【どうする家康】BLか否か。岡田信長の耳噛み攻撃は「あほたわけ」へのアンサー?長政に付きたくなるのも“のび太”なら仕方ない⁉第15回「姉川でどうする!」深掘り
NHK大河ドラマ『どうする家康』(以下、『どう康』)第15回の深掘り感想です。
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前回の感想はこちら↓
(※以下、ネタバレ注意)
(※本記事のセリフの引用箇所は一部ノベライズに準拠しており、ドラマのセリフとは異なる場合がございます)
●耳噛み2度!岡田信長の「耳噛み」に込められたメッセージとは。「BL」と読むのはアリ?ナシ?
やりやがった!やりやがったよ……完全にBLだよ⁉
……遅くなりましたが、今週2回目の『どう康』レビューですけれども。何がやりやがったって、岡田信長、2度にもわたる松本家康への耳噛み攻撃ですよ。
別に今に始まったことじゃないですけど、今まではまだ「俺の白兎」だなんて匂わせ程度のセリフがあるだけだったのが、僕も第15回の初回では「『もうヤリたい放題』だってSNSでも荒れるんじゃ」とヒヤヒヤしながら見てました。もちろん、個人的には爆笑してたんですけどw「ジャニーズ同士でとんでもない演技やらせるやん」みたいな。しかもNHKだよ。なんてスケベなドラマなんだ。(※褒めてる)
耳を噛むなんていう仕草は、それこそ男女関係でいえばそのまま性行為にシフトしてしまうくらいエロティックな表現なのですが……いわゆる性感帯なわけですから。
けどね、言うて信長と家康、あくまで男同士ですからね。「耳噛み」というシーンがあってSNSがザワついたとしても、あくまでそれ以上でもそれ以下でもなかった。そこから接吻に行きつくようなことがあればもう大変ですがw
それに「男が男の体に噛みつく」シーンと言えば、『鎌倉殿の13人』でもありましたね。最終回で後鳥羽上皇(演:尾上松也)が隠岐島へ流罪となるシーンで文覚(演:市川猿之助)が出てきて、禿げあがった上皇の頭にガブリと。あれは完全にギャグだったし、やっぱり「やりたい放題」なんて話題になりましたけど。
だから、たとえ信長から家康への「耳噛み」という行為があったとしても、それを「BL」に結びつけるのは……まだギリ、違うんじゃないかな。限りなくレッドゾーンには近づいた感じはしますがw
そもそも第2回でも、信長と家康(※当時は竹千代)の関係性を示すのに「兎と狼」なんてタイトルも付いていましたし。それを思うと今回の「耳噛み」のシーンだって、「長い耳の兎を、狼が獲物として食う」ことの比喩として表現しているように見えんこともなかった。少なくとも「エロティック」ではまったくなく、恐怖感あるシーンとして描かれていましたね。
けれどもそんな「何かの象徴」とか「何かの比喩」なんて考えすぎる必要もなかったんじゃないか?ということを、俳優・檜尾健太さんが動画で解説されていました。
もう、シンプルにこれは「脅し」だと。ただ、これまでは「耳元でささやいて脅す」というやり方だったのが、家康くん自身もちょっとずつ成長して単なるビビリではなくなってきてるわけですから。しかも第14回では、信長に対して2度も「あほたわけ!」なんて暴言を吐いてましたもんね。
そうやってだんだん信長に対して言うことを聞かなくなりつつある家康に対して、「より強い脅しをしかけている」のがこの耳噛み攻撃だった。いわば2回に及ぶ家康の「あほたわけ」への、信長からのアンサーとしても捉えられるのでは?と思うんですね。まぁ、純粋に怖いですよ。これに従わなかったらどうなるか、恐怖しかないです。
ただYoutube解説の檜尾さんもご指摘の通り、やっぱり信長自身にも、本人が気づいているかどうかにかかわらず「家康が好き!」という気持ちがあるんだと思います。それが「恋愛感情」とは限らないわけですけど。信長にとっては、家康が幼いころから面倒見てやっていたという経緯もあるわけですし。まぁ、ほぼイジメだったけどな、アレは……。
