バラクーダ

さよならするまで遊ぼうよ。

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マガジン

  • エッセイ集

    思ったことや、考えたこと。バラクーダの頭の中。

  • 重要文化財

    何度も読み返したい、スキ以上の記事たち。

  • 【本】について

    本の紹介、本についての記事をまとめました。

  • バラクーダの創作

    私の愛を込めた物語たちの保管庫。

  • 【料理】を考える

    様々な料理について考えてみました。

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私が好きなSF小説 5選

こんな話を聞いた。 ビジネスマンが、男に尋ねる。 「本は読むかい?」 「まぁ、多少は」男が答える。 「どういうのを読む?」 「小説ですかね、主にSFとか」 ビジネスマンは自分の仕事に誇りを持っている。 今、世界の経済に自分は最先端の場所で関わっていることを。 それこそがビジネスマンのアイデンティティであり、全てであった。 「小説って、それを読んで何になるの?」 「何になるって、どういう意味?」男は訊ねる。 「いや、だって小説って作り話でしょ? この世にない架空の話でしょ

    • 【エッセイ】得手不得手を考えて、やがてその手で描き上げて

      「この真っ白なキャンバスに好きな絵を描いていいですよ」と言われても、おそらく私は躊躇する。  まず、何を描いていいか分からないというのが率直な意見だ。それに絵を描きたいという衝動がない。根底にあるのは、私が絵を描くのが苦手ということだろう。  これが仕事なり半強制的に「絵を描かなくてはならない」状況なら、気乗りはしないが描くだろう。そのためには相手(クライアント)の要望を聞き、おそらく満足はしてもらえないと踏みながらも、出来るだけ要望に近づけるように努力はすると思う。  仮

      • 【ブックレビュー】ツミデミック

         初めての作家さんの作品を読む時は期待感が膨らむ。どんな文体、どんなストーリーなんだろう。自分の感性と合うだろうか、はたまた違う価値観(世界観)で揺さぶってくるのだろうかと。  初めて家に招待された時のような心持ちで「お邪魔します」とページを開く。  小説の場合、だいたい3ページも読めば分かる。分かると言うのは、好きな文章のリズムだなとか、面白そうだなという予感が。  一穂ミチさんの作品はこの『ツミデミック』が初めてだった。今年の上半期、直木賞受賞作ということでクオリティは

        • 【エッセイ】酒と泪と破滅願望

           あれだけ好きだったお酒を普段飲まなくなった。  最近ではたまに飲んでもすぐに酔っ払ってしまう。おそらく内臓系がすでにいかれているのだろう。怖くて検査などはしたことがないが、日常的にお酒を抜いていればいずれ回復するだろうと楽観的でいる。  そもそも若い頃、なんであんなに毎日飲んでいたのか。お酒の味が好き、酔っ払う感覚が好きというのもあるが、お酒の場が好きだったのだろう。それは今も好きだ。誰かと熱く、そしてゆるく語ってみたり。みんなでワイワイしてみたり。 『飲みニケーショ

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        私が好きなSF小説 5選

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        • エッセイ集
          30本
        • 重要文化財
          33本
        • 【本】について
          27本
        • バラクーダの創作
          22本
        • 【料理】を考える
          14本

        記事

          人生とは居場所作りである。

           人生とは〇〇だ。  愛とは△△だ。  人生や愛を語る名言は古今東西数多とあるが、私は基本的にそんな名言が嫌いではない。  そんな大きなものを一言では語れないだろうと思わなくもないが、その見方をすれば言えなくもないと思うからだ。  似たような理由で、広告コピーやキャッチフレーズも好きだ。  シンプルなものの心地よさ、言い切ることの気持ちよさがあるからかも知れない。  そんな訳で、最近ふと思ったことを大袈裟なタイトルにしてみた。  人は常に、いや、ここでは主語を大きくしな

          人生とは居場所作りである。

          忙しいのにアンニュイ #青ブラ文学部

          久しぶりにこちらの企画に参加させていただきます。 宜しくお願いします!  壁に叩きつけられたピザを眺めるような死んだ目で時計を確認すると、あれからニ時間も経っていた。  相変わらず白紙のままの原稿。その前で途方に暮れていたら電話が鳴った。 「お疲れ様です。先生、ネームの方は順調ですか?」  担当編集の山口さんだ。 「ええ、今日中には終わると思います」終わる見込みはないけれど、いつものように返した。今までだってこんな綱渡りを続けてきたのだから。 「先生、あと三週で終わってしま

          忙しいのにアンニュイ #青ブラ文学部

          いつか人生を振り返る時が来る

           自分が若かった頃、例えば高校時代の休み時間。  誰かが冗談を言ったり、何気ない会話で笑い合ったり。教室の窓から差し込む光。好きな子のことを目で追ったり。  嗚呼、今この瞬間は、きっとかけがえのない時間なんだと思ったりしていた。いつか、この風景を思い出すという予感があった。  そして今、実際にそんな風景を思い出している。  仕事の場で出会った人々。  優しく指導してくれた人、厳しかった人。言い合いになったり対立した人。 「優しかった」とか「厳しかった」とか、一人の人間に対

          いつか人生を振り返る時が来る

          並行読書の日々

           毎日の読書は続いている。  疲れている時や、読んでも頭に入らなそうな時は数ページしか読めない日もあるが、連続読書の習慣は途切れていない。  基本的に寝る前に本を開くことが多い。今日は飲み会だから帰りはフラフラだろうなと思う日は行きの電車の中で読んだりと、それなりに工夫をしているつもりだ。  今までは一冊の本を読み切り、次の本を読み始めるという読み方だった。  いつからだろう。電子書籍(Kindle)に手を出した頃だろうか、何冊かの本を同時に読み進めるという習慣に変わってい

