと云ふエンタメ小説が語る中産階級
(©都築郷士)
【ウォーキング·オン·ア·ドリーム】
リーボックのウォーキング·シューズ
茶色のウォーキング·シューズ
¥700-で中古を。
殆ど瑕疵らしいところはないし、
ちよつと變な私の趾のかたちにも
フィットするし。
まだ卸してない、その心理
分かる?
¥700-は私にとつて大金なのだ、
人が(いくらほんの少しとは言へ)
履いた物を後生大事に..
よき履き具合の靴は夢である。- ラ=ロシュフコオ (大嘘、然し..)
©都築郷士
【錐で開けた穴に灯りを】
黒いラッピングペーパー
拡げて これ天地創造の前ね
そして錐でぽつぽつと
恣意的に紙に穴穿つ
さて、準備はできた
夜になつたらその用紙の向かう側に立ち
灯り、灯したまへ
これがわたくし達の棲む
銀河 - とオチがつく
そのユーモアは
温かい。
©都築郷士
【虚言箴言】
果物らしい果物の味成分には、先天的なえぐみも含まれる。果物好きはえぐみ好きなのだ。- ラ=ロシュフコオ (大嘘)
これには解説は不要だらう。贋ラ公は或る人間のタイプを、果物好きにかこつけて描いてゐるのだ。
【今夜の金ぼし】
縄を綯ひ伏線とするDIY
(©都築郷士)
罠を拵へるにしても、その罠自体自家製のものなのだ。例へば傾城を使つて仕掛けるトラップ、傾城になれなれと育て上げた自家の娘だつたりする。(自註)
家の虫つまんで窓より棄てるがよし余計な殺生するが愚かし
(©都築郷士)
どん疲れpt.2と言つたところである。
愛と憎しみ、なのである。
必ずしも最後に愛は勝たない。
......
ぢやまた。アデュー。
屁で温むズボン数あれ軍パンなり
(©都築郷士)オマケ!