それにドラマでは語られていない部分にはなってしまいますが、信長くんって、父親が死んだ際に自分の実の弟と家督争いをしてるんです。その結果、弟を死に追いやってしまった。
実の弟は信長に従ってくれず、結果、死別することになってしまった。だからこそ、これまで従順に従っていた家康が、弟のように可愛い。その反面、また実弟や、義弟の浅井長政がそうだったように、家康も信長を裏切るのではないか。それが怖い。家康の気持ちだけはつなぎとめておきたい。それが「脅し」という行為に結びついてしまうのは、不器用な信長らしいとも感じてしまいます。
もちろん、それから踏み込んで「耳噛みは何かの象徴」と捉えるのも個人の自由ではあると思います。「BLとして楽しみたい」人はそれも結構。ただ「BL要素を取り入れた気持ちの悪い演出」と批判してしまうのは、それはちょっと違う気がします。象徴的なだけでなく、ちゃんとドラマの流れ的にも意味のあるシーンだったと思いますし、何より今回の物語で特に大きなインパクトを残しました。まじで怖いよ信長。
そして今後、信長と家康の関係性というものがどう変わっていくのかについても、改めて注目ですよね。
●『ドラえもん』なら、やっぱり信長ジャイアンより出木杉長政を選びたくなるのも納得⁉一方、ドラえもんは……?
一方、家康。「家康が好きだ!」という信長の気持ちを、家康自身には分かるはずがないし、もう裏切りたいとさえ思っている。けれど国を守るために、そしてこれからの世を生き抜いていくためには、信長には従わざるを得ない」という状況も見せてしまいました。ここも第3回のリフレインに感じてしまうような流れなんですけど。
そもそも何で家康は、1回しか会ったことのない長政を信じようとしたのか。「浅井殿が好きだからじゃ!」なんてことまで言ってましたけど。そう言えば前回、僕、初心者の方にもキャラの関係性がわかりやすいように『ドラえもん』にキャラを例えたじゃないですか。
あれの繰り返しになるんですけど、結局、「のび太」な家康にとってみれば信長は「ジャイアン」なんですよ。そして長政は、信長から紹介されたときには自分と立場の近い相手でありながら、まるで「出木杉」みたいに聡明な人物として家康の目には映ってました。
しかし今や長政が裏切り、運命を分かつ存在。自分はいまだにジャイアン信長に従いながらも、相変わらず怖いですし、もういつまで言いなりになればいいのやら、正直嫌気も差してるんです。
そんな時、急に出木杉長政から「のび太くん、僕と一緒にジャイアンを倒そうよ!」なんて手紙が送られてきたら、のび太家康も「そうだな……出木杉と組んだら勝てるかも!やっちまえ!」なんて気持ちになっちゃいそうです。
でも、そこで家康が「長政につく」と判断を口にしたときの、家臣たちの反応ですよね。止めてくれたのは左衛門尉、数正の2人でした。血気盛んな平八郎や、殿に従順な彦右衛門と違って、左衛門尉と数正の2人には「いまジャイアン信長を裏切ったらどうなるか」が見えてるのよ。
「信長に義はない」と家康が言い、左衛門尉が「義とは何でござる?」なんて返した際には、「お前には学がないからなあ」なんてバカにされてしまいましたけど。殿が今川義元の人質として教養を身に付けていた際、左衛門尉は岡崎にいて、家臣たちをまとめ上げていました。確かに学はありませんが、左衛門尉には「岡崎を守るための正しい選択」がわかっているんです。
そして、人質時代から今川領で共に、殿を支え続けてきた数正もですね。彼も第3回では「お前は情がうすいからな!」なんて殿から文句を言われていましたけど、その分、物事を冷静に判断できる力がある。
