【ブックレビュー】永遠の仔
久しぶりに長編小説を読んだ。
文庫本で5冊分、なかなかのボリュームであった。
1999年発表、
天童荒太『永遠の仔』
25年も前になる本作を、先月私は手に取った。
4月から働いている職場の人に借りたものだ。
誰かから本を借りて読むなんて、思えば何年振りのことだろう。
本を貸すというのは、それなりの関係性が必要だ。もしくは関係性を深めるための行為とも言えよう。
自分が好きな(良いと思える)ものを相手に薦める。その心遣いが嬉しいものだ。
本に限らず、相手が薦めてくれたものを極力私は鑑賞するようにしている。
以前の職場は若い子が多かったので、彼らの薦めるアニメをよく観た。自分に合うもの合わないものもあったが、おかげでアニメには少し詳しくなった。そのうち記事にするかもしれない。
今回この本を貸してくれた人は日本の小説を好んで読んでいるとのことで、お返しに海外作家のものを貸そうと思ったが「おそらく読まない」と断られた。
ならば、エッセイなんかはいかがかと岸本佐知子さんの本を持っていった。
前置きが長くなってしまったが、本題に戻ろう。
さて、本作『永遠の仔』であるが、昔テレビドラマ化されていることもあり(観てはいないが)タイトルは知っていた。
原作の天童荒太さんの作品を今回初めて読んでみて、面白かったのでその感想を書きたい。なるべくネタバレはないようにします。
あらすじ
児童虐待というテーマを扱っているので基本的には重い内容なのだが、スラスラと読み進められたのは主人公3人のキャラクターが魅力的だったというのがある。個人的には脇のサブキャラクターまでしっかり、丁寧に描いているという印象だった。
加えて、幼少期(1979年)と現在(1997年)を行き来するという構成も王道ではあるが効果的であった。
現在で起こる殺人事件は(個人的には死者を何人も作り過ぎる過剰演出だった気もするが)謎を知りたいとページをめくる推進力になっていたし、過去では3人の絆が深まっていく様子が読めて胸が熱くなった。
虐待というテーマで思い出した作品がある。
角田光代さんの『坂の途中の家』だ。
この『坂の途中の家』は、乳児を虐待死させた事件の裁判、その補充裁判員に主婦である主人公が選ばれる。子供を殺した母親の証言にふれるうちに、被告人である彼女の境遇と自分を重ね合わせるという物語だった。
母親視点のこの物語では、虐待というのは必ずしも特別な家で起こるものではなく、自分だって加害者になり得るといったものが描かれていた。
『永遠の仔』では子供視点で描かれており、被害者は親と離れたから終わりではない。大人になっても傷は癒えないということが描かれている。
ハッピーエンドとは言えないラストではあったが、全てに絶望するような悲しさではなかった。
葛藤しながら傷を抱え生きるということ、誰かを求め支え合うことを望むこと、その中で起こるすれ違い。真実を知るということ。様々なことを背負いながら生きている登場人物、そして我々にとって、最後の台詞こそが全てであったから。