メンタルの不調は身体にどんな影響がある?起こりやすい症状と対処法
職場・家庭でうまくいかないことがあったり、忙しい日が続いたりしたとき、ふと「なんだか体調が悪いな…」と感じたことはありませんか?
「単純に身体が疲れている」という場合もあるでしょう。けれども、精神的な疲労・ストレスから身体症状が現れることも多いです。
体調は心の状態を表す指標です。メンタルが落ちている自覚がなくても、身体の不調から心の疲れに気づけることもあります。適応障害やうつ病に進行しないためにも、早めの対処が必要です。
今回は、メンタル不調のときに起こりやすい身体症状と対処法をお話しします。
心の不調によって起こりやすい体調不良
メンタルの不調は、さまざまな体調不良として現れます。
頭痛・めまい・微熱
腹痛・下痢・便秘・お腹の張り・吐き気
喉がつまっているように感じる・手足がしびれる・倦怠感・疲労感
肩こり・むくみ・動悸・じんましん
頭痛や微熱・倦怠感があれば、「風邪かな?」と感じますよね。お腹の症状だと「食べ物にあたったかな」と思う方も多いでしょう。
上に挙げた症状は、身体不調としてごく一般的に見られるものです。これらの症状が出ても、「メンタルが不調なんだ」と簡単には判断できません。すぐに結論づけるのはむしろ危険でもあります。
メンタル不調が原因の身体症状を見分けるポイント
風邪やウイルス性の腹痛のような身体の病気と、精神的な疲労から来る身体症状を見分けるにはどうしたらよいでしょうか?筆者が考えるポイントは2つあります。
1つは「症状の原因に心当たりがあるかどうか」です。
寒暖差が激しい日に頭痛や微熱を感じたら「風邪をひいたな」と思いますよね。デスクワークが続いて運動不足であれば、肩こりや便秘の説明がつきます。このような要因が特に思い浮かばない場合、「メンタルが疲れてるのかな」と考えてみるのがおすすめです。
また、「別の症状が同時に表れていないか」もポイントです。不調を感じる部分がいくつもある場合や、次にお話しするような「身体の違和感」がある場合にもメンタルが疲れている可能性を考えてみてください。
体調不良以外の身体に出る影響
周囲の音や匂い・光などの刺激に敏感になる
精神的なストレスや疲れがたまると、いつもより周りの音がうるさく感じたり、光がまぶしく感じたりすることがあります。「疲れているときには、子どもたちの声すら耳障り…」「時計がチクタク動く音が妙に気になる」など、誰もが1度は経験しているのではないでしょうか。
視覚・聴覚など「五感」が敏感になっている状態を「感覚過敏」といいます。上に挙げた例のほかに、このようなものもあります。
香水や体臭など、様々な匂いがする電車で気持ち悪くなってしまう
真っ白の紙(コピー用紙や本のページなど)がまぶしい
パソコン・スマートフォンを使った後に、いつもより疲れている
「カンカン」「コツコツ」など、何かを叩く音が耳に刺さるように感じる
洋服のタグが気になる
辛味や苦み、または濃い味の食べ物を受けつけなくなった
「今まであまり気になったことがないのに、気になって仕方ない」というときは、「少し疲れているのかな?」と考えてみてください。
食欲がわかない、または食べすぎてしまう
心配事や悩みがあると食欲がわかない方も多いでしょう。もしくは逆に、無我夢中で食べてしまったという人も少なくないはずです。
メンタルが不調に陥ると、食生活に問題が起こりやすいです。食欲不振や過食のように食べる量が増減することもあるし、スイーツや辛い食べ物、コーヒー、アルコールなど嗜好品・刺激物を過剰に食べたくなる人もいるでしょう。
先ほど「感覚過敏」のお話をしましたが、逆に感じにくくなる「感覚鈍麻」という状態もあります。特に味覚・嗅覚で起こりやすく、「食べても味がしない」「匂いがよくわからない」という状態です。
敏感になるのも鈍感になるのも、どちらも「感覚の異常」といえます。心が疲れると、感覚や食欲・その他の欲求に「異常が表れる」と考えてください。
うまく眠れない、または眠りすぎてしまう
心が疲れていると、睡眠にも影響が起こります。「心配事が気になって眠れない」という状態は、ほとんどの人に覚えがあるでしょう。布団に入ってもなかなか眠れない「入眠困難」は、不眠の症状の中で最も多いものです。
眠りについても夜中に目覚めてしまう「中途覚醒」も起こりやすいです。「夜中に何回も目覚める」「夜中に目覚めて眠れなくなる」など、症状に個人差があります。
身近な高齢者から「朝早く目が覚めちゃって…」と聞いたことはありませんか?「早朝覚醒」は高齢になるにつれて起こりやすい症状ですが、うつ病の方にも多いです。
メンタル不調のときには、これらの症状とは逆に「眠りすぎてしまう・いつまでも眠い」という方もいます。毎日しっかり眠っているのにも関わらず、日中にも強い眠気がある状態を「過眠」、頻繁に居眠りをしてしまう状態を「傾眠傾向」といいます。