          並行読書の日々

          【ブックレビュー】そして誰もいなくなった

           ミステリの女王、アガサ・クリスティー  その代表作とも言える『そして誰もいなくなった』について書くのは緊張すらします。  ベストセラーどころではない、世界で一億部も売れた作品。それこそ世界中にファンがいる本作について、今さら私が語る余白などはないかも知れません。  例えばネット上でビートルズについて何かを書くと、世界中のマニアからツッコミや訂正が入るような、それに近いものを感じます。  優れた楽曲は他のアーティストにカバーされたりするものですが、世界一カバーされた楽曲はそ

          【ブックレビュー】そして誰もいなくなった

          【フードエッセイ】赤だしの味噌汁

           思い出に残る料理というのがある。  自分で料理を作るようになっても、当たり前だが人様の作る料理というのは美味しい。むしろ自分で作るようになったからこそ、美味しい料理と出会った時の感動というのが深くなった気もする。  旅先で、あるいはレストランで。時には知り合いのお店で数多くの料理と出会ってきたが、今回はその中でも忘れられない料理のひとつについて語りたい。 赤だしのしじみ汁  高校生の頃、スーパーの魚屋でアルバイトをしていた。  三枚おろしなんかを教わったりもしたが、魚に

          【フードエッセイ】赤だしの味噌汁

          失われたレモンを求めて #シロクマ文芸部

           レモンからオレンジ、そしてベルガモット。柑橘系の香水を彼女はよく使っていた。  匂いと記憶というのは密接な関係にある。嗅覚は大脳辺縁系と直接繋がっているため、特定の匂いが感情的な体験や記憶を呼び起こすことがあるらしい。  プルースト効果とも呼ばれるこの現象は、作家マルセル・プルーストの小説『失われた時を求めて』で描かれた、匂いによって過去の記憶が鮮明に蘇る場面から名付けられた。  まぁ、このうんちくも彼女から聞いたものだ。彼女は雑学とかこの手の話が好きで、よくお酒を飲みな

          失われたレモンを求めて #シロクマ文芸部

          【エッセイ】 また夏が終わる

           今年も夏が終わる。  今の会社ではまだ有給も取れず、旅行も行けなかったし、夏らしいことをひとつも出来ぬまま夏が終わろうとしている。  そんな八月の終わりに金曜ロードショーで『天空の城ラピュタ』を観た。普段からテレビはあまり見ないが、金曜ロードショーで映画を観るなんて何年ぶりだろう。  1986年、今から38年前のアニメ映画。  少年時代に観て心が躍った記憶があるが、今観ても完璧な映画だった。  少女が空から降ってくるというオープニングからすでに心を掴まれる。少年(パズー)

          【エッセイ】 また夏が終わる

          日本人作家のおすすめ短編小説 10選

          短編小説と長編小説、どちらが優れているかなどという議論はナンセンスです。 そこには切り口の違いがあり、どちらにもそれぞれの良さがあります。こんなこと読書好きの皆様に改めて言うほどのことではないのですが。 最近の私は、よく短編小説を読んでいます。 というのも、自分でも小説を書いてみるようになり、いきなり長編にチャレンジする度胸も技量もないので、まずは短編の小説を何作か執筆しました。 読むだけの頃はあまり意識しなかったのですが、実際に自分で書いてみるとまぁ難しい。プロの作家の方

          日本人作家のおすすめ短編小説 10選

          【ブックレビュー】永遠の仔

          久しぶりに長編小説を読んだ。 文庫本で5冊分、なかなかのボリュームであった。 1999年発表、 天童荒太『永遠の仔』 25年も前になる本作を、先月私は手に取った。 4月から働いている職場の人に借りたものだ。 誰かから本を借りて読むなんて、思えば何年振りのことだろう。 本を貸すというのは、それなりの関係性が必要だ。もしくは関係性を深めるための行為とも言えよう。 自分が好きな(良いと思える)ものを相手に薦める。その心遣いが嬉しいものだ。 本に限らず、相手が薦めてくれたものを

          【ブックレビュー】永遠の仔

          【祝!一周年】これまでを振り返ったり、これからを考えたり。

           本日8月5日、noteの一周年を迎えた。  細かいことを言えばその前からアカウントだけは取得して放置していたのだが、初投稿から一年なので本日を一周年としよう。  振り返ってみれば、ここで投稿を始めたのは自分が無職になったのがきっかけだった。それにより単純に時間ができたというのもある。同時に社会との接点を失い、不安定になった精神を落ち着かせるために何かを書きたくなったとも言えるし、現実逃避として始めたとも言えなくはない。  そもそも表現というのは、不安や不満であったり孤独

          【祝!一周年】これまでを振り返ったり、これからを考えたり。

          【フードエッセイ】得意料理は?と訊かれたら。

           長年、調理の仕事に就いていたせいか「得意料理は何ですか?」という質問をたまに受けることがある。その度に「色々と作ってきたけど、これが得意というのは特にないかな」とお茶を濁して特定の料理を答えた記憶はない。  それでも人によっては「その中でも自信のある料理はあるでしょ?」と食い下がってくる。そんな人には何か料理の一つでも答えれば満足してくれるのだろうと思うのだが、それでも「自信を持ってこれだと言える料理はないかな……」と答えてきたし、半分は本心でもあった。  質問者側に深い

          【フードエッセイ】得意料理は?と訊かれたら。