『傲慢と善良』第二部
『傲慢と善良』第一部から勢いのまま、一気読みしてしまいました。
今回は第二部について書いていきます。
概要
『傲慢と善良』は、2019年3月5日に朝日新聞出版より出版された小説です。著者は辻村深月さんで、2018年に『かがみの孤城』で本屋大賞を受賞されるなど、日本を代表する作家さんの一人です。
あらすじ
『傲慢と善良』の文庫本についてのあらすじは以下のとおりです。
今回は第二部を読んだので、概要や感想など、読んでいただけたら嬉しいです。
第二部の概要
第二部では、失踪後の真実の過ごした日々が中心に描かれています。
真実は、架の友人から自分のついた嘘のことを言及され、平常心を失ってしまいます。
更には架の友人からの心無い言葉に傷つき、悔しがり、架への愛を見失ってしまうのです。
その翌日、逃げるように家を出て、真実が向かった先はどこだったのか…
そして、どのような出会いがあったのか…
ラストの真実と架の決断まで、目が離せません。
第二部の感想※ネタバレがあります。
第一部のドロドロとした人間の悪い部分が見えてしまう展開とは異なり、第二部の登場人物全員がいい人で、温かい心を持っていて、安心して読み進められました。
始めは真美の嘘が架の女友達にバレて、苦しい状況からスタートしたのですが、後半はホッとするような、心温まる場面も多くみられました。
真実自身が持っている善良さと、第二部の登場人物の優しさと逞しさが全体の雰囲気を穏やかにさせているのだと感じました。
姿を消した真実はまず、単身実家のある前橋まで向かうのです。
その後は両親に頼らず、とあるボランティア会社に連絡をし、東北でボランティア活動を始めることになりました。
最初はあまりの急展開に驚きましたが、真実がボランティアに励み、夢中で活動を続けるのと同様、私もこの物語を読みながら、次第に真実の成長に夢中になっていくのを感じました。
ボランティア活動を通して出会う人達は皆、何かを失い、心に大きな傷を抱えながらも、前向きに活動に取り組んでいました。
そこには真実の過去や家族、学歴や仕事を気にする人はいませんでした。
そこで活動していくうちに、いつしか都会で暮らしていたときの息苦しさから開放されていて、楽に生きられるようになっていたのです。
そして数ヶ月が経った頃、架が東北まで迎えに来た際、再び架と結婚することを決意するのです。
読了後、ハッピーエンド、ちゃんちゃん、では終わらない多幸感が私の中に溢れてきました。
架は自分の傲慢さを受け止め、真実と向き合ったことで、真実への本当の気持ちに気づき、
真実は善良さを捨て、自分と向き合う時間を経て、架と生きていく選択をしました。
真実と架の諸々の話を聞いたある人に、
「あんだら、大恋愛なんだな」
と言われるまで、真実は架をどれだけ愛していたのか気づかなかったことも、面白い展開でした。
そして、真実が架を「鈍感な人」 と言ったように、架も真実のことを心から愛していて、それゆえに真実の嘘なんかどうでもよく感じて、とにかく真実の無事を願って探し続けていたのだろうと思います。
架、いい人やつだよ。
第一部と第二部のコントラストが素敵な展開で、最後まで読んでよかったなぁという気持ちにさせてくれました。
"ピンとこない"の正体とは
よく、「ピンとこない」という言葉を使うと思うのですが、その状態は何なのでしょうか。
架が真実を探している最中に結婚相談所で出会った小野里という人がこんなセリフを言っていました。
そしてこう続けました。
これを聞いて、人間の真の恐ろしさに触れた気がしました。
ピンとこない、とか、なかなかいい人がいない、と言っている人は、そもそもの自分につける点数が高く、その点数に釣り合うだけの人を見つけるのが難しい、ということなのでしょう。
私の親友はしばらくの間パートナーがいないのですが、その親友はよく「いい人が現れない」といっています。
でもそれは、小野里さんの言葉を借りると、親友が自分につける点数や自信が、実は高すぎているんだなぁと理解しました。
今度あったときには、「自己評価下げて!」とアドバイスしようと思います(笑)
しかし、実際は相手を探すことすら面倒だと感じて、適当に言い訳をしている可能性も大いにあるので、真相を突き止めてからにしようと思います。
私の場合、例えば友人カップルを見て「バランスのいい」なんて思ってしまうことがあります。
でもそれは、心の何処かで二人に点数をつけていたんだなぁと思い、失礼なことだったと反省しました。
私自身もどこかで点数をつけ、つけられてきて、そして今後も人間関係においてそれが続いていくのだと思うと、なんだか世知辛いですね(笑)
なので、理想はあまり気にせず生きていきたいですね。
辻村深月さんの文章から学ぶこと
なんといっても、日本語の使い方が素晴らしい作家さんだと思います。
以前こちらのnoteでも紹介した『パッとしない子』を読んだときにも感じたことなのですが、
辻村深月さんは、人間描写が特に勉強になる先生です。
どんな言葉においても、辻村深月さんなりの定義がされていて、それが心にスッと刺さるような、気持ちのいい言い回しで、こんな言葉を使える人になりたいと思わせてくれます。
最後に
この本は私にとって共感の嵐でした。
人間関係における悩みやモヤモヤを言語化してくれて、自分の中の悩みに寄り添ってくれるような、素晴らしい作品だと思います。
また、私の中の傲慢さと善良さにもしっかり向き合い、他人との接し方を見直すきっかけともなりました。
この本に出会えてよかったです。
2回にわたって長文を読んでくださったみなさま、ありがとうございました🦉
次回からはゆるりと投稿していくので、また読んでくださると嬉しいです。
読んでくださりありがとうございました🦉