これからのグローバル人材採用で日本企業に必要な戦略。日本在住外国人が考えてみた
企業ーー特にIT関連分野では人材の採用が難しくなっていますが、必ずしも人材不足だけが理由ではありません。
例えば米国などでは、企業が採用に苦労する一方で、大量の人が離職する「the Great Resignation」(大退職時代) が起きています。日本でも同様の傾向が見られてきています。
企業が、必要とするグローバルに活躍できる人材を獲得するためには、何が必要なのでしょうか?日本在住外国人である私自身の視点から考えてみます。
働き方の変化の実態
☑️ 働く人:住む場所・働く場所、雇用形態などの柔軟性を企業に求めるように
☑️ 雇用主:「決まった時間・決まったオフィスで働くこと」を中心に、ビジネスの進め方の再構築の必要に迫られている
→これは、危機?それともチャンス?
多くの人が今、自分の生き方を振り返り、より多くの選択肢を持っていることに気づいています。
人材採用は、以前からデジタル化、グローバル化の傾向にありましたが、ご存知のとおりCovid-19がこのシフトを加速させました。一部のテック企業のみで取り入れられていたハイブリッドな働き方がテック、法律、教育など様々な分野で主流となり、人々は柔軟性を期待するようになったのです。
このため、多くの企業はビジネスの進め方を再構築する必要に迫られています。たとえば、「決まった時間・決まった場所で働くこと」が、時代にそぐわなくなってきたからです。
企業の採用活動は、より複雑になりました。しかし、同時にチャンスでもあります。
企業は、より多くの、よりグローバルな人材プールを柔軟に活用することができるようになった、とも言えるからです。
具体的な例を挙げましょう。会社StripeのCEOであるPatrick Collisonさんは、ここ数年で非地域雇用が、約2倍になったとツイートしています。
"2019年第1四半期、Stripeの採用の39%はサンフランシスコとシアトル地域以外でした。前四半期は74%でした。テック業界のグローバル化のスピードはまだまだ過小評価されており、今後10年間は世界にとって大きな追い風になると考えています。"
その後、AirbnbのCEOであるBrian Cheskyさんがリプライで同意の意を表明しました:
"今は、インターネット(どこでもある)が居場所だと感じていますね。この流れは加速する一方だと思います。"
Cheskyさんはその後、最近の宿泊予約のデータが、人々のライフスタイルや仕事が1つの場所に住むことに縛られない「生活の分散化」につながる傾向を示唆していること、そして「こうしたリモートで働く人材を獲得する」ための競争が激化することをTwitterのスレッドで紹介しました。
今後、企業が人材を獲得するために必要なことは何でしょうか?
答えは一つではありませんが、企業は「適応性」、「福利厚生の提供」、「採用マーケティング」に重点を置くべきです。
・「適応性」とは、雇用主側がどれだけ柔軟に、従業員一人ひとりのニーズに合わせられるか、です。従業員を一人の人間として扱う能力が必要となります。
外国人目線で見ると特に、日本企業には適応力がない、過去のやり方を優先するイメージがあります。例えば、和歌山の消防士がYouTubeでゲームチャンネルを開設していたために給料が差し引かれたニュースには時代遅れの考え方だと厳しい批判も寄せられていました。
・「福利厚生の提供 」とは、その人の仕事、経験、スキルに対して何が提供されているか、です。
特に日本企業の多くは、優秀な人材の獲得を優先する代わりに、「現地の人材を安く雇って一から育成していく」モデルをとっているので、この問題は深刻です。
そのせいもあって、日本企業のIT関連職の給与は欧米企業の1/2か、時にはそれ以下であることもあります。
“日本のソフトウエア会社に就職した香港出身のユーニス・ユン・インユエさんの両親は、「日本の給料は安いでしょ?」と心配していた。”
「安い日本:テック系労働者の低賃金が外資系企業を喜ばせている」
- Nikkei Asia
もちろんこれは大きな問題ですが、多くの外国人は日本に魅力を感じ、日本で生活したいと思っていることも事実です。そこで、
・「採用マーケティング」が重要になります。雇用主としての自社をどう売り込むか?という観点です。
トップクラスの企業にはかなわないかもしれませんが、柔軟性や福利厚生、職場文化全般の向上に真摯に取り組んでいる独自性が「伝わるように」します。
そのためには「エンプロイヤーブランド」を構築する必要があり、長期的に採用競争力を高めることにつながるので、ここではこの点に焦点を当てます。
エンプロイヤーブランドとは?
Wikipediaの簡単な説明を見てみましょう:
エンプロイヤーブランドとは、一般的な企業ブランドの評判やイメージではなく、働く場所としての企業の評判・イメージや従業員に対する提供価値のことを指します。
企業の評判は、ネット上のコミュニケーションによって築かれることが多く、そのため、企業のウェブサイトには、採用に関するページが設けられていることが多いようです。
しかし、製品やサービスのデジタルマーケティングと同様に、ウェブサイトの訪問はカスタマージャーニーの少し下流で行われることが多いのです。また、ウェブサイトよりSNS上で調べるケースも増えています。
多くの企業は、「人材獲得ファネル」の最上位フェーズを無視し、人材検索と採用に多くの費用を支払ってしまっています。
エンプロイヤーブランドの確立は、より多くの求人問い合わせを受け、国内の枠を越えてグローバルな人材を獲得し、全体としてより効率的な採用を実現することにつながるので、企業はエンプロイヤーブランドの確立にもっと力を入れるべきです。
日本の人気YouTuberのDiscordサーバーで、日本での生活と仕事に関する最近のディスカッションがこちらです:
「アメリカの会社で働けば、たいてい給料はもっといい」
「そう、そこが肝心だ。
外資系の会社から内定をもらえば、それで最高」
「正直なところ、自分が求めている業界のアメリカ企業を見つけることができれば、そちらの方が楽しく働ける可能性が高いですからね。(日本企業に比べて)アメリカ企業はよりリラックスした環境で、たいてい福利厚生も充実しているし、もちろん給料もより高い。」
「そう、日本に住みながらアメリカの会社で働くという、両方の良いとこ取りをしたい」
グローバル人材との協働に真摯に取り組んでいる日本企業については、「典型的な日本企業とは違う!」ということが、伝わるようにするべきです。
次の記事では具体的に、「エンプロイヤーブランド」構築のためにするべきこと、メリットなどを自社での採用問合せが+400%増加した事例も踏まえながら、考察していきます。
編集:佐藤佳穂
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