過眠・傾眠は、単純に心身が疲れているという場合も多いですが「眠ることでストレス要因から逃げている」パターンもあります。「よく眠るのはいいこと!」とはいいますが、過眠・傾眠の場合は病院の受診を検討しましょう。
早めに取り組んでほしい対処法5つ
じっくり休養をとる・睡眠の質を上げる
「メンタル不調かな?」という症状が表れたら、まずはできるだけ休養をとりましょう。丸1日何も予定を入れず気ままに過ごしたり、整体・マッサージなどリラクゼーションを受けたりすると、硬くなった心身も少しずつほぐれてきます。仕事に余裕があれば、半休をとってみるのもおすすめです。
忙しい時期であれば、睡眠の質を上げるグッズ・習慣を取り入れてみましょう。
「寝具の肌触り・寝心地にこだわってみる」「寝る前にストレッチをしてみる」など、よい睡眠を得る方法はたくさんあります。ラベンダーのように眠りに誘う効果があるアロマオイルを使ったり、CDやYouTubeで「睡眠導入」の音楽を聴いてみたり、ご自分にぴったりの方法を見つけてみてください。
不調の原因から距離をとってみる
ストレスの原因が分かるときは、いったん離れてみましょう。物理的に離れることができれば1番よいですが、「あまり考えないようにする」「シンプルに事実だけとらえる」など心の距離をとるのもおすすめです。
例えば職場に苦手な人がいる場合、「会話は必要最低限のみ」「少し離れた場所をキープする」などで物理的距離がとれます。
けれども頻繁に話さなければいけない関係だと、なかなか難しいですよね。そのような場合は「イメージ」を使って自分の心をガードしてみましょう。
例えば、相手との間にペンケースなどを置くと「壁」が作れます。物理的には脆弱ですが、自分で「壁」を置くことで心の中にイマジナリーな壁ができる、という方法です。ぜひ1度試してみてください。
「小さな気分転換」を試してみる
メンタルの調子を上げるためにも、気分転換や趣味は大切です。この機会に、今までやったことがないことにチャレンジするのはいかがでしょうか。
とはいえ、心身が不調なときに何かにチャレンジするのは億劫ですよね。次の例のように、思い立ったときにすぐできる小さなことをやってみましょう。
見たことがないジャンルのテレビ番組・YouTubeを見てみる
2つ隣の駅で降りて散策してみる
知らない料理を作ってみる
「全然面白くなかった…」と思うかもしれませんが、それも新しい発見です。「意外と楽しめたらラッキー」と考えて、小さなチャレンジを繰り返してみましょう。
病院・クリニックを受診する
心身の不調が気になって仕方がないときは、病院の受診も検討してください。「どの診療科に行けばいいの?」と悩んだら、まずは内科・整形外科など身体の症状を診る病院に行きましょう。
先ほど、身体の病気とメンタル不調からくる身体症状を見分けるポイントをお話ししました。けれども、身体的な病気が発覚する可能性もありますよね。「ストレスから来る症状かなぁ」と思っても、まずは該当する診療科を受診してください。
メンタルを診察する診療科には「心療内科」と「精神科」の2つがあります。このうち「精神科」では主に心の問題を扱うのですが、心に関わる身体的問題を「内科医」が診察するのが「心療内科」です。身体に不調が表れている場合は、内科症状も診てもらえる心療内科の受診を検討してください。
カウンセリングを受けてみる
はっきりとした精神的なストレスがある場合や、憂鬱な気持ち・無気力・投げやりなどメンタル不調も表れているときにはカウンセリングを受けるのもおすすめです。
臨床心理士・公認心理師には、カウンセリングの内容を誰にも漏らさない「守秘義務」があります。周囲の人に話せない悩みもカウンセラーには聞いてもらえるし、心理学的な見地からアドバイスがもらえることもあるでしょう。
身近にカウンセリングルームがなくても、最近はオンラインでカウンセリングを受けられます。夜に高まりやすい憂鬱な気持ち・不安にも、24時間いつでも対応してくれるカウンセリングサービスもあります。辛いときには、ぜひ思い出してみてください。
まとめ
メンタルの不調が身体に起こす影響や、その対処法をお話ししました。
今、まさにそのような不調に悩まされている方もいることと思います。この記事を読んで納得された方もいるでしょうが、「私の症状は当てはまらない…」と感じた方もいるかもしれません。
当てはまらないから不調ではないのか、というとそうではありません。ご自分が辛さ・苦しさを感じているのなら、それは不調です。試せる方法は試して、頼れる人・サービスにはしっかり頼って、ご自分の心身に丁寧に対応していきましょう。