2人とも、それぞれ欠けたところはありますし、出木杉長政ほど大局を見れる力はありません。けれどのび太家康が、いま何をすべきか、どう導けばいいかということならわかる。言ってみれば、2人合わせて「ドラえもん」の役割を担っているわけです。
これに気づいたとき、やっぱり古沢さんが『どう康』で描いているものって、『ドラえもん』なんじゃないかなとピーンときましたね。少なくとも第13回~15回の展開を見る限りにおいては、これまで述べてきたように、きれいになぞられちゃう部分が出てくるんですよ。
そして思い返せば、かつては平八郎が、本多正信が、鳥居忠吉の爺さんが、家臣たちが交互に「ドラえもん」の役周りを演じて殿を導いてきたように思えます。今回は左衛門尉と数正が、また第3回に続いていい役回りを演じてくれましたね。
『どう康』という作品は、バカで泣き虫なのび太家康くんが、ドラえもんである家臣達に導かれて天下を勝ち取っていく物語であると。これも一つの鑑賞ポイントである気がします。もちろん4次元ポケットもなければ秘密道具もありませんし、何か大きな戦が起きれば家臣達総掛かりで泥臭く戦っていくしかないんですけどね。
●後の家康を作っていく人々は他にも。藤吉郎&瀬名が家康に受け継がせたもの
ところで、家康を導くのは家臣達だけではありません。今回は木下藤吉郎が、姉川でなかなか動かない家康の尻を叩くために、仲間でありながら陣営に銃を打ち込んだりしていましたね。これ、大河ファンなら「ハハァン」ときたかと思うんですけど、この先の1600年、天下分け目の「関ヶ原の戦い」にて、家康が、なかなか動こうとしない敵軍の小早川秀秋を自分の軍勢に引き込むため、砲弾を撃ち込んだという逸話があります。ひょっとしたらこれの伏線だったのでは、と。
そもそも今の家康が、いくら将来的な話とは言え、「関ヶ原」で小早川秀秋相手に砲弾を撃ち込めるのか。そんな発想すら出てこない気がするんですけれども、この第15回のシーンで藤吉郎が行ったことから学んだ、という風にすれば、自然な流れが作れます。
そう言えば第9回「守るべきもの」では、戦後処理として本證寺など一向宗の寺を打ち壊しにする決定を行っていましたね。これは史実だとされているものの、ドラマの家康の性格からしたら、そんな決定を下すなんて考えられないんですよ。そこを本多正信のアイディアだとしたのには納得でしたし。
まぁ、「関ヶ原」における小早川秀秋への問鉄砲については、一次資料には載っていない、江戸時代以降の創作ということも言われています。これが描けないから、代わりに姉川のエピソードとして今回のドラマに盛り込んだという可能性もありますし。どちらにしても今回、「どうする?どうする?」となっている姉川の戦況をより緊張感あるものにするため、いい仕事してましたよね、藤吉郎。
そしてこの後の未来の家康を姿を想像させる要素としては、瀬名も、これから浜松へ単身赴任することになる家康に「これからはご自分でお薬を煎じられるようになりませんとね」なんて、薬の調合方法を伝授していました。こちらも史実として伝えられている家康の趣味になっていくわけですけれど、ドラマとして「ここで瀬名から教えられたもの」として描かれるのはなるほどと思いましたね。
こうしていろんな出来事を通して、一般的に広く知られる「徳川家康」が形作られていくのかと思うと、描き方としては物凄く丁寧ですし、さすが主人公だなという印象も受けます。
本当、少しずつだけど魅力的になっていっていると思うんですよ、家康くん。これから狸オヤジと呼ばれるような存在になっていくのだとしても、こうした過去が描かれた上で変わっていくのであれば、また老後の描かれ方にも違った印象が出てくるでしょうね。
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